Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》09/09/27


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.269

皮から食べて●西陣ファクトリーGardenの晩夏

 もう9月も終わりますが、8月の末、西陣ファクトリーGardenで新作を上演しました。穏やかな作品になりました。予想していた程のじりつく暑さもなく、時折吹き抜けるそよ風は、しっかりと秋の香りがして、会場に入ってからの仕上げにも涼しさを付け加える助けになりました。季節味のある作品、は上演の頃を問わず、いつ見ても新鮮な観心地にまとめる必要があると思いますがいかがでしょうか。

 7月の神戸学院大学グリーンフェスティバルに引き続きセレノグラフィカでの仕事です。このデュオ、というかカンパニーには幾つものレパートリーがあり、シリーズ化して上演を重ねる作品も少なくありません。今回は新しい作品の初回・研究上演でした。シリーズ化、というのはつまり単純な再演が出来ないために、どうしてもバージョンが増える、または演出変更が必要になるというわけですね。

 この上演作(「皮から食べて」)もこれからどのようにバーションアップが図られるものか未だ予想は叶いませんが、いくつか、そのタネは準備しました。開演の方法、途中休憩の有り様、舞台転換の内容、終演の工夫、いずれも西陣ならではの方法で上演したものですから、会場が変われば自動的に変更しなければならない。しかし、演出骨子(コンセプトというのかネライというべきか)は重要です。

 リハーサルの中で「デュオによるデュオ」という考え方が浮上しました。四人の出演者は原則的に二人組で登場します。この二人組と二人組が互いに干渉して舞台空間と時間を創成していく。最小限の仕立てでこの広い世界を描き出す試みでもあり、世界の中心がここにあるのか・ここではない他所にあるのかを、ご来場のお客さま共々に見極めていく作業でもありました。ダンスの喜びについて考えました。

 深遠であれ、とは願うものの難解なことには余り意味は無いようです。見たまま喜んで構わない作品の創り、それ以前に、喜びを得るために会場を訪れる来場者の立場を、だまし討ちにしない覚悟が私たちにあるでしょうか。コンテンポラリー・ダンスと私たちの国でカテゴリーされているフリースタイル・ダンスは、この盟約を曖昧にしてしまったかもしれません。ダンス領域の宇宙は広大無比のはずなのに。

 そんな訳で「皮から食べて」ではダンスっぽくないことを意識的に幾つも試しています。それは例えば幼稚園の学芸会であったり、小学校の予餞会で、皆が体験したことがベースになっていたりします。ホントっぽくないこと、楽しいはずの特訓。でも、まだ不足しています。それは美しさ、麗しさ、夢のような陶酔感、知的な刺激、どれも時間空間を味わうためのスパイスとして必要不可欠な要素です。

 あと一歩、踏み込まなければなりません。しかし恐らく、この作品には世界の中心はありません。そのことをしっかりした手ごたえを持って掴み取りたいと思います。そしてそのように、描き出したい。美しさは世界のもの、麗しさは宇宙の広さ、陶酔感は夢の中にあり、刺激は知的にこの作品の枠組みを提示することで示せるか否か。再演が楽しみです。

(2009/9/27)


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