Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》11.23.


vol.230

'14.11.23.

演劇センター'90 公演NO.88『レンタルファミリー〜家族はレンタルの時代です〜』
会場:新薫的座(洞ケ島町薫的神社)
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 開演前に劇団主宰の帆足寿夫さんから少し古い作品だとの前説があったが、劇中でも「バブルが崩壊して」という台詞があったから '90年代半ばの作品なのだろう。今回の公演チラシの裏面にはレンタル家族というサービス業が今でも相当繁盛しているようだと記されているから、もう二十年以上続いていることになる。レンタルで得る時間貸しの家族の物語は、映画『紀子の食卓』['05]でも観た覚えがあるのだが、園子温監督作品の持っていた痛烈さからすると、ある種、予定調和的なハートウォーミングな物語に帰結しそうな感じがあったのだが、やや強引ながらも、めでたしめでたしで終わらすまいとする作者 砂本量の強い意志の窺えたラストの厳しさが印象的だった。家族の営みというものが本当に難しくなっている時代に、レンタル家族で得るハッピーエンドを綴ることへの躊躇いがあったのだろう。
 とはいえ、米屋を営む80歳の真鍋重明(松田昭彦)と失職して家族でレンタル家族業を営むことになった男(谷山圭一郎)の演じる真鍋家の亡き三男伸之45歳とがビールを酌み交わす場面は、なかなか素敵で心打たれた。僕よりも若い松田昭彦が80歳の老人を演じると前もって聞いたときに、今ひとつイメージが湧かないように思ったのだが、老父の抱えた屈託と純真とを程よい按配で滲ませて、なかなかの好演だという気がした。
 家族の営みの難しさと現代人の心の問題の難しさを折り込むうえで、若者の向かう新興宗教やITへの引き籠りへの言及は非常に有効なものだと思われるが、杜男22歳(岡村愼司)、すぐり19歳(別役みか)のキャラクターが専ら世相を窺わせる役回りになっているように感じられた。あまり遣り過ぎると焦点が散漫になるので、按配の難しいところだと思うが、もう少し語らせる部分があってもよかったような気がする。西田美加の演じていたよしえ40歳は、主婦の動的なパワフルさを滑稽なまでに発揮していた。サク75歳(帆足由美)の静的なパワフルさと好対照をなすことで、なかなか効いていたように思う。
それにしてもパワーというのは、もはや男性のものではなく女性のものになっている時代だということを改めて思った。
 大いに感心したのが、ラストで重明がムキになってネジを巻いていた時計の壊れた文字盤の造作だった。取替えの手際も含めてなかなか見事で、家族の在り様のみならず、時の流れについていけなくなって壊れている人の心の在り様も暗示する形で浮かび上がり、いい効果を上げていた気がする。


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