Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》20052005鎌倉-覚園寺

vol.136


■2005年5月15日■
■鎌倉-覚園寺■



今回の鎌倉の目的=覚園寺。このお寺は、決まった時間に集まった拝観の人をお寺のかたが境内を案内してくださるというシステム。山ひとつが境内という壮大な広さ。伽藍というような様式とは関係なしに建物が配されている。広さの割りには建物は少ない。

寺宝の写真集も売っていた・パンフレットもあったらしいが、この日はなかった。1カ月ほど前に県の重要文化財だった仏像が国のそれになったために、ちょうど書き換え中だったのだろう。つまり正確なところがよくわからないままに書いている。

庵風の愛染堂の前に集合。集まった10人ほどは皆ハイキングOKの装備。お気楽に、このあとフレンチのディナーでも、な格好の私たちは明らかに異様。迷い混んだんだな、と他の人達には思われたことだろう。1時間弱、案内されながらお山を歩くことになるが、ハイキングの装備は不要。私たちのグループを案内してくださったのは、お坊さんではなく職員のかた。説明してくださるのは主に木々について。なんとかの時代の争いのときの、よくきく武将の名前、など伝説にもなるような古のお話だったのだが、「大きいなぁ、元気で生きててよかったよかった、ああこれがあの」などとその時は思うのだが、何一つ覚えていません。お話を伺う基準として、頭の中は「いい国作ろう鎌倉幕府」が呪文のように。。。

覚園寺は、1218年の創建で、この山はもっと昔からあったわけで、天辺が見えないほどに聳えた大木も多かったことだけは覚えている。案内がつくのは、「ほぉ〜」と思いながら、その幹・葉に手が伸びてしまうのを防ぐためと、広大な境内=お山に迷い混むことを避けるためと思われる。後でウェブサイトで調べてみると、覚園寺は仏像拝観よりも、ハイキング・樹木観察を目的とした人に人気のあるところのようだ。

さて、目的の薬師堂。茅葺きの唐破風の屋根。緑の木々に囲まれ鄙びた風情と上品さとが一体になった美しいお堂だ。この中に丈六の薬師如来三尊坐像がある。照明がなく、案内のかたが懐中電灯で照らしながら説明をしてくださるが、「文化財に指定されました」くらいの物足りない内容。5分ほど、ここで自由行動となる。他の人達はそうそうにお堂を出て周りの木々を眺めているが、私たち二人だけは中に残り、持参のペンライトで仏像を堪能する。鎌倉というと、お庭や花々を見に行くとのイメージが強く、(マニア好みの)仏像はないものと思っていたが、覚園寺はまるで京都か奈良のよう。室町時代の作という薬師三尊の日光菩薩・月光菩薩が素晴らしい。この頃には主流であったと思う慶派の人間的な雰囲気とそれより前の天平の優美さが共に感じられる。日光菩薩・月光菩薩までもが坐像というのは珍しい。特に薬師如来のほうにわずかに体を寄せるような月光菩薩は、神秘的で艶っぽく。そして、両脇侍の光背がまた美しい。肉厚の彫刻は荒っぽいと言えなくもないが、迦陵頻迦のような天女などが彫り込まれ、欄間彫刻のように充実している。

薬師堂の左右の壁際には十二神将。これが今年、県の重要文化財から国の重要文化財になった。こちらはいかにも慶派の雰囲気。等身大で十二体きちんと揃っていて。外からの光がほとんど入らない壁際なので(お顔は照らさないようにと注意しつつ)ペンライトでは、細かいところまではよく見えない。それでも衣の模様がところどころ見えたり、大らかで力強いポーズがとなりの像と重なり合うようなところ、かなり美意識の高い仏師が作ったのだろうと思う。ちょっと、かっこよすぎ、と感じなくもないが。

期待を上回る仏像たちだった。古い木造の薬師堂で、風雨も日光も受けるがままに置かれていたと思われる。その放っとかれ加減が惜しくもあり、愛でたくもある。


2005年5月15日

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