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2007年1月のコラム

【コラム】

笑い


 2007年が始った。初笑いというが、いまは新年のみではなく、お笑いがテレビ・茶の間の中心だ。歌手や俳優よりお笑いタレントのほうが人気で、ニュース番組も可愛いだけの女子アナと芸人がコメントする。名歌手、名優すらお笑いにシフトしてしまう。


 なぜ笑いが受けるのか。景気が上向きといいつつ、税金や年金負担で手取りが増えず、業績主義や競争原理の名でリストラや経費削減が蔓延する日常に、せめて画面に笑いを求めるのか。だがなにをしているかわからない芸人が多い。喋りは似たり寄ったりで、圧倒的に吉本系。茶の間は吉本とジャニーズに牛耳られている。美人女優を射止めたり、政界に出る人もいる。だがブロマイド俳優より「リアル」なのも確かだ。


 笑いの文化は差別の文化ともいう。自分より劣ったものを笑う。失敗、振舞いや体型、美醜。ピエロは奇妙な化粧とぎこちない動きで失敗を見せ、福笑いは失敗と変な顔を笑う。いじめ問題の番組で、「いじめられ、笑われていたから、逆手にとってこの仕事についた」と告白した芸人がいたように、笑いといじめはつながるのだ。


 テレビは笑点やてなもんや三度傘、ドリフ、ゲバゲバなど、お笑いが多かった。吉本芸人が司会する若者番組、漫才ブーム、「笑っていいとも」でそれが加速した。クイズ番組も視聴者参加ではなくタレントや芸人が答えて内輪受け。テロップも横行し、言葉の「受ける」部分だけを画面に流し、安易に番組を面白く見せかける。


 太田光と中沢新一の対談『日本国憲法を世界遺産に』を読んだ。だが「考える」芸人はごくわずかだ。講談師が社会批判を行い、レニー・ブルースのように闘った芸人もいる。だが社会派や質の高い笑いといっても、難しい。せめて今年はテレビ・パソコン依存症を克服したい。メタボリックな体型のみで笑いを取らないためにも。 (2007/1/29志賀信夫)

【コラム】

智恵子さんには反対意見だけども、東京の空はけっこうイケてると思う。智恵子さんの言う「ほんとの空」は、東京生まれの東京育ちの私にとっては、この東京の空だ。

港区の高層ビルで働いている。30階にあるオフィスの大きな窓からは東京湾と東京タワーが見える。近付いて目を凝らせば、お台場の丸いのがついたテレビ局も見える。夏から秋にかけては晴れててもどんよりした空の色と海の色。陽が長いから一日のうちに変化はそれほどなくて、楽しみなのは夕立ち。それが晩秋には眩しいほどの空色。チベットの映像を見るような神々しいほどの光。そして、釣瓶落しの黄昏になると、一刻一刻と変わっていく空の色に仕事どころではない。すぐに暗くなっていく空に「早く片付けなくちゃ!」と焦る。師走の忙しなさは、この一瞬の夕暮れのせいなんだろう。

西に向いた大きな窓からは、六本木ヒルズと防衛庁あとの新しいビルが見える。新宿の高層ビル群も神宮の森も絵画館も見えるのに、富士山だけが見えない。六本木一丁目駅を飲み込む高層ビルのせい。まぁ、霞ヶ関辺りの人からは、ウチのビルが建ったから富士山が見えなくなった、と言われているかもしれない。

12月に入ってからの夕暮れの空の変化が素晴らしかった。ちょっと目を離すと変化が進んでしまい、それを見のがしてしまうのが毎日くやしくて(仕事してますが)。午後4時から色が変わっていく。暖冬と言われても日の暮れかたに違いはなく、澄んだ空色がわずかな陽の傾きでほんの少しずつ赤味が増していく。青から赤、そして藍へ。紙の上に色を重ねていくとしたら、まず選べないグラデーション。

六本木ヒルズの遥か西に、(たぶん)アルプスの稜線が見える。ワニの背中のようにでこぼこの不規則な線の、いつまで見ていても飽きない面白さ。地上30階あたりは、さすがに空が広い。ずーっと続く飛行機雲。上のほうはもう暗く、中程は薄紫からピンク、下のほうはまだ明るくて稜線がくっきり。三層のゼリーのような贅沢な風景。やがて、高層ビルの灯りが浮かび上がる。藍色をバックにしたビルの形もその窓の明かりもライトアップも、とても綺麗なんだけど、どんなに暗くなっても星は見えない。

12月の冬至のころが、いちばん夕方の空の色が綺麗だった。年が明けてみると、やはり春。ようやく冬らしく乾燥してからっ風がしみる日々になったけど、空の色だけをみると、もう春が進んでいる。(2007/1/22WADA)

無断転載禁止 掲載:アーク編集室

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