「Art's Report site/ZAKKAYA PARIS

戸田昭子「雑歌屋パリ」

vol.18

「雑歌屋:プラチナチケット騒動 続 ロングランへの夢」

前のプラチナチケット騒ぎは「そういえばフランスではこういうことがあったっけ?」という疑問を呼び起こしました。

フランスで「満席御礼」がわかるのは、実際に劇場に行ったり、席を取ろうと電話をした時に「もう席がありません」と断られる場合がひとつ。パリの町というのは、メトロや、街の中に、常にポスターを張る場所が用意されています。「満席」とポスターに書かれているときには「追加公演」のお知らせ(コンサートの場合)なので、よい知らせ。また、コンサートではなく、ショー的要素の多い「スペクタクル」ならば、評判により、劇場を変えたりしながらも、何らかのかたちで「ロングラン」となる可能性があります。これらの公演は、会場と演目、必要があれば出演者のみで、日にちが書いていないポスターというのも多いのです。

日本にはロングランを目的とした常駐劇団・劇場が少しあります。商業演劇として成り立っているのでしょう。しかし、大規模なものばかりですし、ロングランにするのが目的だった、商業として成り立たせるのが目的のひとつだったと思われます。好きなことで生活していける、仕事のカテゴリーに舞台人も入る、という意味で、決して悪いことではないと思います。

日本でも、すぐ売り切れになってしまうような素晴らしい公演なら、ぜひロングランとしてほしい、と単純に思うのですが・・・。

前述のプラチナチケット公演は全体の公演数としてはかなりになるでしょう。しかし、東京ですぐ売り切れになるのなら、東京だけでも1か月公演が成り立つのではないか、と思います。あるいは追加公演があって、よいと思うのです。出演者本人にそのつもりがなければ無理ですが・・・そして、もうひとつここで想像するのは、本人がそうしたいと願っても、他に難関があるのではないかということです。

フランスの舞台関係者は、それで食べていきたい人、食べている人が集まっています。だから、ロングランになれば出る方もおそらくばんバンザイなのです。どれくらいロングランなのかというと、10年もほぼ同じ内容のスペクタクルを持っている人もいます。小さな劇場からどんどん大きなところへ。極端な例ではありますが。

翻って日本はどうか。体力的なことや、他の仕事やテレビ出演とのつりあいで、決心がつきかねることもあるのではないでしょうか。また、何かにつけてサイクルが早い国(と私は今感じます)ですから、1か月も同じ舞台をしていられないと思うと思うアーチストもいるのかもしれません。毎日同じ劇場へ行くのが、つらくなる人もいるのかもしれません。

フランスの劇場にはディレクターがいて、出し物を決めます。あちこち公演を見に行き、そこから将来自分の劇場に使いたい劇団、またはスペクタクルをピックアップする。つまり、劇場運営に、ディレクターの方針があります。そして、スタンス・・・・長いですね。6か月先ではなく、「来年以降」の話ということもあるでしょう。その年のプログラムはできてしまっているのですから、次から次へと、「その次の年」へ向かって探すのです。

ということは、ロングランにしてよい、という方も、ディレクターです。「劇場主催」なのです。空いている劇場を貸し出すことはもちろん考えられますが、それを「劇場としての年間プログラム」に載せるとは限らないでしょう。

さて日本では・・・まずディレクターのいる劇場があるのでしょうか?一部の音楽ホール、むしろ小さい会場にはいそうです。一般的なホールは公共施設も多く、ある意味では「誰でも使え」ます。競争率が高いとか、内容で審査もあるのでしょうが(判断基準は不明確?)それ以上の「方針」を持っている会場はいかほど?

オペラコミックでしばらくディレクターをしていたサヴァリは、全面的に制作・演出担当でした。(出演もありましたが)出し物、方針を完全に変えた大革命でもって、運営があやぶまれ、閉まるうわささえあったオペラコミックの立て直したのが彼です。オペレッタの一か月ほどのロングランなどをしていました。

フランスは、秋になった時点で「一年間」のシーズンのプログラムが決まっていることがほとんど。夏休み前には、「来年のプログラム」スケジュールが、一年分、印刷物とされて出るのです。3年先のスケジュールまで入っているアーチストがいるのは、冗談ではないのですね。

日本は、事務所が企画・制作。そして、各地に「主催者」がいます。主催が各地で入れ物を用意しているのでしょう。事務所と主催の間に、すでにひとつ、距離があります。しかしチケット販売はネットの発達により、全国規模。これ、地方の野菜が都会に出ていくまでにどんどん高くなっていくような感じ!?

それにしても・・・この値段のチケットが、文字通り飛ぶように売れるのって、すごい。サイトのみで宣伝でことが足り、ちらしも不要な人々は常に満席。その一方で頑張っている小さな劇団があったり、空席のあるコンサートがいくつもあったり。行列の好きなニッポン、並ぶレストランにはみんなが列を作るのでしょうか?

違う公演ですが、8500円、指定席、という舞台をみかけました。8500円!?フランスのオペラなら一番良い席か・・・それで、一番前で見ても、3階奥で見ても、同じ値段。「ゆっくり席を選んでいたら、次に並んでいる人が席をとれなくなってしまう。」からなのか、手間を減らすためなのか?日本の劇場は比較的新しいものが多く、パリのように「まともに舞台が見えない席」なんてあり得ないでしょうが、やはり500席を超えたら、見え方に差はでてくることでしょう。そのため、広い劇場は常にカテゴリーで値段がちがい、オペラ劇場では、日本では考えられないくらい安い席が同時に売られています。

もっとも8500円は、フランス人には「狂気」の値段でしょう・・・ちなみに、ショーを楽しむボビノの一番安いのが85E。(1E=100円で換算しています)ですが、これは食事付きの値段なんです。

書いてみたいことはいろいろある、しかし、ややこしくて散文気味・・・わかりにくくてすみません。

戸田昭子

雑歌屋

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