Art's Report site/

ヤマさんの公表雑文帖

2003年高知のオフシアターベストテン
機関紙「ICS通信」vol.5('04. 4.24.)掲載[発行:ICS事務局]


*外国映画 上映団体名
1.ボウリング・フォー・コロンバイン[10票/11人] (ムービージャンキー)
2.活きる[8票/10人] (中国映画をみる会)
3.過去のない男[5票/8人] (シネマLTG)
4.エデンより彼方に[6-2票/10人] (ムービージャンキー)
5.ヘヴン[4票/8人] (シネマサンライズ)
6.暗い日曜日[4票/9人] (市民映画会)
7.おばあちゃんの家[4-1票/7人] (シネマLTG)
8.シティ・オブ・ゴッド[3票/6人] (ムービージャンキー)
9.ドニー・ダーコ[5-3票/8人] (ムービージャンキー)
10.スイート・シクスティーン[3-1票/6人] (シネマサンライズ)
*日本映画 上映団体名
1.こんばんは[5-2票/5人] (映画「こんばんは」を見る会)
2.Jam Films[3票/3人] (ムービージャンキー)
2.魂のアソコ[3票/3人] (CAT KIDS CLUB)
4.オー!マイキー特別篇[3票/6人] (県立美術館)
5.アカルイミライ[3票/8人] (ムービージャンキー)
6.ぷりてぃ・ウーマン[4-2票/4人] (シネマサンライズ)
7.西陣の姉妹[3-1票/3人] (小夏の映画会)
8.怪談[3-1票/6人] (県立美術館)
9.怪談蚊喰鳥[2票/2人] (県立美術館)
9.5H体[2票/2人] (クラブ旭ワンコイン)


 恒例のオフシアター・ベストテンも今年で六回目となった。昨年からは、朝日新聞高知支局(今年から高知総局に改称)の主催により選考会への参加者を一般公募する形に変更し、これまでの有志による内輪的なイベントから一皮剥けたものになっている。高知新聞企業事業部が主管する“県民が選ぶ映画ベストテン”は、今年ちょうど半世紀にわたる足跡を刻むことになるわけだが、劇場公開作のみを対象にして、劇場外公開(オフシアター)がすっぽり漏れ落ちていた。これは、映画の公開状況が、既に年によっては、オフシアターでの上映作品数が劇場上映による作品数を上回っている高知の現況からすれば、甚だ不備の目立つところだった。今後は、高知新聞の劇場公開作ベストテン・朝日新聞の劇場外公開作ベストテンとして、相互に補完し合う形で年々の高知の映画状況を総括する役割を果たし続けていきたいところだ。

 そのうえでも、昨年、選考会の場で参加者から提案のあった選出作品の再上映会が早々に実現し、5月の2日3日両日にわたって入場料無料で実施されるようになったのは、何とも嬉しいことだ。180本あまりの上映作品のなかから選出された第1位の外国映画と日本映画を再上映するうえに、オフシアターでも上映されずに到っている上映されるべき高知未公開作を1作品添えて上映会が実施される運びとなった。さらなる朗報とも言うべきことで、今回限りに終わらずに“県民が選ぶ映画ベストテン”上映会同様の定着を期したいところだ。

 去る1月11日におこなった選考会の参加者は、14名で、元高知映画鑑賞会関係から川崎さんと私。シネマサンライズから吉川さん。県立美術館から浜口さん。中国映画をみる会・シネマLTGから石本さん。クラブ旭ワンコイン上映会から川村さん。四国文映社から馴田さん。インターネットのシネマサイト「チネチッタ高知」から管理人お茶屋さん、みわさん、うめちん。公募参加者として、前回に続き、宇都宮さん、今回新たに高市さん、尾崎さん、中川さん。男性9名、女性5名と男女比率が会場での観客割合と見合っていないのが残念で、一般公募による今後の選考会への女性の応募を期待したいところだ。十代参加者が今回も得られなかったのは残念だったが、二十代の新たな参加者を得たのは心強く思われた。
 昨年一年間の高知のオフシアター上映プログラムとしてリストアップされたものは、全部で187作品。外国映画が103本で、それに対する参加者の平均鑑賞作品数は、45本。最多が宇都宮さんの90本。日本映画は84本で、参加者の平均鑑賞作品数が23本。最多は、私の49本。
 上映本数に対する鑑賞割合を見てみると、オフシアター上映の愛好者においても、日本映画の鑑賞割合が低い状況に変化の兆は見られないが、上映者側の日本映画の取り上げ数は、この六年間で最多を記録し、年々増加傾向にはあったものの70本台を一気に飛び越え、80本台となっている。
 また、参加者の鑑賞割合で最高位を占めた作品は、外国映画では『エルミタージュ幻想』で12名。日本映画ではオフシアター外での鑑賞者が多数を占める旧作及び劇場公開作を除くと『ぼくんち』と『六月の蛇』が10名で最高位だった。


 例年と同じ方式により投票選出したベストテンは、上記のとおり。(作品名横[ ]は得票数[観た人の推挙数で、マイナスは反対票])

 上映会主催者の観点からは、外国映画の部では、前回ベストテンの半数を占めたムービージャンキーが今回も4作品、3作品だったシネマサンライズが2作品となったことで、前回1作品の選出に留まっていたシネマLTGが2作品となり、三年ぶりに市民映画会からの選出があった。中国映画をみる会の上映作品は今回初選出。日本映画の部では、3作品の選出となった県立美術館が前回同様の首位で、ムービージャンキーが昨年に続き2作品の選出となったほかは、各1本で今回初選出の主催者名が三つと目立っている。
 外国映画第1位の『ボウリング・フォー・コロンバイン』は14人中11人が観、10人が推したカナダの作品だ。銃社会への告発以上にメディア・リテラシーに思いを馳せさせる部分が秀逸で、長尺ドキュメンタリーを飽かせず見せる技巧に富んだ作品だった。第2位の『活きる』は、国政の変転に人生を翻弄され、最後には子供の遊び言葉のなかに讃える「共産主義」の語を継げなくなっている主人公の姿を印象深く留めた、名匠の気骨の窺える作品。前年に松竹ピカデリーで公開済みの映画だったので、ベストテン公表後、オフシアターセレクションには適さないのではないかとの意見を漏れ聞いた。確かに旧作の発掘上映的なものではない劇場公開の後追い上映作品をオフシアターの名の元に選出するのは、好ましくないかもしれない。事務局で作成する選考会資料に今後は註書きを入れるようにしたい。第3位は『過去のない男』で、この監督の過去の作品にはあまり覚えのない、取りあえずは手放しのハッピーエンドで終わったことに少々驚かされたものだった。

 日本映画第1位の『こんばんは』は、山田洋次監督の劇映画『学校』のモデルにもなった夜間中学にカメラを持ち込み、教育とは何かを問い直したドキュメンタリー作品で、この選考会で第1位選出を果たした後、キネ旬の文化映画部門での第1位選出や第1回文化庁映画賞の文化記録映画大賞にも選出されている。第2位は日本映画界気鋭の7監督によるオムニバス映画『Jam Films』とかなり破天荒な作風にインパクトを与えられたとの『魂のアソコ』だったが、残念ながら私は、両作ともに未見に終わっている。だが、『魂のアソコ』は、上映主催者が5月29日にアンコール上映を行うようで、観逃した穴を埋めることができると喜んでいるところだ。

 今回は、オフシアターベストテンの選出を始めて以来、初のドキュメンタリー作品が第1位を占める結果を外国映画でも日本映画でも果したことが印象深い。ドキュメンタリー作品の認知が広がってきたことの証でもあろう。また、再上映会の実施に併せて高知未公開作を1本上映できるようになったことで、高知では多分1作もまだ公開されていないと思われるイタリアのナンニ・モレッティ監督の『息子の部屋』が上映されることになったのも特筆しておくべきことだ。
 息子の事故死によって見舞われた心の苦しみと癒しに直面する精神分析医を描いた2001年度カンヌ映画祭のパルムドール(最優秀作品賞)作品だ。活発なオフシアター上映による補完がされている高知でも、まだこんな作品が未公開のまま過ぎ去ってきているのは残念極まりないことだが、貴重な機会を得て思い掛けなくも上映される運びとなった。再上映作品ともども観れば必ず記憶に残るだけの3作品を一人でも多くの方に観てもらいたいものだ。


'04. 4.24. 機関紙「ICS通信」vol.5


無断転載禁止 掲載:アーク編集室

TOPpage