Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》11.19.


vol.254

'15.11.19.

谷中秀治 live at MOKUBA
会場:ジャズ喫茶「木馬」

 とてもいいセッションだった。やはりこれくらいベースが鳴ってくれると気持ちがいい。谷中秀治[b]が率いる形のトリオで演奏している吉川英治[ds]や高崎元宏[pf]が、いつにも増して非常に伸び伸びとセッションを愉しんでいる感じが伝わってきた。五日前のライヴで感じた和やかさとは違った活気とノリの良さが楽しく心地よかった。ふだんブラシを多用する印象のある吉川が今宵は、ブラシだけで演奏したのがプログラムの全11曲中、前半の『ユー・アー・マイ・エブリシング』と後半の『スタンド・バイ・ミー』の2曲しかなかったことに端的に表われているような気がした。
 先ごろ56歳になったばかりという谷中が、自分の名前を冠するライブは初めての経験だと言いながら、たぶん彼が最も若いというメンバーのなかで実に気持ちよさそうに弾いていたことが次第に伝播していくようなセッションだった気がする。1曲目の『Monk's Dream』が始まるや、よく鳴るベースに感心し、トランペットの津村敦が加わった2曲目の『踊るリッツの夜』の力強くて歌っているようなベースの響きが素敵だった。その谷中の作品だと紹介されていた気のする3曲目の『ロータス』ではトリオに戻ったが、メロディアスなピアノの響きがきれいな演奏で、とても気に入った。
 前半で最も気に入ったのは、次の『ユー・アー・マイ・エブリシング』の演奏だ。フリューゲルホーンを携えた津村の加わったカルテットで、高崎のピアノで始まったが、しっとりした“大人の翳り”の差すような情感の籠った四人の演奏が味わい深かったように思う。曲を重ねるごとにセッションとしてのノリが良くなっていき、津村がミュートを掛けたトランペットに持ち替えた『バード・ソング』、吉川のdsで始まり谷中がボウイングも入れた『Well,You Needn't』ではピアノがよく走っていて、愉しい気分になった。
 休憩後にピアノソロで始めたトリオによる『金の耳飾り』は、題名に相応しくちょっと洒落た感じの演奏で、ドラムスもブラシとスティックを持ち替えたりしながら、多彩な音を聴かせてくれていたように思う。次の『ティコ・ティコ』では谷中が駒の外側の弦のボウイングで面白い響きを出したりして、軽快なピアノのなかでラテンの楽しさを味わわせてもらった。フリューゲルホーンの津村が加わった『ソング・フォー・マイ・ファーザー』は、木馬では何度も聞いたことがある気のする曲だが、ベース・ソロで始まる演奏を聴いたのは初めてのように思う。ドラムスがとても素敵だった。
 そのドラムスの吉川がヴォーカルも披露した『スタンド・バイ・ミー』は、後半のなかで最も気に入った演奏だった。この曲もベース・ソロで始まり、途中でボウイングも織り交ぜながら、ヴォーカル以上に唄っているように感じられたベースが特に印象的だった。
プログラムの最後はMCの谷中が「これから1時間くらいやってもいいかな?」との軽口を添えた『インプレッションズ』で、なかなか力強くかっこいいセッションだったように思う。たかさきトリオ+αのふだんの演奏イメージは、“肩の力の抜けた大人の世界”なのだが、こんなにも活力と昂揚を感じさせてくれるとは予想外で大いに満足した。
 アンコールは、おそらく『達者でナ』の1曲で終わりだったろうと思うのだが、谷中の「もう1曲やりましょうか」との声にすぐさま高崎が反応して始まった『チュニジアの夜』が加わり、もうけものだった。二人に引っ張られる形で始めた津村が最後にはトランペットのミュートを外して、しゃあねぇなぁと言わんばかりに吹き鳴らし始めたように感じられたのが、何だか可笑しくも愉快だった。
楽器で会話のできる人たちというのは、本当にいいなぁと改めて思った。

演奏曲
1.Monk's Dream  
2.Puttin' On The Ritz
  3.Lotus  
4.You're My Everything
  5.Bird Song  
6.Well,You Needn't
【休憩】
1.Golden Earings
  2.Tico Tico  
3.Song For My Father
  4.Stand By Me  
5.Impressions
【アンコール】
1.達者でナ  
2.A Night In Tunisia


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