Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》09/12/7


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.275

新潟県民会館●鼓童12月公演

 ここのところ毎年呼んでいただいている鼓童12月公演、6年目の内容は夏前のヨーロッパ越境ツアー(と書くと無法者集団のようですが、そういう趣旨では必ずしもなく、そういうタイトルのコンサートツアーでした)、加えて「うぶすな」「打男」の2つの小編成コンサートの成果も取り混ぜた2時間の演奏会です。

 年末らしく明るく、実り多かった今年の鼓童の活動を踏まえ、なるべく堂々たる印象となるような仕上がりを目指しています。お客様にはどのように観ていただいているでしょうか。「越境」に引き続き、今回も「人」をしっかり見せる作業が中心となっていて、この越境シリーズ3回戦は専ら演奏家各人の成長を見届ける心境です。

 2000年のスペシャル公演に照明家として参加し、その準備段階からすると鼓童の皆さんとは10年間のお付き合いとなります。鼓童村と呼ばれる彼らの本拠地の様子も変りました。今回心して、その村から眺めることの出来る海と空の色味を舞台に持ち込んでいます。佐渡の風景、佐渡の光が皆さんの目に快く映るなら幸いです。

 山海塾という舞踏の表現は、自分からすれば人の内的風景を丁寧に取り上げていく仕事になりますが、この和太鼓演奏家集団の表現は年毎に方法論が変化していて、手段は音色とリズムのまま、しかし、曲目やテンポの選択に応じて彼らの挑戦課題が舞台に立ち上がり、それが彼らの音楽観として現れ、常に新鮮さを失わずにいる。

 彼ら自身が太鼓に向かう新鮮な感動を維持することが、この12月公演ではもっとも大切なことのように思え、劇場空間の印象が揺らがないように、しっかりと客席との関係を構築したいと考えました。その意味ではこの新潟県民会館は良い建物です。客席壁の表情が豊かで堂々として、舞台の力をきちんと受けてくれます。

 客席の空間に力がないと、座っていても頼りなく、あるいは過度に心地良く、ステージ・パフォーマンスとの対峙を味わうことが難しくなる場合がある。あるいはそうした快適な客席も必要なのでしょうが、その際には、演出計画の上で幾つもの工夫を織り込んでやらないと出来上がりの重い、しんどいだけの上演になってしまう。

 北九州芸術劇場の中ホールのように、素晴らしくその存在が消える劇場も魅力的ですが、大ホールの場合はこの会館ほどに重厚な構えがあっても良いのでしょう。劇場施設というと舞台設備に気をとられがちで、やはりこうした客席のムードについてその適否を言うことは少ないものの、軽妙な作品の場合には重厚すぎる客席観をもてあますこともあるでしょうから難しいものです。

 新潟公演の終了後、この3年間の演出担当石塚さんと、その以前やはり3年間演出を担当された齋藤さんに、会館出発を見送っていただきました。素晴らしい舞台をありがとうございました。

(2009/12/7)


岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室