Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/12/20


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.256

コンサートと鳶さん●マジンガーZ

 ようやくコンサートの手触りが固まってきました。照明デザインが不明なものですから音楽の流ればかりでただ一つの世界観を聞かせる必要があり、鼓童の演奏の皆さんには(もしかすると)過分の負担をお願いしてしまっているかもしれません。

 今回は色明かりは無し、反響板に仕込まれているダウンライトや地明かりと前明かりのみを組み合わせ、明暗をつけるやり方。大昔の演奏会はもしかしたらこんな感じだったか?、と探りながらの旅が続いています。自ずからと客席調光も繊細になって毎劇場仕込みの数時間、ひたすら客席を眺める日々、困った発見も時に多いです。

 今回の浜松アクトシティ・大ホール、客席観は「おとぎの国」か「お菓子のお城」か、淡緑(抹茶色)の壁にオレンジ色の筋が入って、天井はオフホワイト(クリーム色)、座席と床には淡赤と薄いエンジ色があしらわれて、とても美味しそうです。ところどころに金色のブラケットが並んでいて、それも気の効いたケーキみたいで。

 4層に立ち上がるウイングシートと、平たい1階席、ドレスサークル感覚の2階正面席と天井桟敷の3階席(スタジアム勾配)、正真正銘の多目的大ホール。実はこのアクトシティ、日本初の4面舞台ということで完成時には大きな話題を提供した伝説的施設でもあります。ところがその正体は、座席の肘掛に隠されたメモテーブル、そう、コンベンションセンターの大会議室だったのでした。キャパは2千超。

 反響板を組むには鳶職を2名手配、主舞台フライタワーの内側3面にそれぞれ正反/側反が吊り収納されていて、それを降ろし、自走させて所定位置に据え、スノコからホイストでハングしつつジャッキベースで固定します。手続きを見学すると余り考えられたシステムではなく、現場の職員さんには大変な手間が必要で、申し訳ないほど。その割りに、4面舞台には不可欠の防音シャッターが施設されていないためか、音エネルギーは次々と裏舞台に吸収されていくような聞こえ方がします。残念!。

 客席部はごく当たり前の反響になってしまっていて、デザイン不在というか、ある種の設計家の限界を見る気がします。でも、こうした劇場見学マニアから見た小屋の実力と、そうした劇場でこそ真価を発揮する演奏家の凄みでは、現場慣れした実演家の圧倒的な勝利。お客様の熱狂は大変なものでした。聞こえるより見える部分のパフォーマンスに密度が上がり、躍動する筋肉、弾ける笑顔、魅力が溌剌とします。

 やっぱりその方がいいね。大胆な仮説になるかも知れませんが、反響板を組むことで照明演出の方法が限定され、基本的にはエリアの作り分けだけで明るさは一定の状態を維持する、こうしたやり方にお客様が慣れ、演奏家もその状況を利用できるようになるなら(クラシック音楽の演奏会のように)、視覚的サプライズが舞台客席の距離感を縮める以上に場内全体はより確実に一体化できるのではないでしょうか。

 つまり「どう魅せるか」の命題は出演者に預け、照明担当者としては暗くせずに「まず見せる」、つぎに場内全体を一つの舞台美術装置空間として捉えて「恰好いい雰囲気を」せめて損なわないよう「工夫する」。言葉を変えれば「観やすく」する。「観やすく見せる」は舞台照明の基本ですが、その基本力が今、問われています。

(2008/12/20)


岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室