Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》Live trYst 2004

vol.126


Live trYst 2004



■2004年7月17,18日
■東京・目黒Blues Alley Japan

□鶴谷智生(Drs,Vo, produce)
 (出演メンバーは文末)


Blues Alley Japanの店内2つのプロジェクターといくつかのモニターから、今まで映していた映画が消え、BGMも消える。真っ白になった画面に、絵の具が叩き付けられる。高速で流れていく映像。重なった色は街になり、また抽象的な躍動感のみを伝えるような映像に移っていく。上下左右に流れ重なり合っていた映像は立ち止まり、そこでドクドクと息づく心臓のように鼓動する。VJ小川竜朗による映像の後ろから、雷轟のようなドラムの音が立ち上がってくる。

Live trYstがオープンする。バンドメンバーがステージに集まり、一瞬の緊張感ののちに溢れ出す音。ステージ前の広く空けられたスペースにダンス・グループ "Rhythmical" が飛び出してくる。1曲目はTrouble Funkの[Say What?]。踊れる曲!とは言ってもアロハにパナマ帽の若々しいダンサーが踊るのは、80年代のGO-GO-ファンクの[Say What?]じゃない。手足を大きく全身で、ストリートで踊っているようなダンス。テレビでヒットチャートの番組を見て「今のダンスってこういうのなんだな」って思う=Lock Dance。

このライブのプロデューサーであり、バンマスであり、主役はドラマー鶴谷智生。音楽と仲間に祝福を、というライブを自身の誕生日に敢行。半年に及ぼうかという準備を経ての2日間だ。音楽とダンスとVJという演出はものすごく盛り上がる「ライブ感」。耳に馴染みのある曲が多いし、誰もが迷いなく楽しめる。だけど、目と耳は忙しい!

目はやはり中央で踊るダンサーに惹き付けられる。一方、笑顔のダンサーとは別の、充実した表情のバンドメンバーの手元も見逃せず、演奏にダンスに呼応するプロジェクターの映像を目の端で捕らえる。(蜘蛛の目が欲しい!)

2曲目[You've got to have Freedom]このダンスは "Stax Groove" の4人。ちょっとクラシックなスーツで登場。それでもドレッドヘアやニットキャップ。ダイナミックな動きと柔らかな空気感が相俟ってマシュー・ボーンあたりのダンス・カンパニーにも通じるよう。延べ10組のダンス・グループが出演した中でも、"Stax Groove" は表情豊かで芝居っ気もあり、ステージパフォーマンスが洗練されているグループだったように思う。

Ani DeFrancoの曲などを踊った "Gumbo" のスタイルはJazz Dance。ジャズの、様々にちりばめられた「遊び」までも指先でステップで表現する。その他にも「あの人のツアーで!ステージで!」踊っている実力派が集まった。多くはクラブシーンで主流の「今時の」がLive trYstに出演したダンサーたちのダンスだ。とにかく可愛かったのが[Good Morning! Mr.Sunshine]で登場した小学校3年生!の女の子たち5人の"R-kids・Child" 、エロティックに演出したストーリー性のあるダンスを見せた"A!?"、"Egoiste Eros" が[Mas que nada] に合わせたタップは、ボサノバとは結びつかない煽動的なリズムを重ねてとても新鮮だった。

生のバンドとダンス。とてもラディカルなライブだと思う。生の音楽で踊るというのは、本当は当たり前で自然なこと。でも実際に観客のいる場でそれが見られるのは、オーケストラピットのある大劇場で台本通りが原則のミュージカル、くらいだろうか。どんなに観客の気持ちが乗る場面があってもせいぜい手拍子くらいしか許されない。ノッたから、もっと盛り上げちゃえーは、あり得ないし。

ドラムはやはり「鼓舞」させる楽器であると実感する。ステージの一番前に置かれたドラムセットから生まれる躍動は、ダンサーを「予定以上」のところにまで乗せていってしまう。そして、例え「予定外」の展開になったとしても、がっちりと引き受けてライブハウス全体の一体感にまでまとめるバンドメンバー。それらすべてに対応可!とした住友紀人(Sax,EWI,Key)のサウンド作りは、気負いなく自然で心地よい。視線がダンサーにとまる。と耳に聴こえる、くっきりとしつつ甘いアンディ・ウルフのサックス。"Stax Groove"のアクロバティックな動きにもぴったりなフレーズ感溢れるクリヤ・マコトのピアノやグルーヴを生むバカボン鈴木のベース。職人っぽい演奏を続けるバンドメンバーと踊り続けるダンサー、盛り上がりまくりの観客の気分を一手にまとめあげるMookiとTommy、Jinのボーカル。そしてステージを見ていると、ふいに周りの視線がプロジェクターに吸い寄せられる瞬間がある。ヴィシュアル・ジョッキー小川竜朗の映像。やはりこれもライブ。曲のエッセンスと「その時」を一瞬のうちに視覚に投影するVJ。ハリウッド映画や昔のアニメ、オリジナルをコラージュしたり。眼に飛び込んだ映像をアドリブにしたダンサーもいたと思うし、その逆もあったはず。

鏡面張りになったバスドラムにダンサーの足元が映る。∞の万華鏡みたいに、ドラムからリズムが蹴り出されると歪みつつも、ステップは続いていく。生のバンド、ダンス、映像。どれかひとつだけでもライブは成立する。だから、これをコラボレートしようとは誰も思わないのかもしれない。だけど、古来、音楽と舞踏は切り離せないもので、このライブはその根源に立ち返ったものと言えるかもしれない。ただここにあるのはプリミティブな舞楽ではないし、さらにVJが加わることで、とても新しい形をつくり出したとも言える。

ラスト。アンコールは [Earth, Wind & Fire] のメドレー。ダンサーも全員ステージに。いつまでも終わりそうにないし、終わって欲しくない。観客も全員立って踊る!観客もさまざま多彩だったんだなぁと思う。ムゲン時代の踊りの人もいるし、マハラジャも、ジュリアナも、クラブもいる。もうみんな一緒くた。バラバラなのに一体感、グルーヴに溢れて。

1日目はステージ用の笑顔だったダンサーが、2日目には素の笑顔で踊ってる。バンドメンバーもダンサーも、演奏する(踊る)自分とライブを見たい自分、2人以上の自分が欲しいと思ったに違いない。観客だって、2日間じゃすべてを堪能しきれたとは言い難い。人間って楽しむことに、こんなに五感をMAXにできるのは、驚きで、発見でもあった。


■Musicians
鶴谷智生(Drs,Vo, produce)
住友紀人(Vo,Sax,EWI,Keys,MD)
クリヤ・マコト(Pf,Keys)
バカボン鈴木(Bass)
増崎孝司(Gt)
Andy Wulf(Sax)
中島オバヲ(Perc)
ヤヒロ・トモヒロ(Perc)
Mooki(Vo)
Tommy(Vo)
Jin(Vo)
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小川竜朗(VJ)

■Dancers
A!? (Hisayo,Tamaki)
A-Suke
Egoiste Eros (Kotomi、Shinko)
Gumbo (Abiru, Ekko, Michi,Mico,Rie, Yo-Co)
R-kids・Child (Arisa,Karin,Mayaka,Miyu'u,Sakura)
R-kids・JH (Aika,Mayu,Mikiko,Tomoka,Yukiko)
Rhythmical (Daishi,Kenji,Nao,Takeshi,Yuya)
Sora
Stax Groove (Izm,Mune,Sunny,Yossy)

2004年7月18日

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