Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》18th scandinavian connection 2003 October 17

vol.110


18th scandinavian connection 2003 October 17



2003年10月17日
東京・赤坂B-flat

18th scandeinvian connection
ボーヒュスレーン・ビッグ・バンド
 ラーシュ・ヤンソン(Pf)
 カタリーン・マッヅセン(Vo)


待ちに待っての再来日。ボーヒュスレーン・ビッグ・バンド。"Temenos"の演奏が始まった瞬間、ざわついた店内の天空、雲は流れ去り、燦々と太陽が降り注ぐ。虹もかかるし、一緒に流れ星もびゅんびゅん飛び交いUFOも乱舞する。ちょっと懐かしいフュージョンの雰囲気を持つ新アルバム「Temenos」、やはり嬉しく予想を裏切られる。エレクトリカルに管理されたように聴こえるアルバムの曲が目の前でアコースティックに生演奏ってすごい。迫力がプラスされ信じ難いピカピカのライブだ。音の端々がびしっと決まる。その小気味良さカッコ良さ。一糸乱れぬとはこういうことを言うのね、というお手本みたい。

瑕のない大きな音の流れは、銀河とひとまとめに名付けたものが、実はたくさんの星の集まりであるというふうに、角度、場面を変えるとひとつひとつ違う輝きが見えてくる。銀河の中から彗星が飛び出す。それはソロの高らかな音色で、ライブハウスに金粉、銀粉をまき散らしながら、また銀河の中へ帰って行く。このバンドも彗星みたいに、また何度でも日本に来てくれるといいのに。

"Gnosis1"「グノシスというのは経験から得た知恵という意味で」と森さんが話すそばから、話す日本語をわかってて、それを覆すようにお茶目な振る舞いのラーシュ。ラーシュのこういうところを見ないと、と変な期待もしつつ、その美しいメロディとピアノもたっぷり楽しみたい。ユーモアは最大の知性でもあると頬を緩ませながら思ったりして。「全然ちがうところまで行って終わるから」という森さんの言葉に続いて、ラーシュ・ヤンソンがジャケットを頭に被って(カオナシ?)指揮をとる。地球誕生のカオスから、人が立ち上がっていく様を描いたような曲だ。言葉にならない声を音楽にならない音で楽器が表現する。やがて音は音楽になり叙事詩が紡がれる。遊びがたっぷりと含まれているように感じるけれど、実は物語性、メッセージの強い曲。これをじっくり聴かせるのが、ボーヒュスレーン・ビッグ・バンドの神髄だと思う。

モデル並のタッパのカタリーン・マッズセン(Vo)がかっこいい。神話の中の女神のようなたくましい女性らしさを感じさせる。北欧の女性シンガー(森さんが連れてくる人たち)ってどうしてこうも皆ノーブルな歌声なんだろう。癖がないというのが大きな特徴かもしれない。ミュージシャンとしてはマイナスかもしれない癖のなさは、逆に歌声そのものをじっくりと聴かせ、浸透させる。いろいろ味わった最後に欲しくなるのは水というように、結局は最大の力なのだろう。その強さとビッグバンドの華やかさをたっぷり聴かせてくれたのが"MagicNight"。16人のビッグバンドに負けない力強いボーカルvsボーカルを飲み込まず、さらに自分達の活き活きとした演奏もたっぷり聴かせるという今回のライブでいちばん贅沢な曲だったと思う。ライブならではのスリリングな瞬間の連続に(周りに聞こえないように)きゃーきゃー騒いでしまう。

ビッグバンドの華やかさってイコールお祭り。様々なものに皆で感謝して、巡る月日を愛でる楽しさ。演奏中のメンバーの笑顔が嬉しさを誘う、すごくハッピーなライブだ。メンバーひとりひとりの実力は、とてつもなく高いレベルだ。日本でならば、実力派と言われるレベルのプレーヤーの10人分くらいの演奏をひとりがやってしまう。呆れるくらいウマイので、しばらくは他のビッグ・バンドやホーンのライブには行かれないだろうと思う。ソロの時、パートの一員で演奏する時、それぞれ100%の演奏で、でも、その方向をまったく違えている。つまり何種類かの100%を持っているのだと思う。


2003年10月17日
東京・赤坂B-flatにて。


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