EL NEGRO & ROBBY BAND

vol.118


「EL NEGRO & ROBBY BAND with special guest DAVE VALENTIN」



2004  4/5〜4/10
東京:南青山「Blue Note TOKYO」

理屈抜きに楽しいライブ。あっという間に駆け抜けて抜けてしまって「夢だったの?」という一瞬。心残りといえば「タッテ!オドッテ!」と促されなければ、立てずにムズムズしてたこと。何しろ最前列・真ん中という席。ここで一人立ち上がって、周りを見ればしらーっとしてる、という状況を想像してしまった。後ろの席の時には、「一番前が立たないと後ろは立てないんだから、立てよっ」なんて言ってるんだけど。立ってみれば、皆ムズムズしてたのは同じ。一斉に椅子を蹴る音がリズムに混ざってくる。

真っ赤なドラムセットのエル・ネグロと黒いドラムセットのロビー・アミーンのダブル・ドラム。二つのドラムセットがステージの左右に輝いている。その中央にコンガ。それだけで、なんかカッコいいぞ。小走りにステージに上がって、ドラムセットに収まる人がいる。ローディの最終チェックか?と思うといきなり"Richie's Brain"が叩き出され、ステージが始まる。シンコペーションなんて言ってる隙間はないくらいにみっしりと詰まったリズム。

ダブル・ドラムの、しかも二人とも多彩なセットで、それでも大爆音・ヘヴィーなリズムではなくて、すっきりとした充実感。太い糸でざっくり織ったタペストリーは、見た目が重厚で派手。持ち錘りして肩が凝ってしまうが、細い細い糸でぎっちりと織られたものは、一色に見える糸が角度によって複雑な模様を浮かび上がらせるようで、見れば見るほど、その多彩さに魅了される。しかも手にしてみると驚くほど軽やかなのだ。そんな極上の織物がステージから幾筋も投げ放たれるようなライブ。それがラテンのリズムに乗るラフな演出できらーくに楽しめる。

スペシャル・ゲストとしてフルートのデイブ・バレンティンの登場。ステージの横の待機場所から客席を遠回りに歩きながらフルートとお客さんと戯れつつ、1曲。他のメンバーが着込んだTシャツという中、夏物のスーツ、シルクのポケットチーフという熟れた伊達男ぶり。ボーカルの女性に芝居がかったちょっかいを出しての遊び人風のキャラクターに、絶対にフランス人と思ってしまった。この編成でフルート?という「?」がかなりあったのだけど、ケレンたっぷりの演奏はキャラクターそのまま。ぜーんぜん一生懸命じゃなくて、思いつきで音出してるみたいなんだけど、パーカッシブなフルートがいいスパイス。

ツインドラムにパーカッション、エレキベース、トランペットとアルトサックス、キーボードそれにボーカルが二人。この編成ですべての楽器の音が奇麗に聴こえる。ツインドラムに挟まれて前にパーカッションがいて、という位置に立つベースのくっきりとしたラインが耳に刻まれる。ホーンはビ・バップっぽい演奏で、ボーカルはラップと女性の甘い歌声、とひとつひとつを取り出すと個性もバラバラ。一つのライブとしてみると、何層にも積み重ねられた、まさにラテン文化そのものという充実が感じられる。

今になって思うと、お店側の、ステージが始まったらアーティストやお客さんの邪魔はしないという姿勢。聴き入っているときに運ばれる飲み物や食事は、気付かないうちにそっとテーブルに置かれていたり、メンバーが客席をぐるっと歩いての演奏のとき、自由気ままに歩いているようでも、前もって歩きやすい道を作っておいて、滞ったり先駆に立ったりしない。目線で、すぐに店員さんは気付いてくれるけれど、一旦ステージが始まったら黒子という存在よりも目立たなく目立たなくというのが充実したライブの隠し味でもあったのだと思う。

2004年4月7日

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