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ヤマさんの公表雑文帖

随所に「なんでやねん」
 『奇跡』 監督 是枝裕和
掲載[発行:高知新聞社]

    柳楽優弥にカンヌ国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞させた「誰も知らない」(2004年)で、子どもたちを活写した是枝裕和監督が、再び小学生の子どもたちにフォーカスを合わせた作品だ。  今回は、兄弟漫才の芸達者な“まえだまえだ”を軸に描いていて、2人の「なんでやねん、意味わからん」が映画の重要なモチーフとして生かされていた。  そもそも、オダギリジョーと大塚寧々の間に生まれた子どもが“まえだまえだ”だなんて「なんでやねん、意味わからん」し、たこ焼きをおかずにご飯を食べるコテコテの浪速っ子が鹿児島と福岡に離れて暮らしているなんて「なんでやねん、意味わからん」といった感じの物語だ。随所にクスクス笑える小ネタが仕込まれていて楽しいのだが、いわゆるコメディータッチとは意識的に一線を画した、作家性の強い作品で“芸術祭”にふさわしい。  折しも全線開業したばかりの九州新幹線にかこつけた「なんでやねん、意味わからん」映画とも言える。上下線のすれ違いざまに流星よろしく願い事を唱えると叶えられるとの都市伝説にかこつけ、中間点の川尻で落ち合おうと2人が示し合せて家を出る。旅が人を成長させるのは若い時ほどそうで、小学生ならなおさらだ。新幹線のすれ違いとうまく出会えるかどうかは関係ない。  2人がどう成長したか、観客の感じ取り方を主題に置きながら、作り手の関心は専ら子どもたちを捉えることにあった。そのために取られた時間の流れ方の緩やかさには作り手の意思が反映されていて、決して「なんでやねん、意味わからん」というものではなかった。  そして言うまでもなく、子どもにとって、両親の別居や離婚ほど「なんでやねん、意味わからん」ものはない。


'11.10.31. 高知新聞「第61回県芸術祭特選映画鑑賞会 見どころ解説」


無断転載禁止 掲載:アーク編集室

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