Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》TRIO'-041124

vol.129


TRIO'



2004年11月24日
東京・六本木Alfie

TRIO'
 市原康(Drs)
 福田重男(Pf)
 森泰人(B)


季節柄、クリスマス・イルミネーションの点灯の瞬間に立ち会ったかのような。ちらちらっと点滅したあと、声にならない歓声を深呼吸にかえてツリーのすべてに光が行き渡るのを見守る。そんなふうに半ばぼおっとしたままでライブがはじまった。たくさんの色で飾られたイルミネーションよりも少ない色数のほうが輝きが際立って、いつまでも見飽きないと思う。この曲は眩しい白色で、こちらはやさしい黄色で、曲によって輝きの色合いを微妙に変えてライブは進む。その彩りの変化はメンバーの表情にも現われている。

森さん作の"To Staffan"。スウェーデンに渡った頃、とてもお世話になったピアニストへの曲だという。森さんの作る曲を市原さんが掌品と評したことがある。大きく盛り上がったり、派手な展開はなくても深く深くへ誘われるような、この包み込まれる満足感はなんだろう。

"Mori's Waltz"今回の帰国でレコーディングされた森さんの、これも掌品。まだ仮の曲名かもしれないが、このままの名を残して欲しいと思う。ゆるり・ふわりとした優しい三拍子。リズムに合わせてぽつりぽつりと蕾が開き、気付けば満開の花の香りでいっぱいになっている。1stで演奏された"To Staffan"と2ndの"Mori's Waltz"、どちらも聴いたあと「ふにゃあ〜」と日なたで昼寝中の猫のようにしてくれる曲。「夢や夢 現や夢とわかぬかな」

一方で、セロニアス・モンクの"Straight No Chaser"や福田さんの"Go Ahead Nigel"などのエンジン全開のスピード感が楽しい曲もある。年に2、3回、森さんの帰国時のみのライブやレコーディングなのに、常に一緒にライブをやっているかのようなトリオの一体感とぴしりぴしりと決めてくれるカッコよさ。優しい曲では、演奏のあと、ゆるやかに覚醒していく感覚が嬉しいのだが、このあたりの曲では、いつまでもぐるぐる繰り返し続いて欲しいと思う。

トリオ、アンサンブルをまとめているのは、ドラムの市原さんだと思う。合図しているようにも見えないのだけど、曲の始まりにカウントをとる、叩き始めの音色に、これはどういう曲に仕上げようという気分がメンバーに伝わっているのだろう。ピアノとベースがどんな絵の具を持っているか、そしてそれを混ぜて無限の色をつくり出すセンス。出来上がった色をキャンバスに映す筆遣いがドラムの出すリズム。ライブハウスがギャラリーのようにも見えてくる。

ライブを見に来ていた、おおたか静流さんが加わった"My Funny Valentine"。軽くおしゃべりをしながらマイクを受け取り、市原さんがまだ何か言いかけている中、唐突に歌いだす。ぞくりとするほど気高い歌声。店内の空気のすべてを使って歌うようで、その彩りも変えてしまう。いままでは宵の口、おおたかさんの声が響いてからが深夜。それまでキラキラ感がとても強かった福田さんのピアノがこっくりと深くなり琥珀のような色合いに変わる。

福田さんファンで、このトリオでの福田さんの演奏を「なんてお行儀のいいピアノ」と評した人がいた。ジャズで、「お行儀がいい」はほめ言葉ではないような気がするが、ここでの福田さんのピアノのお行儀のよさは、市原さん・森さんと組んだことで発揮された一面なのだと思う。言い換えれば「端正」ということだろう。抑えたなかにも、充分に福田さんならではのキレのよさや明るさは現われていると思う。真夏の太陽だけが明るいわけじゃない。勢いだけではない表現力が大きく感じられる。現にこの福田さんファンは、TRIO'のファンになったと言っていた。

時間が進むにつれて、そわそわしてくる。 「命にもまさりて惜しくあるものは 見はてぬ夢のさむるなりけり(壬生忠岑)」


2004年11月24日
東京・六本木Alfieにて。


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