Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》24th scandinavian connection 2005 October 13

vol.138


24th scandinavian connection 2005 October



2005年10月13日・14日
東京・南青山BODY&SOUL

24th scandeinvian connection
ア・ソング・ブック トリオ
 リーナ・ニーベリ(Vo)
 アンダーシュ・パーション(Pf)
 森泰人(B)


雨上がりのしっとりとした空気に、甘い金木犀の香りがどこからともなく漂う。花の在り処を探りながら散歩を続けて行けば、香りは曲り角ごとに強く、淡く、感じられる。そんな静かなプロローグ。6年前に、ここBODY&SOULで初めてリーナの歌を聴いた時、そして、その時に買ったCDは、天気のいい昼間に聴きたいと思うボーカル。明るく軽やかな声には、太陽が似合うような気がした。今回の1曲目は、子守唄のように心地よく、ふんわりと微睡む夢の中に誘われるように。。。

最初の来日以来、森さんに「絶対!絶対!もう一度、リーナを連れて来て!」とお願いし続け、ようやく聴ける幸せに夢心地。

2曲目"BODY & SOUL"。店名と同じ曲名で、歌い始めにいたずらっぽい笑顔が浮かぶ。1曲目の印象とはだいぶ違うけど、私にとってのリーナの印象に近い。その笑顔のままにハリのある瑞々しい果実のような歌声。リーナは、音楽が、歌が大好きなんだなぁとこちらも笑顔が浮かんでしまう。歌っている姿がほんとうに楽しそうで、リーナが歌うなら歌も嬉しかろうと思う。スカンジナビアン・コネクションは、いつもBODY&SOULで聴くせいか、数多く"BODY & SOUL"が演奏されていると思う。詩を聴くのは、たぶん初めてだけど、なんだか女の子らしい、可愛い曲に聴こえる。

耳慣れたスタンダードほど、リーナ、アンダーシュの力量がよく光る。瑕やノイズのない純度の高い時間。耳に懐かしいメロディは、一遍の、というには余りにも儚い時間だけれども、いつか見たような古い映画を甦らせてくれる。何の映画だっけ?あるいはTV-CM?いずれにしても、魅力的な女優が印象的な甘いラブストーリーだったような。

ライブの始まりは、いつも白紙に近いおおざっぱな地図を渡されたようなもの。曲を聴くうちに、プレーヤーから様々な地図記号や色鉛筆を渡されて、1STの終わる頃には、どんな宝物を探しに行くのか、期待が膨らむ。メンバー3人から渡されたヒントは宝の隠し場所への道順だけでなくて、そこへ辿り着くまでの島の美しい風景や珍しい動物の住処まで書き込まれ、飾っておきたいほどの美しい絵画になる。深い森に、キラキラと水音が聞こえる。明るい色の花々。かすかな羽音に鮮やかな小鳥の姿。この地図は、大切にとっておきたい。またいつか、宝島へ行くことができるような気がするから。

リーナは音楽の神様に愛されていると思う。同時に音楽の神様の存在を強く感じずにはいられない。歌声にもステージングにも演出してる様子はなく、こんなにストレートに歌だけを聴かせるなんて、すごい強さでもあると思う。クセとか引っ掛かるものがなくて、ともすれば「つまらない」となってしまいそうなものだけど、曲が持っていた結び目もリーナが歌うことで、するすると解けていくような。冒頭に森さんの「20〜30代の、台頭してきてる歌手にはリーナの教え子も多くて」というのが唯一の彼女の背景らしきこと。でも、「教授」にはどうしても見えない可憐な姿(実際、35歳ですし)。背景なんて、まぁいいんだけど。リーナの歌を聴いていられるだけで、しあわせ。

"Them There Eyes"がとても可愛い曲。ハッピーエンドのおとぎ話の絵本を読んでくれているような、明るく弾む声。首を左右にリズムに合わせて聴きたくなる。耳で呼吸しているような気がして、1曲聴き終わるごとに、幸せな溜め息で呼吸を整えていた。

アンダーシュ・パーション(あれ?一言も話さなかった?)の物静かな表情。金属のように硬質なピアノの音がリーナと歌声と出会うと、熱に出会った金属のように緩やかに丸くなってくる。ピアノの音が、周りのものをその身に映し出すプラチナであるとするならば、リーナの声は天然の宝石で、精巧なカッティングを施され、深い色・淡い色で光を吸い込み様々な色を生み出している。ピアノの音も歌であり、リーナの声も楽器。

森さんの、私にとってはいつものベースが詩とともに耳に届く。動物の鼓動、温もりがまだ感じられるような毛皮に包まれるような暖かさ。辿り着いた宝物の箱を開けると、黒豹の毛皮の上に色とりどりの宝石、そしてまんまるに磨き上げられたプラチナが散っている。なんてワイルドで贅沢な。


2005年10月13日
東京・南青山BODY & SOULにて

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