Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/9/24


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.242

南総文化ホール●千葉県南端の館山市

 夕鶴ツアーの最終会場です。日本メキシコ友好400周年、その機縁となった御宿町からも沢山のお客様を迎え、ピアノ伴奏で上演してきたオペラ抜粋をオーケストラと演奏します。3度のオペラ上演を経て、出演者もスタッフもすっかり曲進行には慣れました。こうして見ると舞台美術無く衣裳のみの版もシンプルで悪くありません。

 南総文化ホールはプラン的には彩の国さいたま芸術劇場と同様、別棟の大・中劇場の間にパティオを持った、本格的な文化会館造り。大劇場のコンサートでは反響板を下ろし、オーケストラピットを上げて、良く響くホール特性をそのまま生かします。客席観は1200席とも思えぬほど親密で、特にソリストたちは喜んでいた様子。

 2階席の両翼が1階席に接続する、ワインヤード式の演奏会場をイメージしたような高勾配の設計が、オフホワイトに仕上げられた壁面天井と座席のカラーリングとも相まって、いかめしくなく可愛らしい印象に貢献しています。建物周囲にも特段の高層建築を見かけず、内部外部共に空間の拡がりを損なわない秀逸な計画案です。

 惜しむらくはプロセニアムの高さでしょうか。反響板天井が客席最後部と同じ高さ、つまり演奏家が相対的に小さく見え、床が低すぎるように感じられてしまいます。こうした高さバランスは、見た目のことでもあれば反響板の意匠デザインで回避できるかとも思うのですが、ちょっと残念。もったいないことになっていました。

 今回一連の照明デザインは、光の方向性と色の、実験的な組み合わせを目論んだものです。舞台全体に色数の少ないコンサート版ではほぼその成果を見て楽しんでいただけるレベルにまで上げることが出来、満足しています。オペラ版では舞台美術の構造理解が間に合わず、色彩計画的にいささか不備なものになっていたと思います。

 それはさておき怪我人も出ず破綻する者も少なく、慌ただしいツアーは無事に終わりました。演奏会・オペラ上演として失敗せずに済みました。深い作品理解に基づいた照明への演出指示と、岩村以上にスコアを読み込んで丁寧に操作を担当してくれた照明チーフのおかげです。久恒さん、芦辺さん、ありがとうございました。

 悲情な段取り変更を悲壮な覚悟で取りまとめ周知してくださった舞台監督の桑原さんには、特に、感謝いたします。人見記念講堂では美智子皇后のご臨席、この南総会場でも千葉県知事とメキシコ大使がご観賞される、仲々に華やかなツアーだったわけですが岩村的には良い勉強となりました。進行は無くとも音楽が有る現場でした。

 舞台美術による時間的な音楽作品の空間構造、その各局面を照明で表現すること、この度の仕事の進め方ではこんな方法論を仮説するのが良かったです。新しい演出家・美術家との出会いは面白くてためになります。それぞれに別の研究を経て同じ作品をご一緒できる幸運、その機会を制作された皆さんにも心より御礼を申し上げます。

(2008/9/24)


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