Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》韓国国立中央博物館所蔵「日本近代美術展」

vol.101


韓国国立中央博物館所蔵「日本近代美術展」



韓国国立中央博物館所蔵「日本近代美術展」
2003年4月3日〜5月11日
東京上野・東京藝術大学大学美術館

4月中旬の上野公園は春というよりも初夏の陽気。ソメイヨシノは葉桜になっていたけれど、八重桜が満開で、ハナミズキ、カキツバタ、シャガも満開。さぁっと風が吹けば、何かしらの花びらが舞い、小鳥のさえずりも満開。上野公園中心の広場では、おもちゃを見せびらかす大人と子供がいて、ストリートパフォーマーも何組も出て、たくさんの人だかりができていた。石原さんが再選されてよかった。

東京芸大の美術館。ここは、いまいちナビゲーションがよくない。チケット売り場の照明が暗くて、お財布の中のお札の顔がよく見えなかったり。そのかわり案内係の学生が何人もいて、ちょっとまごついているとすかさず声をかけてくる。

第二次世界対戦前に韓国王室がコレクションしていた日本画や工芸品の里帰りの展覧会。絵そのものの美しさもさることながら、とてもきれいに保存されていることに感動する。昭和の初めからの韓国(朝鮮半島)と日本の歴史を思うと、よくこんなにきれいなままでとっておいてくれたと頭が下がる思い。その歴史的背景ゆえにずっと眠ったままの幻のコレクションだったというが、存在を知る人たちが守り続けてくれたお陰だ。「坊主憎けりゃ袈裟まで」とずたずたに切り裂かれたとしても何も言えなかっただろうに。イラクの博物館から宝物が略奪されていると報道されている最中だけに、感慨深いものがある。

人物画、動植物画、風景画、工芸と分けて展示されている。そのどれもが大型である。特に人物画と動植物を描いたものは大きく取られた画面の余白が効いていて、洋画であれば埋め尽くされたであろう白い部分にあるはずの「背景」や物語を思うのが楽しい。

とにかく、絵画が美しい。たくさん見ても飽きず、いつまで眺めていても疲れない。岩絵の具が持つ明度は、日本を描くにふさわしい。光の溢れる夏の風景でも南欧の明るさや赤道直下の明るさとは違う、日本の温度と湿度を感じる。散歩がてら、きれいな絵を見に行くだけでもいい季節だけど、勉強しようと思って行くにもいい展覧会だと思う。

近代の日本画というと、鑑賞する年齢層は高いと思う。おじいちゃんおばあちゃんが好む、つまらない絵と若い人は思っているだろう。でも、一度じっくりと見てみると奥深さに気付くはず。特に今回の展覧会では、日本画の見どころを教えてくれるキャプションがついている。画面に配置されたモチーフの性格。色使いの意味。構図の取り方の奥に隠されたメッセージ。柔らかい線とくっきりとした線の対比の読み取り方。思うままの線を描く技術の高さ。勉強不足はキャプションが補ってくれるから、予習なしでも大丈夫だけど、故事や和歌の知識があれば、もっと深く見ることもできると思う。(イヤホンガイドの貸出あり)

一見、美人が佇んでいるだけの絵。だけど、画家が何を描こうとしたのかを知ると、とても深いものがあるのが日本画。文学的素養、宗教的なメッセージ、社会的なこと。芸能に関する知識。さらに流行のファッションへの興味。それらをシンプルな画面に描かれた主人公の内面を伺わせつつ、あっさりと載せた画家たちの凄さ。文化人というのかスノッブな人たちというのか、当時の日本画家のアンテナの範囲ってすごかったんだ。特に「デザイン」を学ぶには、とてもいい教材だと思う。現代絵画や印象派の、予定調和的な「デザイン」の慣習を覆すくらいの発見がある。

これらの日本画を、もらっても嬉しくないカレンダー的な美人画や風景画だと思っていたけど、間違ってたなぁ。「忘れられたジャンル」に片足つっこんでいる今、もっと大々的にこの展覧会が知られるといいのに。

2003年4月19日

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