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2009年7月のコラム


「水に流す」

 夏風邪をひいて、1日会社を休んでいた。食事だけに起きテレビをつける。地上波デジタルとBSデジタル。ボタンを押すと天候やニュースなど多くの情報が表示され、料理番組だとレシピが出てくる。地デジはアナログ、つまり普通放送と番組は同じ。しかしBSデジタルは大半がテレビショッピング。それもダイエット商品、健康食品が多い。女性週刊誌の後ろに載っている広告と同様のものが、タレント、学者などを駆使して紹介される。かつて雑誌のダイエット広告に出ている「学者」名を検索したら、その通販の広告サイトしか出てこなかった。実績のない「学者」は存在自体が疑わしい。

 通販以外は風景・紀行番組、韓流ドラマ。要するに安く買える映像を垂れ流す。CSとケーブルテレビを加えると膨大に放送が流され、大きな無駄だと思う。電波の領域が足りないというのが地デジ導入の大きな理由だったはずだが、お笑いバラエティが大半の通常放送に加えて、放送したいのは通販と埋め草映像らしい。このために再来年の今頃、日本中のテレビとビデオがゴミになるというのは、どうも解せない。

 映像は驚くほど綺麗で、海や川など大自然の風景を眺めると流石に凄い。しかし何時間も誰が風景の映像を見るのか。そこで録画してたまったハワードホークスの映画を見た。風邪なので途中で寝る予定が止まらず、40年代のモノクロ映画に惹き込まれた。物語、会話、演出、演技いずれも優れている。半世紀以上前の映画と比べると、いま流れている映画、ドラマがいずれもどれほど緩く、いい加減かわかる。若手の日本映画に佳品はあるが、いくつか見ると似たり寄ったり。ちょっとした日常が流行りで、小説もそうだが、それなりに読ませる、見せるレベルばかりだ。
 こう否定しながら、テレビ通販でシャワーヘッドを買ってしまった。水道代が省エネで水流が変えられて2800円。

騙されたのか、得したのか。駄目なら、夏なので、地デジとともに水に流せないか。

(2009/7/27 志賀信夫)


東京の夏は、でぇっ嫌いだけど、江戸の夏は好き。
江戸の夏ったってホントのところは、知っちゃあないけど。
実際の気温や湿度、蒸し暑かったことには大して変わりはないと思うが、エアコンの室外機の熱風とアスファルトの照り返しがないだけでも、今より気分は良かっただろう。

花火、屋形船、朝顔、鬼灯、釣り忍、風鈴。
いくらなんでも、やっぱり真っ昼間はきつい。
陽が落ちて、緩やかに暮れていく時が長く続くようにと惜しみながら、短か夜が明け、露を含んで濡れた朝顔の濃い青を見るまで。
そこまでが江戸の夏の夜。

会社帰りの乗り換えポイントをちょいと変えて、東銀座下車。
歌舞伎座はこの夏で見納め。
義太夫の葵太夫さんを訪ねた時、個室の楽屋前までは潜入できたものの、「男ばっかりでむさ苦しいところですから、外に行きましょう」と外のお店でお茶したことが悔やまれる。
歌舞伎なんだから男ばっかりなんざ百も承知。
むさ苦しくとも、楽屋に行ってみたかったのに。

歌舞伎座を通り過ぎると築地。磯の香りというより干物や乾物の香りに誘われる。
さすがに夕暮れ時はターレーも走ってないし、市場の賑わいはない。
でも、やはり市場はここにあってほしい。豊洲も大して遠くにあるわけではないけれど、築地だって日本橋から移転した市場ではあるけれど、人と土地とのこなれた感じ、干物の香りが染み付くまでの時間も築地の財産である。

伊東忠太パラダイスの築地本願寺を左に見て、通りからは見えない波除神社に気持ちだけ額ずいて、勝鬨橋を渡り、川風にびゅーびゅー吹かれてから、バスに乗る。
いま歩いた道を少し引き返してから右折。
実際に、どのくらい昔からあるのかはわからない、もしかしたら仕舞屋風に新しく建てたのかもしれないけど、下町の風情あふれる二階家と新しい高層マンションが交互に立ち並ぶ道を行く。

鏑木清方の住まいが木挽町にあった。
少年時代、また長じてのことを随筆に、水の滴る風情を書いているが、水路は埋められて今はカラカラ。
聖路加病院を通り過ぎ、かの築地明石町に差しかかるも清方が描く佳人が佇むような風情はない。
それでも、晴海通りからほど近くでありながら、軒先の植木が豊富なのはせめてもの江戸の風景に近いかも。
ああ、そうそう明石橋は別名「寒さ橋」とも言ったそうだ。吹き渡る風が冷たくて、夏でも寒さを感じるほどだったとか。

鉄砲洲稲荷に近づくと、お武家の硬い雰囲気も加わる。
進めば八丁堀。永代橋がちらっと見える。
ビルがなかった頃ならば、いま通り過ぎてきた道々は振り返れば、 晴海通りくらいまでは容易に見通せたのだろうか。
それよりも江戸湾の磯の香りと波の音もきこえたのだろうか。
時代小説に登場する高橋(たかばし)や亀島橋という地名がバス停に残る。
飛び込むには憚られる川だけど、やはり水が身近にあるのは気分がいい。
高橋は、鉄橋にかけ替えられた当時、井上安治が版画にしている。
すっかりオフィス街になっているけれど、このあたりの橋を雨の降る日に下駄で散歩してみたいと思う。
蛇の目をさして。

そして、バスは八重洲に到着。
ここから、家までは電車に乗ってだいぶ時間がかかる。
ひと電車見送ってゆっくり座って午睡としよう。家についたら、ぬるめのお湯に浸かって、お風呂上りに濃い煎茶。
照明はつけず、あえて窓からの風だけで夕涼み。

(2009/7/20 WADA)


東京の夏は、でぇっ嫌いだけど、江戸の夏は好き。
江戸の夏ったってホントのところは、知っちゃあないけど。
実際の気温や湿度、蒸し暑かったことには大して変わりはないと思うが、エアコンの室外機の熱風とアスファルトの照り返しがないだけでも、今より気分は良かっただろう。

花火、屋形船、朝顔、鬼灯、釣り忍、風鈴。
いくらなんでも、やっぱり真っ昼間はきつい。
陽が落ちて、緩やかに暮れていく時が長く続くようにと惜しみながら、短か夜が明け、露を含んで濡れた朝顔の濃い青を見るまで。
そこまでが江戸の夏の夜。

会社帰りの乗り換えポイントをちょいと変えて、東銀座下車。
歌舞伎座はこの夏で見納め。
義太夫の葵太夫さんを訪ねた時、個室の楽屋前までは潜入できたものの、「男ばっかりでむさ苦しいところですから、外に行きましょう」と外のお店でお茶したことが悔やまれる。
歌舞伎なんだから男ばっかりなんざ百も承知。
むさ苦しくとも、楽屋に行ってみたかったのに。

歌舞伎座を通り過ぎると築地。磯の香りというより干物や乾物の香りに誘われる。
さすがに夕暮れ時はターレーも走ってないし、市場の賑わいはない。
でも、やはり市場はここにあってほしい。豊洲も大して遠くにあるわけではないけれど、築地だって日本橋から移転した市場ではあるけれど、人と土地とのこなれた感じ、干物の香りが染み付くまでの時間も築地の財産である。

伊東忠太パラダイスの築地本願寺を左に見て、通りからは見えない波除神社に気持ちだけ額ずいて、勝鬨橋を渡り、川風にびゅーびゅー吹かれてから、バスに乗る。
いま歩いた道を少し引き返してから右折。
実際に、どのくらい昔からあるのかはわからない、もしかしたら仕舞屋風に新しく建てたのかもしれないけど、下町の風情あふれる二階家と新しい高層マンションが交互に立ち並ぶ道を行く。

鏑木清方の住まいが木挽町にあった。
少年時代、また長じてのことを随筆に、水の滴る風情を書いているが、水路は埋められて今はカラカラ。
聖路加病院を通り過ぎ、かの築地明石町に差しかかるも清方が描く佳人が佇むような風情はない。
それでも、晴海通りからほど近くでありながら、軒先の植木が豊富なのはせめてもの江戸の風景に近いかも。
ああ、そうそう明石橋は別名「寒さ橋」とも言ったそうだ。吹き渡る風が冷たくて、夏でも寒さを感じるほどだったとか。

鉄砲洲稲荷に近づくと、お武家の硬い雰囲気も加わる。
進めば八丁堀。永代橋がちらっと見える。
ビルがなかった頃ならば、いま通り過ぎてきた道々は振り返れば、 晴海通りくらいまでは容易に見通せたのだろうか。
それよりも江戸湾の磯の香りと波の音もきこえたのだろうか。
時代小説に登場する高橋(たかばし)や亀島橋という地名がバス停に残る。
飛び込むには憚られる川だけど、やはり水が身近にあるのは気分がいい。
高橋は、鉄橋にかけ替えられた当時、井上安治が版画にしている。
すっかりオフィス街になっているけれど、このあたりの橋を雨の降る日に下駄で散歩してみたいと思う。
蛇の目をさして。

そして、バスは八重洲に到着。
ここから、家までは電車に乗ってだいぶ時間がかかる。
ひと電車見送ってゆっくり座って午睡としよう。家についたら、ぬるめのお湯に浸かって、お風呂上りに濃い煎茶。
照明はつけず、あえて窓からの風だけで夕涼み。

(2009/7/20 WADA)

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●「血で字」

 キムタクドラマなのに人気がないと報道される『M.BRAIN』が終わった。豪華ゲストのため 役柄の推測がつく部分はあるが、初回から惹きつけられた。草薙の全裸事件といい、どうも 背後にジャニーズ叩きがあるようだ。反韓愛国系か芸能界の反勢力か。キムタクもヒーロー ばかりで飽きられたか。アンチヒーローをそろそろ演じてもいい。確かにジャニーズと吉本 がテレビを牛耳る状況は疑問だが、このドラマは面白かった。最後の2回は、犯人による布に 血で書かれた「×」の文字、それが血液のDNA鑑定の問題から冤罪問題につながり、実にタイ ムリー。脳科学の知識や骨髄輸血を受けてDNAが変わるなどのネタは、ミステリー好きには興 味深かった。
 しかし前回はテレビが壊れてしまい、すぐには見ることができなかった。1週間前から画面 の両端がブレ出してヤバイなと思っていたら、画面が真っ白になった。しばらくすると出てく るが、深い靄がかかったような状態。DVDに移してパソコンで見たら、音がアニメ声になった。  翌日量販店にて32型テレビを購入。ネットで最低価格を確認し、店で一番安いのを買った。

  71000円がポイント20%、エコポイント12000円で実質45000円と安い。ところが帰りに雑誌を 見たら最低評価で1万出して同一メーカーの新機種をとあり、愕然。見比べて新機種はサイド から見づらかったのだが。帰ってネットの書き込みを見ると賛否両論、新機種は省エネでバッ クライトを弱めたためだった。
 これまでのブラウン管より電力は低く映りは遥かによい。横長で存在を協調しすぎ、チャン ネルも多すぎるが、表示や番組表なども充実、十数年振りの新しいテレビは、前のものより実 質安かった。  そしてドラマ最終回、血で字が書かれた画像を地デジで見ることとなった。企業と開発優先 の地デジ戦略で、膨大なゴミはどうするのかという疑問は変わらないのだが。

(2009/7/13 志賀信夫)


無断転載禁止 掲載:アーク編集室

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