Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》'17. 3. 4.


vol.283

'17. 3. 4.

カンパニーデラシネラ公演『ドン・キホーテ』

会場:美術館ホールステージ特設席

 実に素晴らしいステージだった。のっけから騎士道物語がベストセラーとなっているさまの描出を借りる形で、滑稽本としてのセルバンテスの小説『ドン・キホーテ』の面白さを見事な身体表現で語り、演劇とは身体表現であるとの核心を改めて鮮やかに印象づけられた。そればかりか、わずか1時間のステージで、著名な前編ばかりか後篇も物語りながら、音楽と小道具の巧みな使い方によって、観る者の想像力を刺激して止まない実にクリエイティヴな舞台を現出させていた。

 音と大きな敷布を使って描出する嵐や荒野の見事さやゼンマイ仕掛けかリモコンか知れない、ジーっという音を立てて動く馬の頭部や騎乗した騎士、風車など幾種類かの小道具を引き立てる箒や布、役者の動きにワクワクしながら観惚れていた。

 そして、現に目に映っている、いま見えているものだけが全てでも真実でも決してなく、見えないものを観る力、想像力というものの大切さを訴え、それらを狂人の名のもとに一蹴する愚というものを風刺的にも描いていたように思う。そういった想像力への讃歌とも言うべき舞台づくりによって、原作に宿っている風刺性や批評精神をも伝えるという離れ業を成し遂げていたような気がする。全く以て見事という他ない。

 ステージ幕を上げ、本来なら自分たち観客が腰掛ける客席を舞台装置に使った場面転換に意表を突かれつつ感心し、役者が客席に向かって台詞を発するときは、舞台上ではこんなふうに聞こえているのかと舞台経験のない僕には大いに興味深かった。それが単に未経験者の観客に知らしめるためだけのものではなく、その遠く細い声の響き自体に、作品としての表現上の必然性が備わっていて唸らされた。

 劇団主宰であり、演出も出演もしていた小野寺修二のみならず、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャほかを演じた藤田桃子やサンチョ・パンサほかを演じていた大庭祐介、崎山莉奈、仁科幸、薬丸翔、いずれの出演者の身のこなしも美しく見事だったが、ちょっとした動きに窺えるキレは小野寺修二がやはり一頭地抜きん出ているような気がした。

 こんなに新鮮で刺激的な「ドン・キホーテ」をこの歳になって体験できるとは夢にも思わなかった。演劇というのは凄いものだと改めて思った。



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