Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》09/05/25


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.268

いわきアリオス●福島県の

 大ホール、音楽ホール、小ホール、練習室棟を擁する福島県いわき市立芸術交流館のグランドオープン、
待ちに待った中ホールのこけら落としが本日09年5月23日にありました。山海塾「卵熱」5年ぶりの
再演でもあります。水舞台、そして4人の群舞とソロ1名のシンプルな構成作品は、岩村自身最も思い出
深い作品です。

 もともと市民会館がありその跡地に造られたこの施設、大ホールの稼働率は高く、また音楽活動の盛ん
な地域ともあって、空気感は新潟市「りゅーとぴあ」に似ています。公園に面し、窓からは山並みも見渡
せ、幾つかの点を除けば極めて合理的な設計計画に基づいた几帳面さが、現場スタッフのやる気を受けと
める雰囲気。

 この中ホール、特徴は舞台間口が変更できることのようです。世田谷パブリックシアターと同じ6間間
口と、北九州芸術劇場中ホールと同じ8間間口、そのために、圧縮空気稼動の照明タワーユニットと3階
建ての客席ユニットが舞台スペースを自由に移動します。基本は6間間口なのですが、やはり広めに使い
たいのは人情でしょう。

 広いほうがキャパシティも増えますし、多人数の出演作品ではそれだけのアクティングエリアも必要と
なるわけで、多目的舞台の使い勝手の解決策としてはかなりユニークなのではないでしょうか。そのユ
ニークさを担保するための様々の不思議な機構が見どころですね。仮設緞帳、移動ブリッジ、仮設プロセ
ニアムそして捨てスノコ。

 原設計の間口を広げるために建物壁を後退させず、客席前部の壁体をすべて可動にしています。一部は
吊られていて、残りは自立の仕組み。実際には私たち山海塾が一番始めての使用者だったわけで事故も心
配されていましたが全く杞憂に終わりました。通常のプロセバトンがある範囲が無蓋の捨てスノコになっ
ていて、ここが惜しい。

 とは言え、可動壁体の組み合わせ方によっては三方舞台も四方舞台も自由自在ですから(その場合は元
よりの舞台部分は全て無蓋になりますので)、逆の見方をすれば中劇場的機構を持ったフリースペースと
いうこと。創作の拠点としては自在度が高すぎるでしょうか、もっと言えば、ひと月一回づつ3日間の滞
在で1年間12回位の

 断続的レジデンス活動が叶えば、演出家と舞台デザイナー、出演者ほかの試みは様々に発展していくで
あろう感じです。何かチェーホフとか、ロシアや中欧の作家ゆかりの都市と姉妹関係にあるなら、そうし
た縁でゆっくりと舞台芸術が醸成されていくのがふさわしく、また是非見てみたいと思う、そういう気に
なりました。

(2009/5/25)


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