Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》09/02/09


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.259

2月5日●五條楽園

 五條楽園で昨年に引き続き舞踏の公演。今貂子さんとそのグループによる「鯉つかみ」。
杵屋丈一朗さんという造芸大の卒業生が長唄で参加、三味線と太鼓も入って華やかな歌舞
会をお楽しみいただける内容です。様々のスケールがこうした試みにちょうど良くできて
いる会場だと思いました。一応本格の雰囲気を出すことが出来ます。

 照明や音響は最近のコンパクト化された機器が大きな助けになりますね。もう少し値段
が下がってくれると、これまで使いにくく敬遠されていたような、あちこちの小スペース
でも良いパフォーマンスが上演できるようになっていくに違いありません。

 人の声、鍛えられた唄声は気持ちよく木造の空間に鳴り、三味線や太鼓の音も上手にミ
キシングされて耳に痛い感じがしない。古典楽器に特有の雑音的な飾りの響きも、こうし
た空間だとその表現の微妙な差異が味わえる感じがして、穏やかな観賞体験につながって
いくようです。そのことが踊りの見え方までを変え、面白い。

 今回は前回使うことをためらった、劇場の所蔵道具をいくつか拝借しました。「野面(
張物)」「桧垣(色紙)」「富士山(色紙)」。他にも黒塀や襖、松の大木(幹)などが
汚れてはいるものの使うことが出来る状態で保存されています。絵柄は古く、またハケ遣
いなども決して細かなものではないのですが、それはそれなりに。

 なんというか、キッチュな魅力があって、それらの品物が整えられたという昭和40年
頃の場の勢いを見るようです。ただ、全体に小作りで、当時の日本人の体型は本当にコン
パクトだったんでしょう。それがまた、何となくかわいい感じに収まっているのが、女性
ばかりの舞踏公演には無理なく無駄なく、はまる気がします。

 昨年からこちら、五條楽園歌舞練場ではいろいろの小劇場団体が公演を打つことが増え
ているそうです。時代風の空間の味わいを最大限活用した催し物であるかどうか、余りそ
うした議論も無いようで、逆に、片付けや掃除が時々入るような具合なので会場にとって
は良いことなのでしょう。ただ、いずれ、そろそろ、地域の方たちとの諸調整が始まらな
いと、騒音や駐輪の問題が取りざたされ始める頃かも。

 劇場としては殆んどの活動が停止していて、貸し会場としてのみその存在が示されてい
る私設の建物ですから、時機を見て土地の売却や収益施設への建て替えが話題になること
とは思います。その際に、反対運動など野暮なことをせずに、そっとじっと見送っていく
のは、おそらく地元の人たちなんですね。それがあと何年後のことか。

 周囲には高層マンションの気配もありますが、枳殻邸の東側、高瀬川は穏やかに流れ、
鴨川には石造の正面橋が残り、地域全体がどこかにかつての熱いものを抱えたまま冷蔵さ
れている劇場のようなエリアでもありますので、余り大げさにせずに、是非丁寧に、この
会場を利用し続ける事が叶えば何よりです。皆さんもご協力ください。

 初夏の時期(蚊は多いと思いますが)、あるいは錦秋の時期(まだストーブは無くて良
いかも)、ひょっとした催し物が企画されると良いですね。

(2009/2/9)


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