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□WADA Map vol.144


Live

2007年3月19日
新潟・Gioia Mia

29th scandeinvian connection

 ギーネ・ガウスタード・アンデルセン(Vo)
 アンダーシュ・パーション(Pf)
 森泰人(B)
 鶴谷智生(Drs)


今回のツアー8ケ所うち、新潟だけ地元出身の日本人ドラマー鶴谷智生が加わる。もとより日本で一番好きなドラムと森さんの共演なので、何があっても聴き逃せない。ツアーの概要が決まった瞬間から手回し根回しの末、初の新潟へ。

アンダーシュ・パーションの曲、[NatureBoy]。「雪が降ってる」と思った。風花の舞う静かな旋律から始まった曲は、いつか目の前が真っ白になってしまうくらいの雪で覆われる。見事な雪景色に溜め息が洩れる。アンダーシュのピアノは輝くクリスタル、ダイヤモンド。歌舞伎の雪の場面で使われる太鼓のリズムを思わせる重たいドラムが、時折、耳に響く。

白い風景にひとすじ、金色のサンピラーを森さんのベースが作り出し、その中で雪はさらに煌めきを増す。雪が降りやむと目映い光。ドラムをフィーチャーした[Magic Man]。ただただ白い風景だったところに新潟では金色のシャンペン・シャワーが熱い光を浴びせる。ドラムが溶かした清冽な雪解け水を受け止める春の大地、温かな樹木の息づきが聞こえるような。

雪の夜が明ける。まず一番に窓の外を見ると、ただただ目映いばかり白金の世界。足あとを付けに行かなくちゃ!雪持ちの枝を引っ張って、陽の光の中でもういちど雪を降らせたい。[NatureBoy]では、色彩を抑え、モノクロームの雪景色に様々な光の表情を与えていたピアノとドラム。[Magic Man]になると、雪景色の中に子供の歓声と明るい帽子や手袋の色彩を見せてくれて、春の予感。

そして、ギーネ・アンデルセンが登場。ステージに立った瞬間に冬から春へ。お客さんたちも笑顔の花が咲く。[Old Country]など。トリオの演奏にドキドキしていたところに、穏やかで可愛らしいボーカル。[My Favorite Things]は、この時季、もっとも聴きたい曲かもしれない。冒頭の雪景色がすっかり満開の桜、そして花吹雪。(TVCMで、My Favorite Thingsは桜-春の連想ができあがってしまっていて)。

淡い緑や黄の春色の中に潜む苦味。去年の秋以来、聴いていなかった森さんのベースは、春に必要なビターな風味と一緒で、ギーネの可愛い歌やアンダーシュの煌めくピアノに合わせるとそれぞれがいっそう際立つ。そして、森さんのベース、ライブでの存在の大きさ強さをあらためて、大地のようだと思う。

ギーネは、ジュディ・ガーランドやジュリー・アンドリュースのような歌がよく似合う。ただ可愛いと言ってしまっては悪いような気がするんだけど、アイドル的な可愛さではない。音楽のすべてが彼女の味方になっている、味方にできるノーブルさがすごく強い。彼女はトランペットの演奏もするそうで、ハミングはトランペットを吹くような指の動きと音が印象的。

続いて、スウェーデンの民謡を。スウェーデンの民謡を歌うに当たっては、ひとこと言いたいことがノルウェー人のギーネにはあるらしい。そこで、このツアーではスウェーデン民謡を歌った後、ノルウェーの民謡を独唱するのがハイライトになっているそうだ。二つの国の間のことはともかく、ギーネはとても丁寧にスウェーデンの民謡を歌う。森と湖の北欧のイメージよりは荒涼とした、自然の厳しさがうかがわれる曲想で、それでも温かな豊かさを私達に分け与えてくれるスウェーデンの音楽の源に感謝したい。歌い上げ、ひと呼吸のあと、ノルウェーの民謡をいっそう真摯な表情で歌う。歌詞はわからずとも、何かに額づきたい気持ち。

2ndになり、始まりはまたトリオから。ポール・サイモンの[So Long, Frank Lloyd Wright]。大好きな曲をこのトリオで聴けるなんて!時折、透明なハミングが聴こえる気がする。S&Gの世界感は二人の歌声であってこそ、と思っていたけど、トリオのハーモニーでさらに深みと透明感が増している。好きな曲が演奏され、それが違う表情で更に魅力的になるのは、本当に嬉しい。

再びドラムを、というより鶴谷さんをフィーチャーしての[Milonga]。数々のパーカッションも駆使。シンプルなドラムセットだけでも華やかさを表現できる一方、パーカッションが彩る中でも確実なリズムでトリオもボーカルも支えられる。わずかなリハーサルの時間だけで、「柔軟なリズムとアイデア(by森さん)」でライブ全体を支え、さらに初めて音を合わせる森さん、アンダーシュ、ギーネに演奏しながら、いろいろと「仕掛け」、それぞれから正解を誘い、また求められる音を返すのは、見ていて聴いていて、楽しくて仕方ない。トリオ+ボーカルの密度がとても充実している。

スカンジナビアン・コネクションは、このツアーで29回目となった。スウェーデンからミュージシャンがやってくるばかりでなく、日本で待ち受けるミュージシャンの存在があることは、コネクションとして、やはり必要で大きな意味があるものだとこのライブで強く思った。

ライブ後の未明に降った雪は、ふわふわと舞うような軽い雪でとても美しい。いつまでも見飽きることのない、連綿と続く雪。新潟というと「雪」としか思いつかない私が期待した通りの、いちばん見たかったものだったかもしれない。

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2007年3月
新潟にて

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