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ヤマさんの公表雑文帖

蜜月経た2人のその後
 『親愛なるきみへ』(Dear John) 監督 ラッセ・ハルストレム
高知新聞「第166回市民映画会 見どころ解説」
('12. 2. 6.)掲載[発行:高知新聞社]

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 強いときめきだけでなく、確かな蜜月のときをも過ごした相手というものが、人生に占める位置とは何なのだろう。会うたびに最後に「またすぐ会おうね。」との言葉を交わし合っていた7年間のうち、本当にそうすることができたのは、最初の出会いの日から2週間だけ。そんなジョン(チャニング・テイタム)とサヴァナ(アマンダ・サイフリッド)の物語だ。
 私が上映活動に携わっていた時分に関わった作品のなかでも最も印象深い映画の一つ『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985年)を手掛けたラッセ・ハルストレム監督作品だけに、単なるラブ・ストーリーではない。表現手法やタッチは変えても、人生の孤独と一期一会を描き続けてきた映画作家の決して声高には謳い上げない語り口を味わう作品だ。
 9.11という世紀の一大事件が人々に及ぼした影響については、さまざまな作品で描かれてきたが、ラブストーリーにおける異変として用いられたこういう形の作品には初めて出会った。あの衝撃的な事件をこのように扱うまでには相当な時間を要するわけで、10年の月日が流れ、“歴史”化しつつあることを感じた。
 原題の『Dear John』で始まる手紙を書けずに白紙を見つめていたときのサヴァナの心境と出来事を描出せずに、全て行間に追いやったことへの賛否はあろうが、描かれたことだけを受け取るのではない“鑑賞”を作り手が望んでいることは明らかだ。

'12. 2. 6. 高知新聞「第166回市民映画会 見どころ解説」


無断転載禁止 掲載:アーク編集室

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