Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/8/10


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.234

このダンスを読んだら2●山県市花咲きホール、再見。

 昨年の10月に引き続き、岐阜県山県市伊自良の花咲きホール、セレノグラフィカ公演をお招きいただきました。前回の上演作品は客席との距離を積極的に詰めるものだったので大きめの張り出し舞台を作りましたが、今回は多少の距離が作品の理解を助ける結果になるとの配慮から、間口5間×3間で用意。それに40cmほどの一段を2尺×4間と箱馬で組んで付け足し、客席との行き来を可能にしました。

 子供たちのワークショップ作品発表と、セレノのレパートリー(それをすると)、地域の和太鼓グループとの競演、最後には全出演者によるフィナーレ、全部で1時間半のプログラムです。土曜日のマチネに向けて、水曜日から毎晩全員が集合しての熱心なリハーサルに、毎日の午後はスタッフとセレノメンバーとが話し合いを続けながらの上演準備。思わず充実してしまった夏休み開始直後の大週末となりました。

 今回の収穫といえば「熟成の力・黒にんにく」「全国選抜長良川・中日花火大会」「ぴかぴかえのぐ・創作紙粘土協会」の3点でしょう。宿題としては、カンパニーTシャツの製作が挙げられます。前回と同様、名古屋からスタッフの応援を呼び、京都からは音響家・出演者の小早川さんが新たに参加し、熱く厚い布陣で劇場スタッフの出迎えに応えました。今年の花咲きホールには「暑い」3名のスタッフがいます。

 冷房の効きにくい「暑い」スノコの上に自作されたキャットウォーク、舞台裏を黒ペンキで塗り上げ。山海塾で訪れたフランス南西部の劇場群を思い出します。彼の地は軍基地周域部で工兵上がりの小屋付きさんがDYIの限りを尽くしての保守、徹底した合理主義による管理成果を満喫したものですが、この花咲きホールも日々歳々充実して、独創的な劇場に育っていくのだろうと、心強く感じます。

 自らの手で作る、造る、創る。基本的なことですが都会地の便利な環境、つまり電話やネットで依頼すれば決して法外な料金を請求されることなく求めるサービスが得られる劇場生活に慣れてしまった自分を恥ずかしく思いました。作品もそうした安易に流れてはいないだろうか、自分の手で構成・内容を作り、美術・舞台を造り、振付・演技を創り、独創的な作品世界を現出させ得ているだろうか。

 地に足が着かない旅から旅への劇場活動の限界からか、劇場の製作担当者、あるいは地に足を着けた主催者の上演内容への真摯な注文は、大概は打合せなど会議の場ではなく、チラシや、ちょっとした広報誌への提供記事・図面でのやり取りを通じて感じるものです。言葉でのやり取りでは館としての姿勢、もしくは事業主の気持ちのようなものは、なかなか汲み取ることが難しい。そのことを再認識しました。

 どうにかして、小屋のあり様とわたしたち上演団体の方向性、そして事業そのものの趣旨を合致させ説得力のある公演を実現したい。もちろん自身の表現がまずくてはお話になりませんが、この花咲きホールでの一週間はそんな積年の課題で憂鬱になっていた気持ちを見事に吹き飛ばしてくれました。劇場スタッフの気持ちに後押しされて公演が完成するなんて、めったに体験できることではありません。

(2008/8/10)


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