Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》 7.21.


vol.247

'15. 7.21.

劇団東演 公演『月光の夏』(高知市民劇場第315回例会)

会場:県民文化ホール・オレンジ

 戦後四十五年を迎える1990年を舞台にした作品を戦後七十年を迎える今“ピアノソナタ「月光」による朗読劇”として観賞した。1993年の映画化作品は、公開当時に観たような覚えがあるが、今回の朗読劇で読み上げられた上原良司少尉22歳の遺書が映画化作品にも登場したかどうかは覚えていない。
 遺書に「…私は明確にいえば自由主義に憧れていました。日本が真に永久に続くためには自由主義が必要であると思ったからです。これは馬鹿な事に見えるかもしれません。それは現在日本が全体主義的な気分に包まれているからです。しかし、真に大きな目を開き、人間の本性を考えた時、自由主義こそ合理的なる主義だと思います。…」と記した彼の名前は、学生時分に読んで非常に強い感銘を受けた『きけわだつみのこえ』で記憶したものだ。読んだ当時も彼が率直にリベラリズムを称えていたことに衝撃を受けたが、戦後七十年を迎えて異様なスピードで国家主義が台頭してきているなかにあって、まぎれもない戦時下の青年の生きた言葉として『きけわだつみのこえ』に今なお残されていることの価値と、今回それを朗読劇のなかで読み上げた意義とに想い及んで、大いに心打たれた。
 舞台装置や衣装を設えた作劇ではなく、「月光」そのものの演奏を前面に出した朗読劇として構成されていたことに対しては、それであれば、海野光彦少尉の弾いた「月光」には、もっと清澄なるイメージの響きがほしかったのに、いささかもったりした感じがあって、僕にはあまりフィットしてこない印象になり、少々残念だった。


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