Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/12/3


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.251

コンサートホールの形●愛知県立芸術文化センター

 客席観と舞台観、コンサートホールを廻る体験をするとその差が身に沁みます。このコンサートホールは正面にパイプオルガンがあって、ノバや響とは、規模は大きく異なりますが、客席から見る舞台一種独特の大げさな感じは、余り変りません。

 天井には白のカーテンドレープを模した造形がなされ、舞台上には照明ブリッジと透明アクリルの反響板が交互に並ぶ構成。ミュージカル「オペラ座の怪人」風のシャンデリアが7つ並び、白々と浅薄に華やかな、豪麗な造りに先ず目を奪われます。

 舞台から客席を見上げると、今度は木質の反響壁が視野の殆んどを被い、シックでアットホームな(そして巨大な)応接室に座っているような感じです。比較的に1階アリーナと2階正面席が素直に舞台に相対しているため、ワインヤード式とは言ってもサントリーホールほどの「天上天下唯我独尊」意識からは遠のく気がします。前後に圧縮されたシューボックスの、両サイドの客席がそのままオルガンに続く形式。

 この両サイド席は、この会場の場合は、舞台を見下ろす角度がきついせいもあってボックスシートのようなニュアンスも薄くありません。このあたり、建築家の苦肉の選択を読む具合になってきますね。美味しいのはアリーナ、階段状のナナメにレイアウトされたエリアだと思いました。舞台からの微笑が真っ直ぐに届く場所です。

 諸会場での課題となる楽屋エリアは、この複合施設の建物ならではの素っ気無く合理的な区画割り。同じフロアに美術館の収蔵庫なども配置されているため、カクカクと幾つも先へ小部屋が並んでいます。一般公共劇場に迷い込んだような味わい。

 しかしオルガンの真下のスペースは(窓は無いけれど)アーティストラウンジとして充実した広さがあり、ソデもきちんと天井が低く、気分がコントロールされます。

 あの、鍾乳洞を歩くときの「狭いぞ狭いぞ・ほらやっぱり突然明るくて・豪華にライトアップされてる・おお、石に名前が付いてるよ」的な、空間ジェットコースター感覚はちゃんと設計されていると思いました。反響板の工夫がまた素晴らしい。

 単なるドアではなく、重さのある防音壁が折り畳み式に開閉するのです。客席から分からないように自由に隙間を作ったままにしておけます。今回もその隙間からプロジェクションをしたり、装置のオペレーションが出来たり、日本人やるじゃん!、私たちプロダクションからは劇賛の嵐でした。ロビーや照明の話題はまた今度。

(2008/12/3)



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