Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》scandinavian connection 2003 August-13

vol.109


17th scandinavian connection 2003 August-30+September-5



2003年8月30日
東京・南青山BODY & SOUL

2003年9月5日
東京・浜離宮朝日ホール


ラーシュ・ヤンソン(Pf)
アンダーシュ・シェルベリ(Drs)
森 泰人(B)
オーベ・イングマールソン(t-Sax)

スカンジナビアン・コネクションが目白押しで、嬉しい夏。森さんもラーシュもアンダーシュも何度もライブを聴いてる。オーベもビッグ・バンドでもカルテットでも聴いて、どんな音、演奏かわかってる。なのに、きょうはどんな演奏が聴けるのか、やはりわくわくしてしまう。ジャズの即興性から作り上げられるライブ感は、何度アルバムを聴き込んでも、ライブを重ねても、一期一会のものだから。頭に染み付いたフレーズもとりあえずは忘れることにして、でも「あの曲聴きたいな」とリズムを取ってみたりしながら開演を待つ。

まずはピアノトリオでラーシュ・ヤンソンの「a blissful smile」から。シンプルなピアノの音がどこか日本の童謡を思わせる。「赤とんぼ」みたいな感じで、夕焼けの雰囲気だ。1曲目から、ライブ中盤みたいにすっかり3人の世界に引き込まれる。このライブは私にとって特別な、楽しみにしてたものだけど、もう何時間も聴き続けているような、昨日も一昨日もここに座って聴いていたような気持ちがする。まどろんでいるような、ふんわりとした心地よさにすっかり浸ってしまう。

しっとりした曲が続いた後、テナーサックスのオーべ・イングマールソンが加わる。あいかわらず飄々として穏やかな笑顔で。「New Blues」「Waltz For Vana」など。テナーなんだけど、この人が吹くとアルトサックスかと思うほど、軽やかで澄んだ音がする。まったく濁りのない清廉な音に秋風を感じる。

まだ少し暑さの残る秋の夕べ。ひんやりとした空気をオーベのサックスが運んできて、すっかり陽は沈み星空へとシフトする。やわらかな土の上に寝転んで、星空を眺めている。きょうのライブはこんな感じだ。じっと眺めていると、(地球が回っていると言うよりも)天空が回っているのがわかる気がする。地球の丸さを感じたり。時おりの流星はラーシュのピアノだ。目を閉じているか、ドラムセットから目を離さずに、演奏するアンダーシュはひとりライブの盛り上がりとは少し違うところにいるようにも見える。ドラムの言葉に相槌を打つ。自分の出した音にびっくりしてみたり、楽しんだり、静かにドラムとの会話だけに集中しているみたい。だけど、突然の流星にも隕石にも動じずに、それを掬いあげる。それを投げかえしてキャッチボールを始めたりして。見上げるといつもそこにいる満月みたいだ。

気付いたら、海の上を漂っている。地面に寝転んでいると思っていたのに。海と思う所以は森さんのベース。「Sound Picture」昨年のライブで聴いた時とまた違う雰囲気ながら、楽器のあちこちから出る音が楽しい演奏。その中で、弓で出した音がクジラの鳴き声みたいだった。


大海に漂う気分の舞台が宇宙へと移った浜離宮ホール。南青山BODY&SOULのライブの余韻に浸ったまま、まったく違うホールでのコンサート。トリオとカルテットを交互にというスタイルは変わらず、ライブの始まりも同じ曲からだが、ホールに変わっただけで、こんなにも雰囲気が音が違って聴こえるものだろうか。BODY&SOULでは生の音が空気を震わせるのを体感し、耳よりも体で聴いていた。音が体にぶつかるのを感じたライブハウス。室内楽のホールでは、音は光となって降り注ぐ。ここでは音は空気に溶け込んでいつのまにか体に満ちていく。

「Marionette」いつもはソロピアノかトリオで聴くラーシュの曲だ。オーべをフューチャー。甘い曲に甘い音色のサックス。繊細な音でありながら、ものすごい力強さ。どこまでもまっすぐに透明感に溢れたサックスに射抜かれるようだ。ホールの、なにもかもが浄化されていく。

「Just Being」ラーシュのライブでは、これで盛り上げてくれなくちゃ、というお馴染みの曲。ピアノ、ベース、ドラムとユニゾンで始まるポジティブな曲だ。それぞれのソロを聴かせたり、絡んだりといつまでも続いてほしい。ラストはユニゾンが段々と崩れて、バラバラになって「ただの音=音楽の素」みたいになって終わる。

遠くに見えるステージには、惑星が並んでいる。ライブハウスと違い、手の届かないそこにライトが当たり暗い宇宙に浮かび上がる。近くに見えるけど、決して触れることのできない星たちの会話のお裾分けが今日のコンサートのようで。それを寂しいとは感じずに夢や憧れを持ち続けることの楽しさをより強く感じた。


2003年8月30日:南青山BODY&SOUL
2003年9月5日:浜離宮朝日ホール


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