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□WADA Map vol.143


Live

2006年12月6日
東京・高円寺JIROKICHI

■鶴谷智生"Rouge et Blanc"
 ■鶴谷智生(Drs)
 ■新澤健一郎(Pf,Key)
 ■小川竜朗(Visuals)

 ■■Guest:
   西嶋徹(B)
   前田優子(Vo)
   Obata"mooki"minako(Vo)
   竹内"Ruth"尚美(Vo)



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「歌」って、なんてプライベートな密やかなものなのだろう。秘密秘密、ないしょないしょ、な感じ。ライブのタイトル "Rouge et Blanc"。Rougeが3人の歌姫たち、Blancがピアノトリオで、ロゼな立場にVJ、でしょうか。ボーカリストは3人とも素敵。それぞれの個性が生きていて、それぞれの歌を丁寧に真剣に歌う表情に感動してしまう。

雲のさまを歌うバックのスクリーンに、様々な雲が流れていく。これが面白いのがVJ小川竜朗さんがいるライブ。音楽がBGMになる訳じゃなく、ただの環境映像として流れていくのではなく、音楽と映像が会話してる感じ。歌っている表情と雲の映像がシンクロしてるみたい。で、もちろん、ピアノトリオも黙っていない。編成はピアノトリオなので、そう書いているけどソリストが3人集まってるという感じで、誰が何を始めるか?!を演奏者自身が楽しんで成果を積み上げていく。トリオのそれぞれの演奏は、歌を深く私に届けるために無意識のうちに働くシナプス。耳や目から入った「あっ」と思うもの、これを手に取ったり立ち止まったりする。手を足をどう動かそうなんて思わずに気が付くとそうなってる。

#ひつじ という曲は、ステージの傍らで小川さんがターンテーブル(?)を操作しながら、今、ステージで進行中の演奏の手もと、表情を捉えてスクリーンに投影。映画を切り取ったポストカードのよう。揺らめく映像は、曲のリズムやトーンに合わせて、ボーカルの息遣いに揺れるキャンドルの炎のように。そして生まれた瞬間の音楽。創造主たちの顔。ほんのちょっとのタイムラグがあって、今と音と絵が追いかけっこをしているようで。

前田優子の#アヴェ・マリアがもう!なんだろう?この強さと豊かさ!軽やかで深いボサノバも素敵だったんだけど、こちらのほうが前田優子のちからにはふさわしいような気がする。ラテンなコブシで歌われる、このアヴェ・マリアの力強さにこそ清冽な母性が溢れている。艶っぽい大人の女性の声・姿こそが聖なるマリアを歌えるのではないかなぁ。カジュアルなステージが一瞬で石造りの重厚な聖堂に感じられる。

竹内“Ruth”尚美の歌う#Please Send Me Someone To Love と#The X'mas Songも!こういう、いつかどこかで聴いたようなブルースって大好き。子供のころから幾度となく聴くともなく耳にしていた歌を(たぶん)初めてじっくり聴けると懐かしさや嬉しさで胸がいっぱいになる。歌うのが誰でもいいわけでなく、“Ruth”だからこその嬉しさは、かなりあると思う。豊かな声量と表情に、思わず胸の前で手を組みたくなる。

#White X'masは、Obata“mooki”minako。冷たい雪ではなくて、まっしろな毛皮に包まれているような豊かな温かな"白"。雪景色に憧れる気持ちの中には暖かな部屋や誰かのぬくもりが約束されているはずで、イルミネーションも見栄もなく、子供の頃の両親の慈しみだけのクリスマスを思い出す。前田優子・竹内“Ruth”尚美の歌う表情に釘付けになったのだけど、"mooki"のこの歌の時、なぜか顔を見ることができなかった。声を聴くことが精いっぱいで、受け取るものが大きくて両手に溢れてしまいそうで。

私はステージに近いところで聴いていて、彼女たちの歌声ひとりじめという気分。彼女たちは私に(だけ)歌っている訳はなく、ライブハウス全体に向けているのだけど、でもそれだけではなくてどこか遠いものにも自然に歌声を届けているように感じる。で、それが回り回って、お客さん一人ひとりの耳元に向けて歌っているようにも感じる。とても大切な秘密を囁かれているような、くすぐったさがすごく嬉しいの。ソファーにすっぽり体を包まれて大きなヘッドフォンで耳も包んで、そうやって響いているようにプライベートな歌声。今年はもう他の誰かが歌うクリスマス・ソングなんて耳に届きませんように。

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2006年12月
東京にて

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無断転載禁止 掲載:アーク編集室