Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/8/31


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.237

すばやい歯3●西陣ファクトリーGarden

 舞踏家の今さんとの、3回目のコラボレーションです。衣裳家に三味線の演奏も加え、前2回に
比べればだいぶん贅沢な試みにチャレンジしました。照明については地味に昼間公演では1灯、夜
公演は6灯のみ、それをさらに無変化で見てみました。

 ダンスでも(もちろん舞踏でも)、衣裳の果たす役割には様々のものがあります。その意味を深
く問わずに舞台造形の要素の一つとして、シンプルに身体に添うドレスを実現するためには、音や
光、舞台装置などとの相互作用を計算し尽くして、穏やかに振付との調和を見出していくプロセス
が必要な理由が、今回良く分かりました。

 衣裳の示す身体の「きしみ」、写真や動画で目にすることの出来るファッション・モデルのドレ
スとの馴染み様に理想化されたノイズのない身体ではなく、あくまでも時間軸の中に忽然と屹立す
る饒舌な身体から聞こえてくる音の無い「きしみ」が、ひょっとした衣裳の隙間から、布の合わせ
目から、上演作品の世界観の深遠を覗き見させることがある。布と皮膚に挟まれた湿った闇が作品
世界を語る気がする。

 上演される場=舞台と客席がごく近いのが、こうした衣裳の働きを一層強く印象させるのだと思
いますが、照明が明るく衣裳に隠された闇が見えにくい昼間と、場内全体が明るくなく闇が衣裳を
覆うように、衣裳が闇を抱きかかえるように見える夜とでは、当然、身体から聞こえたり透けてく
るダンスの様相も全く異なります。

 以前、京都芸術センターで同じ振付を2名のダンサーがそれぞれ踊るその現場に立ち会ったこと
がありますが、その際は身体の自ずから持つ空間性の差が時間を追っている観客の私たちにまるで
違った作品のように印象される経験をしました。

 その現象と同じようなことが、衣裳と光の関係にもある。その衣裳を最も美しく、また作品世界
にマッチするように照らす作業はエキサイティングな発見の連続です。

 一方で、今回は音楽と空間の関わり方にも新しい発見がありました。昨年までの無音での1時間
は建物の外の、様々の出来事が聞こえてくる、その外界とのセッションが一つの見所だったはずで
すが、今回は外界の出来事が殆んど意識されません。

 「耳」の要素が舞台にあるために、場内の音源には敏感でも、その他の音を無意識に遮断して観
ていたような感覚が残ります。より限られた気配を受け取ると言うか、より自然体のまま観賞に集
中していて、観聴きする努力は少なくて済んでいると言うか。その分、分かりやすい、ごく自由な
姿勢での上演になった様です。

 三味線の音色が、エキゾティックでもなく手に終えないほど伝統臭が強いものでもなく、ごく当
たり前の響き方をしていたのが今回の作品には良くはまりました。踊り手の身体の表情がきちんと
造形されて、一期一会の緊張感も失わずに、面白い上演になったのは、大変愉快な成果でした。参
加してくださった皆さんに感謝しています。

(2008/8/31)


岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室