Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》2.24.


vol.260

'16.2.24.

谷中秀治トリオ live at MOKUBA
会場:ジャズ喫茶「木馬」

 十二年前のWAYNO 2003 JAPAN TOUR での南米フォルクローレや三か月前のジャズトリオで聴いた谷中秀治のライブをまた聴く機会を得た。

 今回は、ピアノが山本剛、ドラムスが光田じん。僕が山本剛のピアノをライブで聴くのは、三十余年前となる '82年7月の北本町のジャズ喫茶“アルテック”以来のことだ。結婚して三か月余りの妻と出向いたライブ・セッションだったが、あのときは、ベースが稲葉国光で、ドラムスが守新治、ヴォーカルの真梨邑ケイも来ていた。遊び心と活力に溢れる演奏を山本剛がしていたような覚えがある。

 それからすると、三十余年の時を経て、実に余裕と貫録の演奏ぶりの1stプログラムだった。印象深かったのは、谷中秀治のオリジナル曲のよさで、『マイ・ファニー・バレンタイン』のあとの2曲目『ピック・アップ・カンズ』の都会的洗練を感じさせる演奏にしても、続く『酒とバラの日々』の後の4曲目『赤熊中金元孔雀』の長閑で雄大なスケール感のなかにユーモラスで活き活きとした生命感を覗かせる曲調にしても、大いに気に入った。演奏的には、その後に続いた『ブルーボッサ』の創造的でアグレッシブな演奏が面白かった。

 だが、休憩を挟んだ2ndプログラムでは、やはり山本剛が前面に出てきていたように思う。実に綺麗なピアノの響きから入った『ジェントル・ブルース』から始まり、おそらくは今夜集まった聴衆が最も聴きたかったであろう『ミスティ』の、霧とは対照的な実に透き通った清澄感に満ちたピアノの音色が、とても沁みて来た。そして、三か月前のトリオでの演奏でも気に入った谷中のオリジナル曲『ロータス』の、仄かに朗らかな明るさを覗かせる演奏の心地よさに感じ入った。実は、ここまでの演奏が今日のライブのプログラムとしての構成だったのかもしれない。後に山本剛がアンコールを求められて「今やっていたのがアンコールだよ」と笑っていたのは、そういうことだったのだろうという気がする。

 しかし、聴衆的には、今日のライブの真骨頂は、この『ロータス』の演奏の後、谷中が地元ジャズメンの吉川英治を階下から呼び上げて、ドラムスを光田と交代させて演奏したり、光田に戻してからも高知の女性シンガー3人とのセッションを急遽順繰りに進めたハプニングによる会場の盛り上がりにあったように思う。僕自身、光田の柔らかいというよりもぬるっとした感じの個性的なドラミングよりも、吉川の切れのいい演奏のほうが好みで、心なしか山本や谷中の演奏のノリも吉川に代わってからのほうがグルーヴが優っていたような気がする。3人の女性シンガーも何を歌うか問われて、それぞれ得意とするレパートリーを挙げていたように思うが、そのいずれにも聴衆と歌い手の心をくすぐる絶妙のエンタテイメントを添えて展開し、シンガーや聴衆の女性を涙ぐませていた。ここで先のアンコールの件となるわけだが、「それじゃあ、特別に僕が唄おうか」と山本剛が披露したのが、昭和初期に大ヒットした『アラビヤの唄』と『エノケンのダイナ』。なんとも愉快な気持ちになれる楽しいひと時だった。

 それにしても、二時間余りのなか、時間帯のそれぞれで随分とカラーの異なる実に贅沢で楽しいライブだった。わずか30席余りという空間の緊密性と所縁ある顔触れの集いによる親和性が醸し出すライブならではの醍醐味が味わえる演奏会で、大いに満足した。

http://www.arts-calendar.co.jp/YAMAsan/15/11-19.html
http://www.arts-calendar.co.jp/YAMAs…/…/WAYNO_EN_VINO*2.html
http://www.arts-calendar.co.jp/YAMAsan/13/1-17.html


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