Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》コジカナツル0308

vol.108


コジカナツル



2003年8月27日
東京・高円寺JIROKICHI

小島良喜(Pf)
金澤英明(B)
鶴谷智生(Drs)


このトリオは「ライブに行かなけりゃ!」と聴くたびに思う。レパートリーはものすごい数だというけど、ライブで演奏されるのは、いつものお馴染みの曲が決まってきてる。それを毎回まったく違う曲として楽しめる。シンプルな曲であったのが、ライブを経て完成する、のではない。生まれた時から「天上天下唯我独尊」と宣うほどに完成型である曲が細胞分裂を繰り返し、完成型をさらに増殖させていく。細胞に与えられる刺激によって、その日のその曲の出来上がり具合が違ってくるのだ。ルビーとサファイアは赤と青で色は全然違うのに、組成で言えば同じもの。みたいな感じである。綿密な打ち合わせの上で作られたというより、その場の気分によるところが大きいみたいだ。だから、ライブがおもしろい。

ライブレポートという以上、曲名や曲順をきちんと押さえるのが本来だとは思うが、コジカナツルに関しては、無理。曲名や曲順を気にしながら聴くなんて面白さが半減してしまうと思うので。特に今回は1曲めから圧倒された。3人とも、いきなりアグレッシブな演奏!誰が引っ張ってるのか、わからない。互いの演奏にニヤリとしたり、歓声をあげたり。この曲がどうやって終わるのか、誰も決めてなくて、考えてなくて、というふうに見える。だけど、絶妙のタイミングが重なりあう。裏切られることを期待して、期待通りに裏切られるのが嬉しいライブ。

このトリオが降らせる「音楽のシャワー」は生温い癒しなんかではない。それぞれが楽器と取っ組み合い、立ち上る気流がぶつかりあって積乱雲を作り、雷鳴とともに大粒の驟雨が降り注ぐ。傘も雨宿りも役に立たない。こういう時は雨の中を思いきりはしゃぎ回ってびしょびしょになってしまうほうがいい。そうやって、お客さんをすべて演奏に引きずり込んでしまう。3人の集中力が伝わって聴くほうもものすごく集中して入り込む。普通に息をするのも苦しいくらいだ。ソロの後の拍手。これを忘れてしまうほどだ。だって拍手してる間にも曲はどんどん大きくなっていくのだから。

そんな「剛」の演奏とともに「柔」も聴ける。豪快と繊細、華麗。この合体がコジカナツルだ。両極を自由自在に手中にする小島さんのなんてバサラなこと。そしてベースを操る金澤さんは飄々としつつ、清流にあるゴツゴツした岩のようでもある。流れの中に岩があると轟々とした音が生まれる。その音、ひっかかりが効いてる。鶴谷さんのドラムはどんなライブの時でも、必ず真ん中にまっすぐに芯が通って聴こえる。ドラムの真ん中にスティックが落とされる。それが水面ならば完璧なウォータークラウンが立ち上がり、真円の波紋が広がるだろう。それがブラッシならば、砂丘に描かれる風紋だ。自然が生んだ偶然のようでいて、必然とルールがあり、連鎖するメロディーの魁けとなる。

小島さんの柔らかい柔らかいとろけそうなピアノに、鶴谷さんのダイアモンドのように硬質なブラッシが印象的なバラードがあった。この曲の主役は、ピアノだったのだろうけど、まっすぐにノーブルなドラムに耳が釘付け。一瞬、その組み合わせの異質さにライブの興奮から醒めたのだけど、何億年前だか何万年前だかわからないけど「地球が音楽を手にした」その瞬間が見えたような気がした。醒めたんじゃなくてトリップ?ピアノ+ベース+ドラムでひとつの曲になる。そして、もうひとつ何だかわからないものも生まれてる。平熱より少し熱くってドキドキするもの。音楽が生きている。コジカナツルって「CITROENS」だ。

2003年8月27日
東京・高円寺@JIROKICHIにて


CITROENS=“生命体の定義”Complex Information−Transforming Reproducting Objects that Evolve by Natural Selection
「自然選択によって進化する、情報伝達、自己再生が可能な複合物体」の頭文字。


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