「Art's Report site/ZAKKAYA PARIS

戸田昭子「雑歌屋パリ」

vol.19

「雑歌屋:プラチナチケット騒動 続続」

今回は、今まで出会ったフランスのチケットのやりとりについて書いてみます。

前売り

フランスの大きめの劇場公演では、昼間、チケット売り場が開いているので、ここで席を選ぶことができます。大きいところでは二つくらいは窓口があります。座席表がきちんと出てきて、それを見ながら残った席から希望の席を選べます。年間プログラムが6月に出た時から申し込開始。このプログラムに入っている申し込み用紙には全部のプログラムが表になっており、どの席を何枚、と、まとめて申し込めるのです。ある意味の「会員優先」ですので、シーズンの始まる9月には、すでにかなりの席が出てしまっているのかも知れません。公演が近くなると、残券はすでにかなり少なくなっているものなのかもしれませんね。コメディフランセーズもこんな感じです。

電話申し込みをすると、劇場に直接かけたとしても手数料&特別電話代がかかります。(ので、やったことがないのですが)他はFnacなどの大型書店、CD販売店が、チケット販売を大きく取り扱っています。各劇場の公演も取れます。地方ではFnacを経由し、ハイパーマーケットでチケットを買うことができます。(コンサートを聴きに行くツアーなんかも販売します。)劇場によってはネット販売もあり。A、B席、と差があったら、座席表が出てきて選べるかもしれません。たとえば希望した座席の種類が色分けされて出てきて、少なくともどのあたりかを、点滅で知らせてくれるシステムもあります。

さて当日券

日本は、高くなります。これが、フランスは、安くなります。夕方の早い時間から安い席を売り出すチケット売り場というのがあります。ブロードウエイも同様で、これでコーラスラインのチケットをとても安く手に入れました。・・・いずれにしても、当日券の方が安いのです。席がありますから、みなさんいらしてください、ということなのでしょうか。非常に対照的です。


おまけの当日入場の仕方(ミュージカル)

すべての公演には通用しないと思いますが、フランスのミュージカルで非常に驚いたことがあります。A席が売り残っていることが当日わかると、B席で入場した客を、A席の残りの列の中央から詰めていくことです。安く、よりより席が手に入るわけですから、指定席だからと思わず、早く行くのがよいことを知りました。オペラではありえないでしょうけどね。演ずる方もちらちら残った席を見ながらやるより、ぎっしりのお客さんとともに時間を過ごす方が気分がよいというものです。

対照的でおどろいたのが、日本の歌舞伎。安くても5000円。前の方ががら空きです。後ろの方の指定席に座りましたが演目の合間に移動してみましたら、会場係に見つかりまして、引き戻されました。照明をつけっぱなしというのにも驚きましたが、これにも驚きました。文化の違いといわずして、なんといったらよいのでしょうか・・・


満席の場合

「満席」公演でも、劇場の前で「チケットありませんか」と紙を持って立っていると、必ず声をかけてくれる人がいます。一週間の公演が満席だったオペラは、これで5回くらい見られました。おそらく「年間プログラム申し込み」をした人でしょう。数人分まとめて買うので「仲間の一人が来られなくなって」という人があるのです。安く売ってもらえることも多いです。「一番安い値段の席を探しているんだけど・・・」というと、もう少し良い席でもその値段にしてくれる人もいます。これはたのしくて、癖になります。

聞いた話では、企業が文化事業として公演のまとめ買いをし、社員にゆずるなり、安く売るなりするのだそうです。大手の会社の話です。こんなところで浮いてしまったチケットが当日出てくることもあるのでしょう。

日本は、わざと高く売りつけ、それを商売にする人々すらいる。

フランスの舞台は安い。あらためて日本の舞台物価の高さにびっくりします。いや、逆から見れば、本当はフランスの安さにびっくりというべきなのか。普段から皆が文化にふれることが多く、それで安いのかな、と思っていたのですが、案外そうでもない模様。そんなに皆が外出するほど庶民は収入が高くなく、テレビウオッチングソワレの方も多いし、「15ユーロ」が高いという人々もいるのです。(同じ値段なら、サッカーを見に行く人もきっと多いでしょう)音楽会はまだ15ユーロ内のものも多いので、これも安い方といってもいいのかもしれません。

それに、フランスでは高い入場料ではお客さんが来ない、ということもありえます。同じ30ユーロなら、劇場ではなくてレストランを選ぶのかも。

フランスのコツは「スポンサー」がついているではないか、と思います。会社に限らず、文化を支援する公共の施設などの援助があります。大きい団体であれば、会社は宣伝になりますから、名前を堂々とあげて支援しています。逆に言うと、スポンサーなしでは作れない舞台が多いということです。
国立オペラを筆頭に、スポンサーなしで公演をしているところは珍しいと思います。

国立オペラはもちろん国から援助金がたんまり出ています。

これをどう考えましょうか。

国や企業が、公演や、人々の「夜の外出」、「日々のたのしみ」に協力している、といいましょうか。日本にも冠興行はあるようですが、思うほど安くもならない・・・

お金がある人が公演に行ける、というのは日本でも同じかも知れませんが…フランスでの救いは、オペラなど高額の席があっても「安い席」「何とか買えそうな値段」があることです。また、地方に行くと、驚くほど値段がさがります。パリはやはり、これでも高いのです。

さてここでもう一つの当日券を発見。ある劇団公演。電話をしてみると最終日はすでに満席。「開演一時間前から空き席待ちのリストをつくります」というので、急いでみました。リストの話は心臓には悪いですが、初めて聞き、良心的だと思いました。開演15分前に列を作った一人目が呼ばれ、次に呼ばれるのを待っていましたら、目の前を通ったおばさんをがボソリ「誰か券いりますか?」とおっしゃるので、とびつきました。値段をおっしゃらないので「払います」と自ら正規料金を払いましたが、もしかして黙っていたら、プレゼントだったのかしらん!?そんなわけで、その劇場の常連というおばさまのお隣で見ることに。よく見れば、客席には余裕がありました。あきらめないのも肝心。他のキャンセル待ちの人も無事入れたようで、なによりです。

外出をしない限り、どんなふうにチケットがまわっていくのか、わからないものですね。音楽会・オペラ中心にしか外出をしませんでしたが、これから少しずつ出かけていきたいと思います。

戸田昭子

雑歌屋

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