Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》09/10/28


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.271

アンダー・ザ・ワークライト●新長田db新企画

 9月24日・25日には新長田のダンスボックスにて、アンダー・ザ・ワークライトと銘打った試演会を行いました。ライブハウスのテーブルを幾つか並べ、余り硬くならないように雰囲気を作り、セレノグラフィカ新作より幾つかのダンス・モティーフを見ていただきます。ワークライト=作業灯ということですが、果たして。

 一般にいう作業灯では恐らく雰囲気も何もないので、地明かり、という考え方で照明を組んでみました。この企画、お客さま方との交歓を旨とするわけでもなく、上演するダンス・モティーフにしてもアイディア本位の荒削りなもの、こうした場合の顔明かり・あるいは前明かりのデザインにはかなり意図的な配慮が要るようです。

 ダンス的身体を「自然」に見せるには、配光上の透明感を工夫するのはもとより、いわゆる(顔と手足の)表情を、それぞれバランスよく過不足なく示すことが必要です。そこで、あえて前明かりを2列に置いて、奥行きに意味を持たせないようにしてみました。もう少し横明かり成分があればダンスが立体的に見えましたね。

 照明や美術道具を仕込むトラスが手元まで下がってくるので、作業の効率は大変良い会場と思います。天井が高い分はトラスを少し低く設定することで、カバーも可能です。客席フロアと舞台床の落差がはげしいのを、どう利点につなげるかは今後の研究が必要だと思います。現状だと足元は良く見えますが、全体が把握しにくい。

 逆に考えれば、狭いのを除けば、個人技が光る類の作品には恰好の舞台かもしれません。床が固いのでバレエなどには厳しいでしょうし、ジャズやエアロビクスもその点では同じですね、舞台運営にはなかなかの工夫が必要とされるステージ仕様だなぁと思います。ブラックボックスの雰囲気は良いので、もったいないです。

 こけら落としのときに比べ、街は明るくなったように感じます。鉄人28号効果が出ているようです。夜、街を歩く人がいなくなる時間が早いので、マチネや夕方ぐらいからの開演がありがたい、とも思いました。伊丹アイホール開館当初、同様の感想を持ったことを思い出します。上演事業も必要だけど、この際は研究事業が大切になる可能性もありますね。ダンスミュージアム、なんて実現したら素敵ですよ。

 様々なダンスの拡がりを、旧いものは書籍で、新しいものは映像でアーカイブできたら、調べ物をしたい人や新作準備を始めたい振付家にはありがたいことではないでしょうか。資料庫の整備が課題になるかもしれませんが、関西・全国の、ダンスファン秘蔵の品々が、新長田に集まる。何かそんな夢想を誘う空間と環境です。

 アンダー・ザ・ワークライトの試みが、そうした研究事業の一環として位置づけられたりするなら、上演設計のあれこれも、格段に具体的になることは間違いありません。真面目に面白く、不思議なダンスの世界を構築していく、そんな場所になって欲しいと思います。成って行って欲しいと願います。

(2009/10/28)


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