Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》9.24.


vol.227

'14.9.24.

劇団朋友公演『女たちのジハード』(高知市民劇場第310回例会)
会場:県民文化ホール・オレンジ

 篠田節子の原作小説も未読で、賀来千香子主演のNHKドラマも観ていないが、二十年近く前の「女たちのジハード」は、当の女性たちに見受けられる結婚観も含め、今もなお一向に変わらぬ状況にあることが窺えた。だがそこに、作品の普遍性というか不朽を思うよりは、女性の置かれている状況の相変わらずぶりのほうに思いが至る。時代の変化のスピードは激しいと思われがちだが、一向に変わらなかったり、成熟していかないどころかむしろ退化していると感じられることも多い昨今ゆえ余計にそう感じたのかもしれない。
 高校を卒業して16年間勤めて来たとの斎藤康子(加藤忍)は、序盤でのエピソードと同じく、おそらくは農業者と結婚することになるのだろうが、松浦正樹(藤敏也)との結婚と安藤雅也(小宮山徹)との結婚の差異の大きさが、そのまま康子がジハードにおいて勝ち取ったものなのだろう。
 営業のための嘘を口にするのが苦痛だったとして同じ業界の最大手を脱サラした松浦が虚業と呼ぶ損保に勤める5人のOLの人物造形がなかなか見事で、程よくカリカチュアライズされた女性像の本音と実感が活き活きとユーモラスに伝わってきた。
 近年の例会作品のなかでも出色の舞台だという気がする。大嫌いな石原慎太郎を想起させる敬礼ポーズだけはいただけなかったが、その一点を除けば、劇団であれ俳優であれ、ネームバリューで選ばれた作品ではないだけの出来栄えに大いに満足した。
 損保のOLは腰掛け仕事だと公言しつつ、5人のなかで唯一の夫子持ちである藤崎みどり(水野千夏)の企画した介護保険プランのプレゼン・ブリーフを作成しながら、本気でやれば保険の仕事も面白いかもなどと言っていた浅沼沙織(桐原史佳)が、「斎藤さんが変わったのは競売でマンションを手に入れて自分の居場所を確保したときからだった」というようなことを言っていたけれども、それ以上に大きな出来事は、エリート商社マンと目された岡崎(相馬聡廣)とのデキ婚で玉の輿に乗ったかと思われた後輩の畑紀子(平塚美穂)が夫からのDVに苛まれていることから護るために、引き取ったことだったような気がする。マンションを手に入れていたからこそできたことだと言われればそれまでだが、より重要なのはやはり、紀子を連れ戻しに来た岡崎に引導を渡した宣言にあったと僕は思う。
 観後感として“積極的に生きることへの力”を与えられるような芝居だったなと感じた。自分のやりたいことのある人生は素晴らしいとか、やりたいことを見つけられた人は幸いだとか、よく言われるように思うが、三田村リサ(野上綾花)が「思ってたことと違うことを言ってる、わたし」と言っていたように、沙織が留学先のアメリカで始めたことも、彼女が元々やりたいと言ってたこととは違うものだった。「やりたいこと」というと得てして「こと」のほうに重きが置かれ、「何を?」という話になりがちだけれども、大事なのは「こと」のほうではなく「したい」という想いのほうだ。生の実感としてその想いを引き起こしてくれさえすれば、「こと」のほうは、保険企画の実現でも、有機トマトの加工販売でも、豆カレーの訪問販売でも、トイレのないネパールの田舎で連れ立って排泄することでも、何だって構わないのが人の生の真実であることを伝えてくれる素敵な作品だったように思う。
 地味な女性から脱皮して輝きを得ていった康子のように“姿勢のいい生き方”をしたいものだと思わせてくれる舞台だった。


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