Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》'17. 4.23.


vol.286

'17. 4.23.

音楽劇 『正しい数の数え方』

会場:県民文化ホール・グリーン

 チラシに記されていた「演劇+ライブ+アニメーション+人形劇×インタラクティヴ !? アナログな手法とデジタル・テクノロジーが融合した、大人も子どもも楽しめる、奇想天外の時空冒険ミュージカル」と文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門大賞受賞作品との見出しに惹かれ、一体どのようなものを見せてくれるのだろうと赴いた。

 ステージ中央に設えられたスクリーンに映し出されるものが予め製作済みのアニメーションであったり、ステージ上手に置かれた小舞台で行う人形遣いをカメラで捉えた映像であったり、ステージ側から客席を写し画像処理した動画や静止画像の映像であったりするなかで、着ぐるみの犬ジョンがオルガン演奏をしたり歌い踊ったりする部分がいかにも児童劇に似つかわしいぶん却って、児童劇らしからぬ1900年のパリ万博での川上音二郎(岸野雄一)を語り手にした運びが奇抜に感じられた。なかなかシュールで可笑しなものを見せてくれたように思う。

 アニメーションのなかでのナビゲーターは、キャプテン・フューチャーと名乗る少年だ。「動く歩道」と「電宮たるパビリオン」の登場した1900年のパリ万博が新世紀たる20世紀という未来の日常を予言した象徴的なものとして児童劇において提示されていることにちょっと感心した。

 しかも、タイトルに率直に表れていたメッセージがなかなかいい。「正しい数の数え方」は、なにも馴染み深いイチニイサンやワンツースリーには限らなくて、アンドゥトロワもあればアンエアンエアンすなわちイチとイチとイチもあるといった柔軟性というものを、リズムに乗せて身を任す自由に通じるものとして伝えていたような気がする。ひとりひとり名前の違う異なる個性を持つ人間を数えるのに、同じものを重ねて数えるイチニイサンではなくイチとイチとイチのほうがむしろ正しいのだという“ものの観方考え方”に児童の時分から触れることは、とても大切なことのように思う。

 川上音二郎がスクリーンに映る平面と人の生きている立体的な現実との違いについての注意喚起を促して、会場に「2次元と3次元の違いは、縦と横の2次元に対して3次元では何が加わると思う?」と問い掛けた際の子ども達の答えのなかに、奇しくも“感情”という実に含蓄のある回答があって唸らされた。僕の席の四列ほど前に腰掛けていた小学2〜3年と思しき男の子が挙手して答えたものだったが、子どもを侮ってはいけないと大いなる感興を得た。

 ただ惜しむらくは、企画・プロデュース・脚本・演出を担った岸野雄一が、人形遣いのみならず川上音二郎をも演じて歌っていたわけだが、音楽劇とするならもう少し技量の望まれる歌唱力のように感じられたことだ。



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