Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/11/28


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.249

津田ホール●海がモティーフ?

 一昨年にお邪魔したのと同じプロダクション、ジョン・ケージ「アパートメントハウス」の再演で津田ホールに伺いました。2度目ともなると公演に内容に関して落ち着いて準備が出来るだけに、このホールの不思議な内装に目が行きます。

 天井は大きく折れ上がった独特の山型で、反響効果を考慮したのか、ヨットの帆のような大きな三角形を描く柔らかな曲線。客席部の大理石の壁面は細かく波打っていて、さざなみとうねる海原のよう。天井照明機材のカバーは椰子の木のように花形に開いた造形で、そうやって眺めていると何か、南洋の暖かく穏やかな空気感を味わうことが出来ます。のんびりして、良い気分です。清潔感もあるし。

 東京には幾つもの劇場があり、幾つもの演奏会場があるわけですが、お客様やあるいは演奏家達が、何を基準にそのうちの一つを選んで利用するのか、京都などの限られた集会施設しか持たない街に住む身にとっては、改めてそのことが気に掛かります。ポイントになるのは居心地の良さなのではないかと、何となくですが思います。

 演奏会の場合、楽器の搬入などの準備が午前中に行われ、必要に応じて午後、音合せや練習などがあり、場内の湿気や気温、照明の具合などを調整すると、なるべく静かに開場時間・開演時刻を待つのが普通のようです。居住性の高さが必要です。

 ゴミ一つ無い楽屋エリア、暖かなソデ、静かなホワイエなど、この津田ホールの環境は見事なものです。天井の高さに工夫があり、どこにいてもその場所に応じた気分をすぐに獲得することが出来ます。これって、コロンブスの卵かもしれませんが、耳が、その部屋の反響を聴き取って、身体の状況を変化させるみたいです。

 お客様も利用するホワイエは、絨毯が厚く、天井も高くなく、落ち着いた気分にさせます。同じフロアの喫茶コーナーは天井を高く取り開放感に満ちて、そして、音の響きは少しだけ硬質で華やかな感じ。適度に騒音があって考え事に向いています。ソデ内は事務室的な仕上げに見えても床のリノリウムは上質で足音が気になりません。充実した緊張感が漂う場所でもあり、開演前の高揚感をそっと支えてくれます。

 スタッフ控え室は別階にあり、常時1名のみが全体を見守って、何かがあったときに即座に3人体制で作業に掛かる方式。とても落ち着いていて、やはり静かで、ありがたいことです。もっともそれは、自分も若くなくなってきて、勢いで現場を進めるのが辛くなってきている、という事情もありますが。いかがかとは思いますが。

 このあと、北九州市の響ホール、名古屋市の愛知芸術文化会館コンサートホール、と続きます。初めて入る会場が続きます。

(2008/11/28)


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