Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》'17. 3. 8.


vol.284

'17. 3. 8.

劇団俳優座公演『七人の墓友』(高知市民劇場第325回例会)

会場:高知市文化プラザかるぽーと大ホール

 七人の侍ならぬ“七人の墓友”というタイトルにしていたのは、そういうことだったのかと吉野家の家族を中心とした七人が居並ぶラストを観ながら、さまざまな思いが湧いてきた。映画『家族はつらいよ』で周造(橋爪功)が感心されたのは、靴下畳みだったが、本作での義男(小笠原良知)は、色違いの揃いでの歯ブラシだった。殊更に小津安二郎に言及し、笠智衆に触れていたのは、この山田洋次の『家族はつらいよ』を意識してのことだったのではないかという気がした。

 巧みな換骨奪胎に唸らされながらも、観方によっては過度に『東京物語』をなぞっていたようにも思われる『家族はつらいよ』と比べると、本作は、的確に現代の潮流を映し出す風俗と人物についての描出と造形が非常に優れていたように思う。

 舞台装置として背景を一手に担っていた鮮やかなサンドアートに端的に窺えるように、僕が若い時分からありながらも今ほどにブラッシュアップされてはいなかったように思う砂絵やら樹木葬、企業コンサルタントから転身した住職(蔵本康文)、ニューヨークと東京を行き交うゲイ・カップルのアーティスト吉野義明(斉藤淳)と松坂照之(八柳豪)、ゲス不倫などと自嘲しながらも依存と自立の程合いが昔風ではない中年不倫カップルの吉野仁美(清水直子)と三村編集長(河内浩)、そして、過日の新聞に歴史社会学者の小熊英二が「調査によれば、ネットで右翼的な書き込みをしたり、「炎上」に加担する人に多い属性は、「年収が多い」「子供がいる」「男性」などだ【田中辰雄・山口真一『ネット炎上の研究』(4月刊)/辻大介「インターネットにおける『右傾化』現象に関する実証研究」(2008年)】。いわば「正社員のお父さん」である。」と記していたことの典型となるような吉野義男と、その風俗描出や今風の人物造形は実に見事だった。

 何といっても、女性たちが皆々活力に溢れ、生き生きとしている。舞台上でも夫を転がす技をまさに披露していた女相撲の横綱のような貫禄の吉野邦子(青山眉子)を筆頭に、フリーライターの仁美もその兄 義和(千賀功嗣)の妻 美枝子(田野聖子)も、ホスト上がりの恋人 京本剛(齋藤隆介)を最後には従える高沢遥香(佐藤あかり)も、そして、邦子の墓友たちの女性の面々にしても、そろって闊達だったように思う。

 作中で示されていた“未来に縛られない緩やかな連携”という提起を受け、この“緩やかな連携”こそは二十年前に上梓した拙著のなかで、自分の携わっていた自主上映活動におけるキー・コンセプトとして記していたものと符合することを嬉しく想起した。

 また、絵に描いたようなトレンディを集積しているなかにあってゲイ・カップルのアーティストが繰り返し口にする“ラブ&ピース”だけが妙に'60年代の残り香のように際立つことを気にしていたら、最後に♪イマジン♪の大合唱となって得心がいった。まるで冒頭の吉野義男の言い分に対するアンサーとして、その歌詞の意味を読経代わりに住職が謳いあげるハイライトシーンなのだが、砂絵を映し出していたスクリーンに原詞と和訳を対にしてスクロールするくらいのことをしてもよかったのではなかろうか。英語のコーラスと日本語による概略の読み上げが混濁して少々聴き取りにくい難があったような気がする。
 とはいえ、年配女性が会員の中心となっている演劇鑑賞会のマーケット事情をよく心得た非常によくできた芝居だったように思う。笑いも情報も、人生を考え直すヒントも、実に豊かで、大いに感心した。
鈴木聡の快作と言えるのではなかろうか。



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