「Art's Report site/ZAKKAYA PARIS

戸田昭子「雑歌屋パリ」

vol.22

[雑歌屋:日本からパリ creation ]

4月雑歌屋の日本公演を無事終えました。行きは雨のセントレアに到着。帰りもまた雨模様の中をパリに向かって出発。スチュワーデスさんも「珍しい」というくらい長時間のゆれや、久しぶりのエアポケットを体験しながらパリに戻ってまいりました。

低い真っ白な雲があるけれど、まあまあのお天気のパリ。発着の飛行機を飽きもせず眺めながら、空港をあとにパリへ入り、最初に目に付いたのが山海塾のポスターでした。いつもコートの季節なのに、いわば学期末に近づく「一年の終わり」に山海塾公演とはめずらしい。冬の真っ只中というのは、学年や劇場シーズンが始まったばかり。夏は大きい劇場はしまるので今回は「上演シーズン終わり」。

「何も宣伝・説明していないcreationなのに、完売なんだよね、山海塾は」
・・・と、不思議そうな日本人。第一に、山海塾のパリ(フランス)でのキャリアは相当なもの。「山海塾だから」というだけで見たいお客さんが、もちろんいます。第二の理由は「しかも初演、creation」だから。フランスはcreation大好きです。「オリジナル」好きなのです。

「人と違っているのがよい」「個性を尊重する」ことは、フランスの国民性の傾向として、ある程度は一般的だと認めてよい傾向だと思います。「周りとの協調」日本国とは、対照的です。「自分の意見を言う」ことを、幼少から生活の中で経験しているのだから、さもありなんという気がします。「ユニーク」は日本では「おもしろい」「おかしい」という意味合いですが、もともとuni,「ひとつ」という意味ですから(ユニフォームのユニも)、この「ユニークなのが大事」なのがフランスの特徴といってもいいのではないでしょうか。(もちろんフランス人とて周りと協調する能力もありますよ!)

「この人から、次はいったいどんな新しいことが出てくるのだろう?」とばかり、creationは目を引くのです。細かい前宣伝はいらない、美しい「包装」も不必要、といったところ。

日本と対照的なものがあるのではないでしょうか?


しかしフランスのcreationには、それでいいのか?というところもあります。

地方のフェスティヴァル(音楽・ダンス・演劇など)にはこれがつきもの。最初はスタンダードな演奏家やプログラムで始まるフェスティヴァルが、年月を重ねるうちになぜかcreation「世界初!」ばかりになってくると、ちょっと鼻につきます。知らない人やら、面白くもないのになぜか毎年出ている人・・・このあたり行政にからんでくるらしいのです。なぜか、creationなら予算が出る?

としか考えようがなくなってきます。(山海塾は別格、あとで書きます) となると、最初はおもしろかったフェスティヴァルが、だんだんつまらなくなって行く可能性もあるのです。実際・・・

どこへ行っても世界初演がもてはやされるのもいいのですが、見る方が、実力あるアーチスト、作品と、そうでないものを見分ける力はあるのだろうか?という疑問がでてきます。

日本のように「細かい包装」はないとしても、フランスは「おおざっぱな包装=creation」ということであるのなら、両国に結論として大差はないですね。

お客さんがいる、いない、という問題もありますが、そのお客さんがいる場合、どれくらいちゃんと本質を見ているのだろうか、ということが気にならないでもありません。

山海塾についてcreationがおもしろいのは、このcreationが上演劇場で準備されるということでしょう。ある程度プラン・振り付けはできて日本からやってくるものと想像しますが、実際に作り上げていくのは、「存在するその場で」するべきことです。
目に見えるものは、劇場によって左右されてくるのだとしたら、その準備期間を劇場でするのが理想的でしょう。日本はどうなのでしょうか。貸し劇場ばかり目に付く現状では、creationが存在すること事態が不可能じゃないかなんて思います。大手の劇場では冠公演がありますが、入場料は高いし、稽古期間が短くてびっくりしました。
それを電波にのせて宣伝するのにも、びっくりしました。


さて、日本でひとり5000円する出し物を見に行きましたので、地元パリで見に行かない手はない、と、モンパルナス劇場へ行きました。ずっと気になっていた二人組み、シュヴァリエ&ラスパレス主演の“Banc“です。彼らは本当によくふたりでつるんでいます。自分たちで台本を書く「ツーメンショー」としてのお笑いも定評がありますが、他のお笑いの人々と同様にどちらもすばらしい役者です。

一番高い席が48Eのところ、ネットで40パーセント割引引きというのを発見、29Eで買いました。しかし連休に入った土曜だったのですいており、当日の一番安い席19Eで入ってもよかったかも。初めて入る劇場なのと、日本で「プレミア・秒殺チケット、電話もパソコンもつながらない」ということを経験したためか、こっちも気持ちがでかくなっており「一番高い席が半額近いならそうしよう」と思ったのです。(パソコンと格闘となりましたが、この安いチケットのシステムも面白いです。)子供はもしかしたら安く入れたのかも・・・まあ気にしていません。土曜は、18時、20時30分の2回。日本は週末によくありそうですが、同じ日に2回公演は珍しいかも。

細かいことはまた次回にまわすとして・・・ポスターには「特別60回公演」とあります。3月25日より始まり、「マチネ」は土曜18時。土曜の2階公演を除き、毎日一公演、日月曜日はお休みです。

プログラムを買うと、第一ページは、劇場のふたりのディレクターが写真入で。それから出演者二人の紹介に続き、台本作家、装置担当、照明、演出アシスタント等の経歴が写真つきで並びます。

そういえば、オペラも、メトロのポスターには、出演者よりも演出、装置、衣装、照明家の名前が目立ちます。

既存の舞台上に作られた傾斜舞台、幕は下りていて、問題のbancこと、ベンチ=この芝居では、ピアノの連弾用の長いいすがおいてあります。 設定は山の宿泊所。「もうすぐ日本公演だ」といいつつ、その自然におちついてしまって腰を動かさなくなるピアニスト2名。舞台奥の下からしつらえられた階段からふたりが現れます。 舞台装置は、手前はホテルの部屋:素敵ないす、テーブルなど。その奥に、ホテルのドアを含めたあるはずの壁を、窓のさんのような状態で柱状の材料を組み合わせたもの。
その奥に木々が見え、さらに、すばらしいでかさの山がそびえたっています。いわゆる書割というのでしょうか、実施に描かれた絵ですが、どうもランプがついたり小さな細工もあるもようで非常に美しい。「プロの画家」ということで見ると、舞台の絵の専門家が、こうして「仕事」をしているのかも、と思わされます。

最初、手前にあるベンチによって、ピアノがそこにあることを暗示しています。最後の幕では、手前と奥とが完全に入れ替わります。たぶん、上からつっているのだと思いますが、上記の「柱状の材料のみを組み合わせた見えない壁」が手前、左右逆に来ます。(まさか置きなおしている暇はないと思うので)そして、初めてホテルの壁(木張り)前面と、ピアノを見ることができます。客席の方がこんどは山になります。吊り装置のバトンがいくつ?ここの舞台の奥行きは深い。山を見上げることができます。

照明は、上後方よりスポット4つ、左右から4、5つくらいずつ。横からもずいぶんあったのでは? (日本の舞台がどこでもまぶしかったので、ついつい振り返って観察してしまいました。)劇場によっては、奥行きの少ないところもあります。10H劇場は狭そう・・・そういうところは、出てくる人間の話のみでなり立つものを出しているのかも。それにひとつの劇場に何組もの出し物がかさなっていることはめずらしくありません。

おそらくこの劇場は共同プロデュースとしてシュヴァリエ&ラスパレスを「売り出して」いるはず。こんな大きな装置と、床まで作りつけて、60回やらない手はありません。というか、これ、フランスの演劇の基本的なやり方のようです。つまりcreationがここでされた、といえるのです。

1817年にできたというモンパルナス劇場1886年に改装され現在に至っているそうです。(トイレだけは当時のではなさそうですが!)一階にレストランがあり、たとえば今回の演劇では、一番よい席とディナーの組み合わせプランで56E。1817年というと、ショパンはまだ7歳です。

http://www.theatremontparnasse.com/ 

劇場のサイトを見ていくと、directionというのが堂々一ページを占めています。

シュヴァリエ&ラスパレス
http://www.chevallierlaspales.com/laspalesaccueil.html

戸田昭子

雑歌屋

http://zakkayamusique.hp.infoseek.co.jp/