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vol.123


■「アケタの店」開店30周年記念プログラム-坂田明スペシャル■





■「アケタの店」開店30周年記念プログラム-坂田明スペシャル
■2004年5月27日
■東京・西荻窪「アケタの店」

■坂田明(A-Sax)
■白井良明(Gt)
■バカボン鈴木(B)
■鶴谷智生(Drs)


梅雨入り前なのに真夏の夕方の蒸し暑さの日。汗をかく寸前に到着したライブハウス。ちょうど看板を出していたお店の人に予約した名前を告げると「はい○○さんの後ろに並んで〜。○○さ〜ん」。 コンクリートの、真ん中がへこんだ階段に並ぶ。壁は黒く塗られて電気のメーターボックスはフタが壊れてて、貼り紙がべたべた貼ってあって。

リハーサルが長引いて開場が遅れ気味。その間にもお客さんはぞくぞくやってくる。すかさず、常連らしき人が「予約してたら、お店の人に言っといで」と声を掛けてくれてる。ごく当たり前の調子で、慣れないお客を疎むでもなく、お節介でもない感じが「大人な店だな〜」と思う。そして開場。ドアが開いた地下の店から冷気が上がってくる。今年初めての、懐かしいちょっと湿った冷房の空気。こじんまりとしたお店は下北沢あたりの小劇場の雰囲気。今風に言うなら「昭和レトロの中央線沿線」らしさ。統一感のない椅子やお店の入り口の雰囲気を「前よくあったよね〜」と友達と言い合う。どれほど昔なんだという訳ではないんだけど。子供の時に雑誌やテレビで見てた「大人の文化」的なお店。このすべてを懐かしいと思う年代でもなく、すべてが珍しい年代でもない私は、子供の頃の夏休みを感じて、面白かった。

壁に貼られた「缶詰め皿にあけただけ」というようなメニューの貼り紙に「正直さ」を感じる。チャージに含まれる飲み物も、たぶん業務用パックそのままを注いで使い捨てコップで、という感じ。音楽を聴きに行くところであるのがまず第一なんだな。

コップを持って空席を探していると、見ず知らずの常連さんから「前のほう入れるわよ!ここ座りなさい!」と勧められる。座れるだけラッキーか?と思っていた順番だったのに、カブリツキ席get。(ただ早めに帰らなければならない友人は「出られない…」)

勧めてもらって言うのも何だけど、昔の歯医者さんの待ち合い室にあったような長椅子は座ってみると、クッションが破けてて、気を抜くと隣の人にもたれ掛かってしまいそう。それでも「あ、破けてんな、ここ」と見たまま思うだけで、他に移ろうなどと考えない。「ま、いっか〜」。飲み終わったコップはどうするんだ?とか(椅子の下に置いていいらしい)、殺虫剤のスプレー缶が堂々とスピーカーと並んでるな〜とか、マイナス要素はいくつも目につくんだけど、それは「マイナス」とは思えない。

数日前の「OneSizeFitsAll」で見たばかりの坂田さん、バカボンさん、鶴谷さん。白井さんも以前「OneSizeFitsAll」に出たことあったし。ということで、とても楽しみなメンバー。バカボンさん、鶴谷さん、白井さんと言えば、「sclap」なんだけど、坂田さん色が主。

ムーンライダースの白井さん、フリージャズの坂田さん、の頃から聴いていたと思われる年季の入ったファンと「開店30周年」になるライブハウスのファンが多くて年齢層高め。「昭和レトロ」なライブだった。演奏した曲も、そんな感じのものが多かった。ちょっとサイケ、ちょっとアングラな雰囲気で「音戸の…」とか民謡を坂田さんが歌う。ボーカルじゃなくて「唄」。ライブハウスの雰囲気に合わせたようで、普段のライブの調子と少し違い、物珍しさが勝った新鮮な感じもする。

ライブ終盤に演奏されたモンゴルの「そーんばー…(?)」馬をテーマにした民謡が印象的だった。あれ?と一瞬耳を疑ったドラムの音色。マレットでの曇った音がぼわーんと聞こえる。この「ぼわーん」という印象は鶴谷さんのドラムにあまり感じたことがないし。坂田さんのサックスの澄んだ音色より、なんだか気になる。ちょっと前にテレビでみたモンゴルの平原の映像を思い出す。ぼわーんという響きとともに、視界の端から端までの地平線の一部がぼやけてくる。乾いた土が舞い上がる。土煙が大きくなるにつれて、姿より先に振動が大地に伝わってくる。段々と何かが近付いてくる。まだ固まったぼんやりとした音。やがて巻上がる土煙の中から馬の姿がはっきりと見えて、蹄のスタッカートのきいたくっきりとした響きが土煙を払うように聴こえる。ドラムの音がその映像を見せてくれた。マレットからスティックに持ち替えて、馬の足のリズミカルな運びが目の前をギャロップで行き過ぎる音が聴こえる。

と、モンゴルの平原から「中央線」に戻る。この曲、私はドラムしか聴いてなかったみたい。坂田さんの唄があったかどうか、ということも覚えてなくて、もっというと前に演奏された他の曲もぽっかり抜けてしまったようで。激しいドラムソロがあったわけでもないのに、印象深い曲だった。


2004年5月27日
東京・西荻窪@「アケタの店」

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