Arts Calendar/column

アーツカレンダー<コラム>のページ


2011年12月のコラム



「国際協力」

 原発輸出問題は新聞ではいま一つ、取り上げ方が小さい。国内被曝などと比べてリアリティや危機感が弱いということもある。しかし、ゆゆしき問題だ。
 日本は50年以上、政府開発援助(ODA)という開発途上国支援を行ってきた。近年は「国際協力」と呼ばれ、一般の「国際的な協力」としても使われるが、JICA(国際協力機構)の名前が緒方貞子とともに知られて、定着した。実は20年前、ODAはインドネシアのマルコス大統領が私腹を肥やすのに利用され、ダムなどのインフラ整備が日本の企業を利する、環境を破壊すると批判された。以降、現地委託やNGOとの連携などを進め、また、早い時期にトップの天下りをやめたJICAは緒方貞子を理事長とした。
 これらの開発途上国への支援に原発輸出は逆行する。大事故が起こり、放射能被害が連日問題になり、その影響や収束の見通しもつかない原発を途上国に建設するというのは、普通の神経とは思えない。政府・民主党、自民党は相変わらず業界・大企業寄り、原子力の旨味を吸おうとする。さらに気になるのは廃棄物処理だ。日本はまだ最終処分場も決まらず見通しも立たない。ヨルダン、ベトナムなどへ原発を輸出して現地の処分場を作る。日本はそこを利用するつもりだ。こんな思惑が見て取れ、問題は大きい。
ようやく途上国からの評価も高まったからこそ、震災では多くの国々から支援が寄せられた。原発輸出はこの関係を壊すものだ。ヨルダンは水がない国。冷却水の問題も大きく、王国トップが原発を推進しているが、議員には批判もある。国際協力銀行の融資によって、日本の原発輸出が現実化すれば、福島原発事故を深刻に受け止めている欧州からの批判も高まり、日本の国益を損なう。民主党から12人の棄権者を出しつつも、原子力協定は可決されてしまった。50年の国際協力の名を汚す原発輸出を止めないと、大きな汚点を残すことになるだろう。

(2011/12/12 志賀信夫)


無断転載禁止 掲載:アーク編集室
TOPpage/