Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/12/2


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.250

響ホール●元・八幡市、現・北九州市

 コンサート専門の会場です。音はきれいで、今回の催し物にはうってつけの舞台だったのではないでしょうか。空間容積をシューボックスの形態にふさわしい容積にとどめ、抑制の効いた、低音から高音まで反響具合のバランスもちょうど良く、親密な客席観。内装にはガラスが印象的に使われ、整ったカーブが幾つも繰り返されて模様となり、決して都会的では無いもののおしゃれな感じにまとめられています。

 建物そのものは凝った造り、国際交流村、という施設とエントランスが共用されています。ハーフミラーを張り巡らし、そんなに高層ではないのにミステリアスな外観。カーペットも何か象徴的な雷鳴柄だったり、楽屋スペースをつなぐ廊下はクリスマス・イルミネーションに飾られた中庭に面して、とても無国籍性が演出されます。

 舞台はオーソドクスな木床、ただし、照明音響関係の仮設設備は皆無です。音響は場内放送+αに対応できるのですが、照明は天井に1列のシーリング・ライトが並ぶのみ、他は客灯と同じレイアウトのダウンライトで必要照度を稼ぐ考え方ですね。

 ここまで何も無いと、かえっていろいろなアイディアが浮かぶもので、久しぶりに楽しくアレンジを進めました。蛍光灯にビニールテープを貼り付けてみたり。

 全編の最後に光を散らして視界を開く構成のところでも、小劇場のノリで、光点を絞り輝度を上げたスポットライトをポチポチと配り、それまでのフラットな照明にアクセントをつける作戦とか、やろうと思えばそんなことでも演出が成立します。

 八幡製鉄所の有った土地柄、大きなショッピングモールやスペースワールドなど、スケール感の大きな施設が幾つもあり、そこにこうした珠玉のような空間が創られていて、その場所で冷静な、ごくシンプルな(原始的な)一般舞台照明をデザイン展開する可笑味、旅の醍醐味、さまざまに人が交錯して作品が上演されていく不思議さ。

 舞台裏の通路には所作台が積み上げられ、天井の看板バトンには特製のスクリーンが吊られ、舞台を囲む2階席には照明機材やプロジェクターが配置され。客席内のガラス部材には光るミミズが現れ(天井の光が曲がって映り込み、淡緑色に金色のモールのような姿で)愛嬌を振りまきます。小道具で使う銀色の風船や映像も反射して良い感じです。一期一会の仕事、まさに、来て良かった!の瞬間です。

 北九州市を突き抜ける市内高速道路のおかげで飛行場からも鉄道駅からも、自動車さえあれば全く不便は感じない立地。きちんと調べる時間は取れませんでしたが、地域の発表会などには本当に愛用されているホールとのこと。全国地図からは埋もれてはいても、こんなに素敵な会館なら、また是非使って見たいと思いました。

 楽屋も広々として居心地は良く、アコースティックの生演奏を伴う舞踊公演には大変お勧めです。北九州市の劇場施設の平均完成度はとても高いです。

(2008/12/2)


岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室