Art's Report site/

ヤマさんの公表雑文帖

最近の日本映画ブームはどこから来たのか
「とさピクかわら版」2006.7.14/15 号('06. 7.14.)掲載[発行:とさりゅう・ピクチャーズ]


 今年の二月の地元紙に“復活か邦画バブルか”という見出しで、昨年の『NANA』や『電車男』なのどのヒット作続出を受けて「日本映画が元気だ」という記事が掲載されていた。そして、日本映画製作者連盟(映連)会長の「邦画は非常に順調。映画界には、十数年前とは比べものにならないほど熱い目が注がれている」というコメントを引いていた。

 映連の2006年記者発表資料(2005年度統計)によると、ヒットの目安とされる「興収10億円以上番組」が、2005年度(平成17年)は26作品あって、前年より約三割
増えたようだ。
 そのうちアニメーション作品以外で20億円を越えているのは、前出の二作品の他『交渉人 真下正義』『容疑者 室井慎次』『ALWAYS 三丁目の夕日』『北の零年』『ローレライ』『星になった少年 Shining Boy & Little Randy』『亡国のイージス』で、合計9本を数えている。前年の2004年が『世界の中心で、愛をさけぶ』『いま、会いにゆきます』『クイール』『スウィングガールズ』の4本で、2003年は『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』『黄泉がえり』『座頭市』の3本、2002年がアニメ作品の『劇場版とっとこハム太郎』との併映だった『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』と『千年の恋 ひかる源氏物語』の2本しかなく、データーが掲載されている1980年以降 2000年に至るまでは、毎年1本あるかないかといった状態だったことからすれば、驚異的な増え方だ。新聞記事では、映画全体の興行収入に対する日本映画のシェアが40%台を回復したのが1997年以来の八年ぶりだと報じていたが、1997年は『もののけ姫』1作で113億円を叩きだしているのだから極めて例外的なものだし、アニメ頼りでもない形での40%台時代となれば、1990年にまで遡らなければならない。

 これがほんの昨年のことなのに、今や日本映画のほうしか観ないという若者が出現し始めて来ているらしい。ちょうど音楽のほうでのJ−POPの隆盛に映画が遅れて倣ったような形だ。僕が若い頃、ポップスと言えば、当然にして洋楽であって、歌謡曲しか聴いてないなどというのは、音楽ファンとして相当に恥ずかしいことだった。それが今のような状況になっているのだから、映画の世界でもあり得ないことではない。もともと映画の業界では、'80年代半ばまで日本映画の占める割合のほうが高かったのだし、'70年代に入るまでは、シェアの60%台を日本映画が占めていたのだから、僕の育った時代感覚からすると大きな異変のように思えるものの、元々の姿に戻りつつあるだけなのかもしれない。

 二月の新聞記事では、このことについて「シネコンの普及と、視聴率競争にさらされたテレビ局が映画製作に乗り出した時期が重なった。日本映画は若者の求めるデートムービーになったのです」というキネマ旬報映画総合研究所所長のコメントを紹介するとともに、「“日本映画の時代だ”とばかりに、製作本数は急増中」だとも記していた。これについては、テレビ局が映画製作に乗り出したこともさることながら、二年前に『フリーダ』の映画日誌にも綴ったように、やはり2001年末に成立した「文化芸術振興基本法」に、映画は国や自治体の支援すべき芸術文化であることが明記されたのち、国の文化行政のなかでも、映画の振興が独立した事業として取り出され、予算の格段の重点化配分がされ始めて、2002年から2004年にかけては、この財政難の折りに毎年倍々で予算増額が図られたことが大きく影響しているような気がする。今や映画館で見かける日本映画において、文化庁や芸術文化振興基金の名前をエンドクレジットに見かけないことは、ほとんどないといった具合だ。

 はやもう一昔前になる“映画百年”前後の時期に、期待を抱かせつつも盛り上がらなかった映画振興施策の本格化がこのように急激に進み始めたことについては、当時の日本での韓流ドラマと韓国映画のブームによる目覚ましい経済波及効果を目の当たりにしたことが大きく影響しているような気がしてならない。隣国韓国では、ちょうど映画百年の頃から二段階の大きな制度転換によって、その後の十年足らずの間に文化的にも産業的にも大きな成果をあげ、その一部が『シュリ』('99)や『冬のソナタ』('02)のように圧倒的な形で、日本への進出を果たした。ある意味で、今時これだけ顕著な施策効果の発揮できる分野は、そうそうあるものではないから、このあたりを踏まえての“日本の映画振興策の強化という方向づけ”がされたのではないだろうか。文化庁ではなく、経済産業省のほうがフィルムコミッションの組織化を推進し、デジタルコンテンツとしての映像ソフト産業に強い関心を寄せ始めていたことに煽られた面もあったように思う。

 文化庁の芸術文化振興施策としての「「日本映画・映像」振興プラン 映画関連支援事業」のなかでも、僕が特に期待し注目しているのは、「多様な作品を鑑賞する機会に恵まれない地域での上映活動や公開する機会に恵まれない優れた日本映画の上映活動を支援」するという“日本映画上映支援事業”だ。二月の新聞記事でも、日本映画の公開作品が急増しつつあると同時に、せっかく作られても未公開作となってしまう映画がたくさんあることを報じていた。地方となれば尚更のことで、大半のと言ってもいいほどの日本映画の新作が自国に住みながら観られない状況にある。
 そして、これらのことは、今年の一月に『さよなら みどりちゃん』の上映で活動を始めた“とさりゅうピクチャーズ”が最近の日本映画に的を絞って展開していることに、僕が大いなる期待を寄せて協力しているゆえんでもある。

'06. 7.14. とさピクかわら版


無断転載禁止 掲載:アーク編集室

TOPpage