Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》'16. 10. 1.〜 2.


vol.273

'16. 10. 1.〜 2.

高知演劇ネットワーク演会プレゼンツ“演劇実験空間 蛸蔵ラボvol.3”

会場:蛸蔵

 半年前に観た vol.2 も面白かったが、vol.2 の8演目から10演目に増え、県外からの参加公演(東京2、岡山1、愛媛1)が4つもある盛り沢山に大いに楽しませてもらった二日間だった。個人的に裏方の一人を務めていた高知市文化振興事業団の吉田さんによれば、玉石混交の10作品とのことだったが、巧拙も含めてバラエティ豊かであればこそ際立つものがあって、気づきや触発も生み出しやすく、演じ手にとっても観客にとっても、ラボを標榜するに相応しい効用が得られるように思った。

 初日の5演目は、出演者1名のステージが過半を占めていた。最後の演目を除き、ふだん馴染みのない面々による演目ばかりだ。演会なり蛸蔵の活動にはそれなりに接してきているつもりだったので、改めて演会の活動の裾の広がりの大きさに感心させられた。聞くところによると、馴染みのなかった劇団等からの申し入れも多々あったようで、“高知の演会”自体の認知度が飛躍的に上がってきていることを感じさせられた。オープニングは、東京からの参加という“愛玩墓地”『火葬してくれ』。高知出身の明大生の作・演出による作品で、高校演劇を彷彿させる生硬な初々しさが微笑ましく、高知新聞のコラム欄「小社会」の名や丸谷才一の名が出て来たりするところに笑った。

 二つ目の“劇団ブリーフ”による独り芝居『これっぽっち』は、演劇センター'90にいた刈谷隆介の作・演出・出演による作品で、圧巻の熱演に、観客の啜り泣きが随所から漏れ聞こえてきた。僕がこれまでに観た土佐弁で演じられた芝居の白眉は、6年前の“演劇祭 KOCHI 2010”でのTRY-ANGLEによる『農業少女』だったが、本作はそれ以上に日常語としての言葉が活きて伝わってきたように思う。また、本物の砂利のなかにスコップを突き入れる音が非常に効果的に響いてきた。出色のステージだった気がする。それにしても、なぜ♪ひょっこりひょうたん島♪だったのだろう。間もなく還暦を迎える僕が幼い頃に同時代のものとして接したものであって、作・演出の刈谷隆介とは世代的に合致していない気がするのに、なんか不思議に思った。

 三つ目の小竹花枝の振付・出演による『たそがれ』は、いわゆるダンスなのだが、昇華とか抽象に向かう志向性を持っているイメージの強い身体パフォーマンスにおいて、かほどに具体的な身体動作を見せるものは初めて観たので、己が視座をどのあたりに置くのが据わりがいいのか暫し戸惑った。こういうのをもって“演劇舞踏”というのだろうか。憂歌団の歌う3曲に乗せて、飲酒やパチンコを繰り広げた後に提示された海辺での石投げのようなアクションに思わず吹き出しつつ、何とも不思議な興味深さに見舞われた。

 その次の演目は、岡山から参加した“ピンクホース縁(えん)劇団”による『与一の弓』で、九郎判官義経を演じた田辺ひかりの作・演出による作品だった。源平合戦における那須与一の逸話を素材にして設定だけを借りた奔放なキャラ造形と台詞廻しの面白さが思いのほか愉しかった。とぼけた味というかズレた個性の程が、那須与一(山田はじめ)、後藤実基(有馬泰成)、義経とそれぞれうまく絡み合っていたように思う。

 初日の最後は“蛸蔵ラボプロジェクト”による『23分間の奇跡』で、ジェームズ・クラベルの短編小説に材を得たものだ。実に深みのある台本で、教育と洗脳の境界線などというものはくっきり引けるものではなく、地続きにあることの怖さを端的に炙り出していた。奥宮実咲が新任女性教師の冷徹な恐さをとてもよく演じていたように思う。また、出演者にようやく顔馴染みを見い出し、やっと蛸蔵に座っている気になった。演会も大きく育ったものだと大いに感心した。

 小休止の間に会場設営を行なった“大演劇交流会”と称する演会による宴会にも参加し、いつの間にかもう若者とは呼べなくなった古くからの演会メンバーや新進の若者たちと歓談することができて大いに愉快だった。


 二日目の5演目は、打って変わって独り芝居は一つもなかった。一番手は愛媛から参加した“劇団コバヤシライタ”によるマジックショーと芝居をコラボした珍しい趣向の作品で、テーブルマジックの実演を目の当たりにするのが初めての僕は、たまたま最前列の被りつきで観ながら、すっかり感心してしまった。当然ながら全くタネが判らなかったが、芝居のほうの話のタネもさっぱり判らなかった。

 高知大学演劇研究会の農学部生が中心となる“チームもののべ”による『ミネオとタクヤと時々オカン、モリソンさん』は、2部構成とした2つの作品名をそのまま繋げたタイトルだった。モリソンさんが森村さんのことだとは思わなかった。若々しいエネルギーというか元気の感じられるステージだった気がする。

 続く“The limited panics”の『正しい“私”の殺し方』は、キャラが立っていてなかなか面白かったのだが、兵頭美来の作・演出によるオリジナル作品なのに、妙に既視感が付きまとうことが気になった。

 二日目の演目で僕が最も面白かったのは、四つ目に出てきた“大人になったらオルゴール”による『俗流地獄巡り』だった。上方落語の「地獄八景亡者戯」を再構築したという舞台は、まさに噺家(丸山良太)を脇に置いて語らせる落語とともに、地獄に落ちた男(友野大智)と閻魔大王(吉岡裕太)との遣り取りを芝居で見せる趣向の舞台だったが、それぞれの台詞回しに話芸の妙味のようなものがきちんと宿っていて、なかなか愉しかった。

 最後に登場したのは、東京から招聘された“劇団子供鉅人”による『オノマトペプロレス高知大会』だ。CoRich舞台芸術まつり!2012準優勝、「関西ベストアクト」二期連続一位などの活躍をしているようだ。だが、第6回高知大会(http://www.arts-calendar.co.jp/YAMAsan/07/8-22.html)で初めて観て、審査員も経験したことのある“詩のボクシング”を想起しつつ、詩のボクシングにはなかった“プロレスにつきものの実況”にこそ、肝があるような気がしたものの、肝心の実況にあまり魅力が感じられなかったのが残念だった。事前のオノマトペプロレス予選(ワークショップ)で選抜された“地元オノマトラー”の個性の強烈さが目立っていて、「言葉を喋ってはいけない、相手に触ってはいけない、これだけのシンプルなルールで演技的瞬発力で戦うオノマトラーたち」という触れ込みのなかで、プロオノマトラーたる劇団子供鉅人の役者陣の反則技を引き出したりしていたところが可笑しかった。

 第3回となる今回は、初めて公的機関からの助成金が得られたようだが、演会によるイベントとしては既に16回を数えている“演劇祭KOCHI”以上の可能性を秘めている好企画だと思う。今後の展開が楽しみだ。


vol.2 のライブ備忘録
http://www.arts-calendar.co.jp/YAMAsan/16/3-26.html



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