Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》20th scandinavian connection 2004 November 19

vol.128


20th scandinavian connection 2004 November



2004年11月19日
東京・南青山BODY&SOUL

20th scandeinvian connection
ラーシュ・ヤンソン トリオ
 ラーシュ・ヤンソン(Pf)
 アンダーシュ・シェルベリ(Drs)
 森泰人(B)

タイトルを聞いて浮かぶイメージと実際に聴く曲には、ものすごいギャップがあることがある。今回のライブでの、"dimma"(Diminished)と"Reborn every moment"が特にそうだった。「スウェーデン語で霧」という"dimma"(ラーシュ・ヤンソンのアルバムでは"Diminished")。儚気な美しい旋律または霧に煙る美しい森を予想すると。「霧」というのを何か別の言葉と聞き間違えていたかと思う。森さんによれば、「濛々とした」「行く手がみえないような」というような感覚だそうだ。そとは上がりきらない雨の重たい日で、まさに「霧」模様だったのに、いきなり湿度80%のジャングルに連れていかれてしまった。緑濃い森の中から何が飛び出してくるかわからない期待感、冒険心。「Diminished code」という複雑なコードを駆使の1曲。

"Reborn every moment"。「ちょっと深い哲学的なタイトルだけど」というこの曲も。アンダーシュのドラムソロから。といってもシンプルな和音を繰り返し繰り返し重ねるようなもの。ただどれほど繰り返しても決して乱れないリズム・キープから生まれるグルーヴに溜め息。流れるスティックの軌跡が目に焼き付いてドラムの上に∞の輪が見える。その輪がするっと解けた時、いたずらっぽい笑顔のラーシュが鍵盤に指を置く。プリミティブなリズムに繋がったのは、なんだかちょっとフュージョンっぽいメロディー。同時にアンダーシュのドラムはロックテイストで単純なリズムを力強く叩きだす。森さんは哲学的な表情でウッド・ベースをかき鳴らす。

その曲がロックやフュージョンなのかというと、どちらの型にはまったものでなく。スタイルで遊んでも、なにをやっても、このトリオの充実度は高い。ミュージシャンに楽器を持たせたら、その手腕が高ければ高いほど、曲は自由になり、それでいて新しいものが次々に生まれてくる。バラバラな曲を演奏しているような錯覚もぎゅっと1曲にまとめあげ、ついで観客の心もぎゅっと。ジャンルというのはわずかな色の濃淡に過ぎず、音楽は始まりも終わりもない連なる輪廻。つまりは音楽を「live」を楽しもう!というふうに思う。

"The inner child" や "Sitting silently"というあたりでは、ラーシュならではの美しい旋律に酔う。ジャケットを頭から被って演奏したり、鍵盤でないところでピアノを鳴らしたり、また自分の体で音を出したりと、遊び心を発揮する演奏もラーシュのライブでは見どころのひとつになっているけれど、やはり、ストイックな表情でピアノに向かい奏でられる音はいいようもなく美しく、深い。それは「底」を暗示するものではなくて、穏やかに明るく、安心感のある深さだ。音符のたったひとつでも、ラーシュの指がピアノから出す音であれば、磨き上げられた宝石にも勝る瞬く星の輝きを感じさせる。

華やかな存在ではないかも知れないが、星の輝きが届けられるためには漆黒の夜空と澄んだ空気がなくてはならない。それが森さんのベース。ひとつの間違いもない理の音であると思う。だけど、また何と温かく大らかであることか。森さんと握手した人は、その掌の大ファンになってしまう。その掌が支え、奏でるベースの音は、また森さんそのものなのだと思う。

何故このピアノのメロディーに、このリズムが、このベースラインがぴたりとはまり、一曲となるのだろうか?バラバラに聴いてみたら、退屈するかもしれない。だけど、音と音が出会う偶然と必然の繰り返しが音楽を作ってきたんだなあと。太陽が照らし、雨が潤し、花が咲く。そういう仕組みと同じものだと思う。

"Just Being" お馴染みの曲の中でもこれは特に毎回のライブで演奏される。リクエストが多いのだと思う。タイトルを聴いただけ、曲が始まってほんの数秒で、「ユニゾンって好きだ!」と思う。心が浮き立つようにリズミカルに鍵盤をドラムをベースを鳴らす。ラーシュの、スカンジナビアン・コネクションのファンには耳慣れた曲だし、「さぁ一緒に!」という雰囲気があるから、あちこちでテーブルや膝でテーマのユニゾンを奏でる気配がする。例えば、何かアクシデントがあったり、重たい空気がそこにあったとしても、一瞬でぱぁっと晴れやかになる。元気のない時のオマジナイ。「みんなでユニゾン!」気まずい雰囲気の仲直りにぴったりの曲。

"Give me five"。「take5」を捩ったタイトルだそうだ。ラーシュがアンダーシュに「5拍子を!5拍子を!」とせがむようにピアノを叩く。5拍子。「大変そうだなぁ」なんてノリ損ないながら聴いているだけど、いつものようにアンダーシュは我関せずといった飄々とした顔でドラムを叩いている。ラーシュをからかうように、時にサボって4拍子にしたりしてるそうだ。でも、「おっとっと、というところでやっぱりバシッと決めるんだ」と森さんがいうように、どこでサボれば効果的か十分にわかってての笑顔の演奏。「バシッ」の決まりかた、本当に小気味よい。

しし座流星群が現われてた頃。晴れた夜だったなら、流れ星が見られたかもしれない。でも、それよりも長く尾をひき、いつまでも消えない流れ星が降り積もっていた。今でも星をひとつ摘まみ上げると、きらきら、さらさらと音をたて、絡みあう星が取り出せそう。このままクリスマス・ツリーに飾ろうか、それとも空に投げ返しまた巡り来るのを待とうか。


2004年11月19日
東京・南青山BODY&SOULにて。


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