Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/8/12


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.235

この小さな箱●スタジオGoo

 東京は世田谷区、京王線千歳烏山の「北京家庭菜」はおよそ日本でこれまで出合ったことがない、外国の中華レストランの味がします。それから「離れ」という名の居酒屋は沖縄料理で、これもまたしみじみした東京情緒を味わうにふさわしいコスモポリタンな風合いのお店。それもこれも、やはり、大都会ならでは。堪能しました。

 この街を背に、ほんの少し住宅街に入ったばかりの場所に「スタジオGoo」は位置しています。朝昼夕と高校生が行き来するタイル張りの歩行者優先道にはお風呂屋さんもあり児童公園もあり、テレビドラマ的道具立てが全て揃う浅深にわかに判別しがたい環境なのですが、近くの芦花公園には今でも往年(明治〜大正期)の武蔵野の雰囲気が残り、環状八号線の喧騒がいっそ夢のような恐るべき「町」であります。

 街と町、その差がどこにあるのかただ、見上げるほどのマンションが建ち並ぶ京都のような地方都市にはもう「町」の風情は望むべくもなく、逆に世田谷最奥部の二階家か高くとも3層建てのマンションに統一された家並には一瞬たりとも「街」の亡霊を感ぜずに過ごせるゆとりが間違いなくあるわけで、その気持ちの幅が三軒茶屋のパブリック劇場に昇華結晶するのかと思えば、あるいは純化した公共パワーの凶暴な地域組織への先鋭的な対応策だったかとも思えば、本当に東京は凄いところです。

 新築された折、一階部分をほぼワンフロア無柱に構造し、壁三面で囲まれたフローリングのスペースを開放されているのがスタジオGooの全容です。nfGで初演を迎えた短編小説の世田谷公演を準備するにあたって東南西にある窓を使い、外の景色と外光を取り入れることにしました。閉じ切ってしまうと住家独特の個性がこもりますが、外環境と連絡しておけば場所と地域の空気が通うので、より良くなります。

 スペースの設計は考え抜かれていて、一般の小劇場やフリースタジオで実現されにくいサービス導線と観客導線の分離ができていたり、大型の空調機1台ではなく高性能の小型空調機2台を微調整しながら使えたり、フロア材と基礎・壁面の縁が切ってあるので振動が家中を響かせることもなく、タッパも充分で、お見事な造りです。

 暗転も効くそうですし、内装が白仕上げなので明るくパフォーマンスに接することも可能で、小屋主の吉福さんの良い趣味がきちんと細部に至るまで反映していて、座席代わりの「きんつば」も愛すべき存在です。おかげ様で作品も充実しました。

 惜しむらくは暗騒音の管理上、照明操作卓のファンノイズが埒外になっていることでしょうか。フェーダのカーブ特性や単位調光器あたりの操作許容電流が犠牲になっても良いので、もっともっと静かな可搬型調光卓を皆で広めましょう、と言いたいです。ラップトップPC制御できる商品の存在を施工業者は紹介すべきです。

(2008/08/12)


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