Art's Report site/ZAKKAYA PARIS

戸田昭子「雑歌屋パリ」

vol.10
「教会と音楽」

皆様こんにちわ。雑歌屋パリです。

気がついたら5月。
前回お送りしたものは、日付が3月5日のものでしたが、そのままお送りしました。
いまどき存在しない、船便でのお便りとでもお考えくださいませ。

仕事を終えて外ヘ出る、夜の9時過ぎ。まだ外が明るくてほっとします。
このまま、6月21日まで、日が長い日々が続きます。
ついこの間まで、寒くて、(今も寒いですが)、
夜の街へ出てから帰宅するという日々だったのが
これからどんどん明るくなっていく・・・・
6月末まで授業があるのにもかかわらず、気分はすでに、期末です。
(先生がこれでは・・・)

ときには、空もうす青く、入道雲のような雲。
みどりが、どんどん濃くなっていきます。
利用する地下鉄は、一部外へ出ますので、明るいひかりを楽しみにしています。
天気がよくても悪くても・・・

コンサートを終えての帰宅だったか、夜11時近いのに、空が薄明るかった日を思い出します。

さて、現在、あるお仕事の返事待ちです。
結婚式・・・・をあげるのではなく、教会でのそれで歌うことにずいぶん前から決まっていましたが、その楽譜が届いたのがつい数日前。
もうひとつ曲があるのですが、それはまだない、とのこと。
オルガン奏者は週末にパリに来るので、合わせたかったら週末にどうぞ、ということなのですが、これを書いているこの週末を逃すと来週。
その週末は、コンサートなので無理です。
ということは、よくて、結婚式当日のあわせ、ということになるのでしょう。
今のところのリクエストは知っている曲なので構わないといえば構わないのですが
今日は風邪をひいたので練習はすぐ出来ないし、
合わせはできないし、スリル満点で、・・・こういうところ好きですねえ、フランス。
でも、この曲で、あわせなくても大丈夫、と、
依頼する方やオルガン奏者は考えている、ということなのでしょうか・・・?
オルガン奏者の電話番号も間違っていたりして連絡が取れません。
「あなたはフランスにいるのです」と毎日自分に言い聞かせながら、生活しています。

それにしてもあまりに長い間連絡がなかったので、
まさかプロジェクト中止!?(=婚約破棄)などと想像していました。

教会で歌ったことはありますが、いつもお決まりのミサの中でした。
いちどだけ、お葬式で急に呼ばれて行きましたが、(予定はしませんね)
そのときは、「教会に通われる方なら誰でも知っている」という曲の希望があり、
歌詞がラテン語でした。
ミサのすべてを把握していれば、おそらくそらで出てくるような詞なのです。
しかし、私はミサのスペシャリストではありません。
歌詞を聞き取らせていただく時間もなくなってしまい
知らぬ顔で、わかったところだけを繰り返しました。

今回、3月から結婚式のミサの予定があったのに、
曲決定までに時間がかかったのは、
神父さんが忙しくてつかまらなかったことと、
その神父さんのこだわりがあったからだそうです。
蛇足ながら、フランスでの婚姻は、各住地での役所で行われます。
ですから、教会で式をあげるのは義務でもなんでもなく、一部の人なのです。

宗教曲というのは、教会とこってりつながっているのです。
宗教合唱団の講習会にヴォイス・トレーナーとして参加したときに、
まわりはそんな知識人がたくさんいて、驚きでした。
指揮者、作曲家、オルガン奏者、神父さん、
みな、それぞれの流儀があり、流派があり、ラテン語で歌うかフランス語で歌うか、
誰の曲を使うか、新曲を使うかどうか、現在でもそういうこだわりがあるのでした。

昔のある時代、「完全8度」(オクターブ)と「完全5度」(たとえば、ドとソ)は
認められるが、それ以外は邪道であり、けがれたものである、
(3度など、たとえば、ドーミ)といったような、作曲の決まりがありました。
これも、教会による決定です。
まして、減5度などは「悪魔!」の響きだったのです。

現在、フランスでは円卓のアーサー王を主役にした短い連続物の番組があり、
わかるときには、大笑いさせてくれます。
のーんびりした、かわいらしくてちょっぴり太った女王さまは、
王の愛人たちとも仲がよく、まったくもって寛容です。
王の武器は、スターウォーズ風の、光るカタナです。
時代物というと、なんとなく古めかしい言葉遣いになりがちですが、
この台本は、完全に現在の言葉遣いでできており、
若い人々の言葉遣いまでも駆使しているので、中世が身近になります。
ここで実際に神父さんと、歌う王たちとの戦いがでてきました。
3度をうたうだけで、神父さんが十字架をかかげ、耳をふさいでしまう世界です。

しかし、ある意味、これはこんにちも生きている現実だったのです。

今後は、お葬式には歌いたくないと思っていますし、
結婚式もどうしようかな、と思っています。
物事を早めに進めてくださる日本人の方のためなら、喜んでいきましょうが、
「音楽の方は練習もあるでしょうし」とは、露ほども思ってもいないらしいフランス
の方の場合、残念ながら、あまり気分よくひきうけられませぬ・・・

曇っていた空も、日があたってきました。

とだあきこ