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ヤマさんの公表雑文帖

神戸国際インディペンデント映画祭'93に参加して
「映画新聞」第100号('93. 7. 1.)掲載[発行:映画新聞]

 山形のドキュメンタリー、広島のアニメ、福岡のアジア映画、夕張のファンタスティック等、全国各地でさまざまな国際映画祭が行われるようになってきている。その中で、今回神戸で国際インディペンデント映画祭(KIIFF)が、今年のカンヌ・グランプリ監督の陳凱歌氏を審査委員長に迎え、『トト・ザ・ヒーロー』のジャコ・ヴァン・ドルマル監督、『ポイズン』のクリスティーン・ヴァション映画プロデューサー、『鉄男』の塚本晋也監督、映画評論家の大久保賢一氏を審査員として開催された。いよいよもう残された映画のジャンルがなくなってきたという感じだ。
 いわゆる自主映画、しかも短篇を対象にしていると聞いて、どんな作品が集まったのかとわくわくしながら足を運んだ。そして、41カ国から集まった633本の中からノミネートされた20作品のうちの10作品と、五つのスペシャルプログラムのうちの四つから22本の作品を観ることができた。いずれも驚くほどによく出来ていて、堪能した。自主映画という以上に、短篇映画の面白さを再認識させられたという印象が残っている。が、それゆえにまた、あらかじめ期待していたような種類の新鮮な刺激には少し乏しかったような気もする。

 自主映画か短篇映画か
 KIIFFには、自主映画と短篇映画という二つの要素がある。自主映画というのは、言ってみれば、製作・興行という父親の認知を得られずにして生まれた私生児だ。私生児ゆえに受けるハンデもあるし、ときとしてそれゆえに培われる強烈さもある。映画祭としてそれらに目を向けてゆこうというときには、当然にしてそれらが私生児として生まれるしかなかった切実さがうかがわれる作品ということが、まず前提となろう。フィルムとしては、実験的な手法や妄想的なイメージの色濃いプライヴェートフィルム的なものが増えてくるはずだ。製作費のなさからくる物的・人的不自由さの代償として獲得したはずの自由なる作家精神が十分に活かされれば、必然的にそうなってくるのではないかという気がする。そこで何が現れてくるのか、どんな発見があるのか、そういったことが自主映画の魅力だと思う。

 一方、短篇映画というのは、作家の精神の問題というよりも、むしろ作品の形式の問題だ。そこで競われるのは、短篇という形式に即した構成力、アイデアといったもので、とりわけ凝縮力が試されなければならない。
 今回のノミネート作品は、そのへんのところがいまひとつ整理されていなかったような気がする。僕の観た作品で言えば、『それでも山羊は生きていた』や『ウィットネス』『ウィズイン・グラスプ』は短編映画としては非常に優れていて、何か賞を取ってもいいくらいなんだけれども、自主映画として観たときは、ノミネートされるほどの私生児的切実さがあまり感じられない。したがって、インディペンデント映画祭の各賞の選出から漏れるのは当然だと思うのだが、今回のKIIFF'93での上映作品は、スペシャルプログラム/ノミネート作品含めて、自主映画の魅力よりもむしろ短篇映画の魅力を強く印象づけるラインナップであったために、各賞受賞作にいくぶん違和感を残したような気がする。

 しかし、インディペンデント映画祭である以上、今回の審査員団の判断は極めて適切だし、問題があるとするならば、ノミネート作品の抽出に至る予備審査のほうに整理すべき課題を残しているのではないかという気がする。ノミネートされなかった600余本の中には、自主映画の魅力を伝える作品がまだまだ埋もれていたのではないだろうか。
 それとは別に、もし今後、短篇映画に目を向けるという側面のほうが強くなるのであれば、ショートフィルム・フェスティバルとしてKIISFFあるいはKISFFに改称し、一作品のランニングタイムの上限を60分から30分にしたほうが良いように思う。
 それにしても、いろいろな意味で模索的な形にならざるをえない第一回の開催に立ち会えたことは、今後の展開を見るうえで楽しみ多く、またさまざまなことに思い巡らせないではいられない点でも刺激に満ちていた。イベントを運営するのは、各関係者だけど、継続させる原動力となるのは、僕たち映画ファンや神戸市民の支持だと思う。期待と共感をもって声援を送りつつ、見守っていきたい。

 受賞結果

◎神戸グランプリ
『草の上の仕事』(篠原哲雄監督/日本)
◎ 準 グランプリ
『手紙』(横山健二監督/日本)
『ジャスト・デザート』(モニカ・ペリヅァーリ監督/オーストラリア)
◎ヤング・ディレクターズ・アワード
『サターン』(ロバート・アール・シュミット監督/アメリカ)
◎神戸シチズン・アワード
『メナージュ』(ピエール・サルヴァドーリ監督/フランス)


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