Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/9/19


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.240

三重県と台風●三重県総合文化センター

 名古屋から近鉄線もしくはJR線で約1時間、津市に来ます。山を拓いてマンションが建ち並ぶ中、忽然と大きな建造物が存在します。三重県総合文化センター、大ホール(コンサートホールを兼ねる)・中ホール(演劇向き)・小ホールのほかに沢山の楽屋やリハーサル室、ギャラリー・レストランの集合した立派な建物です。

 折からの台風13号に追われるように移動してしまったので、お客様が入っての雰囲気については分からないのですが、90年代様式の折衷施設のようです。愛知芸文にも共通しますが中央のエントランスから放射状に各施設への導線が計画されています。幾つもの広い駐車場が在り、巨大な公民館的な役割を果たしている模様。

 今回オペラを上演する大ホールの空間容積は千葉の半分ほどでしょうか、天井も必要以上に高くないし、2階席3階席への距離も程々で、安心できる客席観です。びわ湖ホールには微妙とはいえ大きすぎる印象があることを思えば、内装の落ち着き具合といい、スロープの自然な具合といい、今後しばらくは大切に使われるのでは。

 ただ千葉県文化会館ほどの祝祭性が感じられないのは、計画時に「非日常」概念をさほど追求しなかったからなんでしょうか。能天気な「晴れの場」演出を必ずしも素敵とは思いませんが、でもなんかちょっと、華やかな感じが、どこかにあっても良いかも。その物足りなさが却って上演を引き立てることはあるでしょうね。

 千葉ではその立地の閑静な感じに先ず長閑さを覚えましたが、こちら三重では唐突感を強く印象しました。聞けば秋のこのシーズン、台風の通過は茶飯事とのこと、日本国内でも有数の年間降雨量を誇る尾鷲を擁する三重県の、そこはそれ文化に対する行政姿勢の矜持は保たれているようなので、本当にわが日本も広いと思います。

 ただ、資料用の図面に表現された先進性を期待して乗り込んでいくと、不思議と壁があるというか頭を打つ体験をしますね。この機構ならばこう動くだろう、この設備ならこう使えるだろう、という思い込みは危険。そのちょっとしたトラップは電話で確認してもしきれず、現場でも気づかなければ看過されるわけで、難しい。

 大きな施設だけにその使いこなしは日常業務の域を超えるでしょうし、そもそも、日常業務の範囲内でもどれだけその設備を活用していることになるのか。比較対照すると千葉も三重も、どちらも特別な会館ではなく一方は旧建築、片や新施設なだけでそこに創作機能が付随していない以上、私たち使い手の心構えが何よりモノを言う。

 私たち使用者側が、会館の現状に理解をもちつつ、与えられた条件で、精一杯の作品を上演する。ダンスであればその条件のコントロールはシンプルで岩村的にはそんなに困らないのですけれど、オペラともなると操作すべき条件が多岐に渡り、まだまだ何も出来ない状況に直面します。正直なところ大変に悔しいです。

 与件に対する方策が充分でなく、そのため会場条件に振り回される。なんとも素人です。与件の整理の方法から今一度、仕事を見直す良い機会です。

(2008/9/19)


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