Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》TRIO'-050429

vol.134


TRIO'



2005年4月29日
東京・六本木Alfie

TRIO'
 市原康(Drs)
 福田重男(Pf)
 森泰人(B)


昼間の高温がビルの中にこもっていて、日が落ちたというのに夏のような暑さが残る店内。まず、何よりも冷たいお水、大ジョッキで飲みたいね、と。

客席がステージに溢れるほどに大入り。演奏者がステージに向かいながらもお客さんと話が弾んでいる様子。まだお話し中?と思っているといつのまにかスタンバイして演奏が始まる。1曲目は「To staffan」。まだ体が夏の熱さも重い梅雨も受け入れがたく思っている季節の穀雨。いつになく雑然としたお客さんの上に静かに降りかかる霧雨のような曲。まぁ落ち着いて座って、と肩に手を置かれたような温かな重みが伝わってくる。1stは、静かに重みのある曲が続く。急な暑さにざわついてしまっていた気分に、煙るような雨の風景を見せてくれて、落ち着く。このくらいの雨、傘なんてなくっても、という霧雨のほうが実は芯まで水分が染み込んでしまう。

雨にとじ込められた小さな部屋で聴いているようで、いつもの解放的なライブとは違い、中へ中へと潜っていくような。ウッドベースからピアノの音が、ピアノからドラムの音が聴こえてくるような不思議な感覚。熱さにバテ気味だった根も茎も葉も、やがて水滴を溢れさせるほどに水分を行き渡らせる。

市原さんのドラムは、このトリオでの静の部分を引き出すドラムだろうか。散漫に流れそうなところをきちっと着地させる心地よさ。静かに流れる時間と音の美しさを堪能。飲みたかった水もたっぷりと補給された。そうすると今度は少し違う味わいが欲しくなる。

じゅうぶんに水を満たしたあとに必要なのは太陽。そこで「Shine」。私の席から楽譜がときおり覗けるのだが、この「Shine」の楽譜は作曲の市原ひかりさん(市原康さんの娘さん)の手なのだろうか、ものすごく元気な弾けるような筆跡。

ライブの前に「きょうは福田さんがいつコワれるか!」が楽しみと友人が言う。しっとりとした雰囲気の雲が切れ、差し込んだ日射しは真夏のような「Shine」がその時だっただろうか。TRIO'での福田さんのピアノ(前半のようなしっとり)は、他の場面での福田さんを知る人には意外な一面なのだそうだ。その話を聞き、またTRIO'でいつの間にか弾けているピアノを聴くと、その「いつ?」が現れるのが楽しみになる。鍵盤に向かう様子やちからの入り具合は、見ている分には何が違うわけでもないのだけど、ある時から体温が上がるように福田さんが発している色や輝きが急に強くなる。

いやな暑さだった昼間から、五月雨の気分を味わい、梅雨明けの太陽が輝き始めて、ライブ後半へ。

今回の森さんは、ご自身のベースではなくて借り物での演奏だったせいか、「伴侶」ではない感じは、やはりいつもと少し違うかなぁ。とても大きな、悠久の理のようなことを森さんのベースにいつも思うのだけど、大木の幹の途中から芽を出す葉っぱを発見、みたいな。とは言え、密やかな煌めきのドラムと強い輝きのピアノとの間で、どちらの演奏も見てないようで聴いてないようで、実は森さんが大きな掌で地球を回しているようなライブだ。

ライブハウスに縁の故・日野元彦氏の思い出を市原さん・福田さんが語りつつ「Straight No Chaser」で走り抜けていく。一歩一歩、山道を辿っていくような静かな前半、急に目の前が開ける頂上、そこから一気に駆け降りていくような後半。とても繊細な演奏から始まり、ラストに近付くにつれ、楽器と演奏者の力強さに圧倒され続けていく。バランスを保ちながらも、どこかへ弾かれてしまいそうな緊張感とするりと抜け落ちそうな弛緩の加減がライブの楽しさ。


2005年4月29日
東京・六本木Alfieにて。


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