Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/12/13


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.254

すみだトリフォニー●NHK大阪

 今回の12月公演は鼓童通常の日本ツアーと仕事を変え、コンサートホール、あるいは多目的ホールに反響板を降ろし、音楽会として全体が演出されています。
繊細な音色や極弱の音量などを普段の公演以上に意識しようという構成です。

 すみだトリフォニーは錦糸町にあり、ホテルやオフィスが高層に入居するビルの低層部に計画されています。周囲は昔ながらの下町的雰囲気が残り、クラシック音楽の殿堂という意味では珍しい立地かも知れません。ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックがそんな感じだったとは思いますが、ご参考になるか
どうか。

 ホールの内観は先のレポートに触れた通り。しかしホワイエとロビーは狭いながらも贅沢な、それはまるでブロードウェイの劇場のような感じです。内装壁に天然大理石ほかを張り巡らす趣味に加え、4層吹き抜けの階段室を兼ねた空間に様々のアートワークが点在しています。シャンデリアも美しく仕上げられ、都会風。船越桂のピアノを弾く木彫が誰もいない時間にも暖かで静かな雰囲気を盛り上げて素敵です。

 絨毯は水色に灰色の墨流し柄、桜の花びらが漂って、ここがまぎれも無く東京下町であることをメッセージしているのですが、なんとも渋谷や池袋新宿の商業劇場あるいは芸術会館とは方向性の違う主張を感じます。オーケストラとの競演プログラム、新日フィルがフランチャイズしているご縁でお世話になったホールですが、今後もっと注目するべきホールと思いました。開館10年とのこと、りゅーとぴあ同様バブル精算期の名企画ですね。楽屋は沢山あって、それだけでも豊かな気分になれます。

 一日の移動日を挟んで大阪、NHK大阪ホールに入りました。大阪歴史博物館と棟は違いますが一体化した建物です。2つのビル間のエントランスは地球儀をイメージしたガラスドームでつながれ、ちょうどホールのロビーから大阪城を眺めることができるようになっています。地域は官庁街、京都に住んでいても少し不便に感じる特別な公園区域なので、環境は良好。ですが、余り訪れることの多くない立地条件です。

 公開収録に使用されるホールでもありつつ、場所柄、いろいろな公益性を鑑みたイベントにも重宝され、なんとなく、高級市民会館みたいな、スーパー多目的ホール感が持ち味のように思います。お約束の天然石張り、ふわほわの絨毯、ウッドパネルで構成されたホワイエは、ビルそのもののエントランスとは全く異なってソフト。

 地下鉄で人の少ない駅に降り、階段を登れば風の吹きぬける官庁街、歩道をたどって建物の足元に入ると巨大地球儀の中は温室のよう、エスカレータから大阪城を眺め近未来的な人工地盤に並び、ようやく入場すると、灰色から一転して暖色の場所。

 有楽町の東京国際フォーラムでも味わえる「トリップ」、自然と観客の非日常気分を高揚させていく仕組みが非常に直接的で、これにはやられる。高級スーパーだね。

 衝動買いを誘いますよ、ここは。バブル反省期のスタディで満載です。

(2008/12/13)


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